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【INTERVIEW】西和彦氏がゲイツ引退を語る(前編)

2006年06月21日 17時13分更新

文● 編集部 野末尚仁/小林久

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[編集部] コンピューターの世界では、大きなパラダイムシフトが起きつつあると感じます。ソフトウェアのプラットフォームが、デスクトップからサーバーに移りつつあることは、マイクロソフトのこれからにどんな影響を与えそうでしょうか?
西和彦氏
西和彦氏
[西和彦] マイクロソフトは、インテルとともに大きくなった。インテルは速いCPUを作る。マイクロソフトはそれに合ったヘビーなソフトを作る。そこでは“使いやすさ”を価値にした。でも、実際はヘビーなソフトの価値は“作りやすさ”だったのではないかと僕は思う。要するにスパゲッティーを作ってみんなに売ってきた。

そこにどういうパラダイムが出てきたかというとブラウザーです。ウェブブラウザーとは何だったのかというと、ハイパーテキストの情報を利用して、サーバーの構造をたどるものです。その進化の過程で、Javaやプラグインの技術を利用して、ブラウザーを賢くしようという流れが出た。しかし、ユーザーが本当に素晴らしいと感じたのはブラウザーではなかった。

Web 2.0という言葉があるけど、あんないい加減な言葉はないでしょう。みんな、そういうものが生まれつつあるという実感を持ってるけど、その実体に関しては誰も語っていない。ネットワーク上に置かれた大きなデーターベースをウェブではないローカルなアプリケーションで利用するスタイルがこれから確実にやってきます。
[編集部] 例えば、iTunesのようなアプリケーションがそれに当たりますね。
[西和彦] iTunesもGoogleマップもウェブ(※1)とは違う。そして、Googleの高速な検索が数百万台のサーバーによって実現されていることもあまり意識されていない。つまり、コンピューターがどんどん強力になっていくというパラダイムから、ネットワークで結合された強力なサーバーを、ほどほどの性能のコンピューターで利用するというパラダイムに変わった。同時に、StarOfficeを利用して、Firefoxを使って、OSもLinuxを使って……というふうに、MSゼロでも仕事がこなせる時代にもなってきた。Mac OS Xがインテルプラットフォームで動くことにより、WindowsからMac OS Xに戻る人がたくさん出てくるかも知れない。マイクロソフトの存在感は確実に減っている。

次に台頭してくるもの、それはケータイでしょう。現在の携帯電話機はQVGA(320×240ドット)の解像度がありますが、じきにVGA(640×480ドット)になる。VGAといったら、パソコンです。しかし、ケータイには、Windowsは載っていない。分散サーバー+クライアントアプリケーションの時代では、パソコンの存在がどんどん小さくなっているはずです。

Web 2.0というのは、パソコンをやっている奴らの発想です。“Net 2.0”というか、ネットワークの利用の仕方が変わってきた点に注目しないといけない。何で『Skype』のようなソフトをマイクロソフトが作れなかったのか? みんな技術を馬鹿にしてたんです。一番バカにしてなかったのがビル・ゲイツです。それがいなくなるんだから。次のパソコンはMacかなぁ(笑)。彼はそんな現状にだんだん嫌気が差したのでしょう。
※1 編注:ハイパーリンクのシステム



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