このページの本文へ

スパンションジャパン、米本社CEOによるビジネス戦略説明会を開催

2006年06月15日 17時27分更新

文● 編集部 小西利明

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
米スパンション 社長兼CEOのバートランド・カンブー氏
米スパンション 社長兼CEOのバートランド・カンブー氏

フラッシュメモリー製造大手のスパンションジャパン(株)は15日、東京都内にてビジネス戦略説明会を開催し、来日中の米スパンション社 社長兼CEOのバートランド・カンブー(Bertrand Cambou)氏により、同社のビジネス概況と技術や投資のロードマップについての説明を行なった。

スパンションは富士通(株)と米Advanced Micro Devices(AMD)社のフラッシュメモリー製造部門を端とする企業で、2003年に両社のフラッシュメモリー部門と統合して富士通AMDセミコンダクタ(株)を設立。2004年に社名変更を行ない現在に至る。フラッシュメモリー専業の半導体製造会社としては業界一の規模を誇る。従業員は約9000名で、米国テキサス州のほか、会津若松に製造工場を保有する。

フラッシュメモリー市場全体とNOR型の市場シェアグラフ。スパンションは全体では4位だが、NOR型では首位にある
フラッシュメモリー市場全体とNOR型の市場シェアグラフ。スパンションは全体では4位だが、NOR型では首位にある

カンブー氏はフラッシュメモリー市場の現状について、メモリーカードなどに使われる“コモディティー”分野と携帯電話機や家電のメモリーとして使われる“インテグレート”(組み込み向け)分野の2分野に分かれていて、コモディティー分野は差別化の難しさによる競争の激化に見舞われている一方で、同社が当初から注力していた組み込み向け分野は信頼性やパフォーマンス重視の市場で、寡占化が進んでいるという。カンブー氏は「競合他社はだんだん力を失ってきている」と述べて、この分野での同社の優位性に自信を示した。フラッシュメモリー市場全体での市場シェアは2005年で4位だが、同社の中核であるNOR型フラッシュメモリーでは、市場シェア1位を獲得しているとのことで、組み込み機器向け市場では36%近いシェアを握っているという。

売上高と営業利益については、まず売上高が四半期ごとにほぼ増収していて、2006年第2四半期予測では6億500万ドル(約695億7500万円)の見込み。そのうち約40%が同社のキーテクノロジーである“MirrorBit”技術による製品である。カンブー氏はMirrorBit製品の割合を今後も加速して増やし、年末までには売上の50%程度に達すると述べた。営業利益については2006年第1四半期に3000万ドル(約34億5000万円)の赤字を計上しているが、これは設備投資による支出によるもので、赤字幅自体は四半期ごとに縮小しており、2006年下期には黒字化するとの見方を示した。

スパンションの2005年第1四半期からの四半期ごとの売上高推移。現在では約4割をMirrorBit技術による製品が占める
スパンションの2005年第1四半期からの四半期ごとの売上高推移。現在では約4割をMirrorBit技術による製品が占める

同社のMirrorBit製品は、高信頼性で高速なNOR型フラッシュメモリーの利点を残しながら、NAND型フラッシュメモリー並みの価格を実現している。カンブー氏はMirrorBitの利点として、安価で歩留まりを高めやすい構造やダイサイズの小ささなどを挙げた。現在では1セルあたり2bitの記憶が可能なMirrorBit ORNAND製品で、最大1Gbitの記憶容量を持つフラッシュメモリーを携帯電話機向けに量産出荷しているが、公開されたロードマップでは、2006年第2四半期に一般市場向け2Gbit製品をサンプル出荷開始するほか、同年第3四半期には1セル4bit記憶タイプのメモリーをサンプル出荷開始する予定。カンブー氏は2007年には4Gbitの製品を量産出荷開始するとした。

MirrorBit技術の利点 一般的なNOR型、NAND型フラッシュメモリーの特性と、MirrorBit技術によるNOR型およびORNAND型メモリーの特性比較
MirrorBit技術の利点一般的なNOR型、NAND型フラッシュメモリーの特性と、MirrorBit技術によるNOR型およびORNAND型メモリーの特性比較

製造技術面では、現在は90~130nmの製造プロセスを採用しているが、年末に65nmプロセス品を出荷開始する。さらに2008年には45nmプロセス品の出荷も開始する予定とのことで、1年ごとに1世代進化させるという急速な製造プロセスの移行を行なう。製造工場については、会津若松市にあるJV1~3の3ヵ所のファブに加えて、スパンションに名称変更後としては初となる“SP1”を、会津事業所のJV3の隣りに建設。65nmプロセス/300mmウエハーでの製造を2007年より開始する。またスパンションジャパンは7月1日付けで代表取締役社長の鈴木伸二氏が退任し、製造分野を担当してきた副社長の今岡和典氏が昇格する役員人事も発表した。

同社製品のロードマップ。2006年後半には4bitの多値記憶が可能なフラッシュメモリーのサンプル出荷を開始、2007年には量産出荷に移行する 会津若松市にある同社会津事業所では、既存のファブJV3に隣接してファブSP1を開設。300mmウエハーによる65nmプロセスのフラッシュメモリーの製造を目指す
同社製品のロードマップ。2006年後半には4bitの多値記憶が可能なフラッシュメモリーのサンプル出荷を開始、2007年には量産出荷に移行する会津若松市にある同社会津事業所では、既存のファブJV3に隣接してファブSP1を開設。300mmウエハーによる65nmプロセスのフラッシュメモリーの製造を目指す

講演後の質疑応答でカンブー氏は今後のフラッシュメモリー市場について、2010年に組み込み向けは150億ドル(約1兆7250億円)相当の市場規模に拡大し、うち100億ドル(約1兆1500億円)がNOR型、残りがNAND型になるとの予測を示した。しかしNOR型は成長がかなりスローになり、組み込む向けもNAND型が伸びてくるとしたうえで、現在NAND型で高いシェアを握っている韓国サムスングループなどは、コモディティー分野での競争激化によって、組み込み向けにはあまり出てこないだろうと述べた。一方で同社はMirrorBit製品のスケラービリティーの高さを生かして、コモディティー市場にも対応できるようにしていくとした。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン