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アナログチップに専念する理由は「ライフサイクルの長さと独自仕様により差別化できるため」――米シーラス・ロジック副社長がコメント

2006年04月18日 23時14分更新

文● 編集部 小林久

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シーラス・ロジック(株)は18日、都内で記者会見を開き、薄型テレビへの利用を想定したD級パワーアンプIC『CS44130』、エントリー向けステレオA/Dコンバーターの『CS5343/44』、AVアンプへの搭載を目的とした32bitデュアルコアDSP『CS49530』などを国内発表した。

和田氏 リーダ氏
ジャパン・カントリーマネージャーの役職にある和田武雄氏米国本社事業開発企画担当上級副社長のテリー・リーダー氏

会見には、米国本社の事業開発企画担当上級副社長のテリー・リーダー(Terry M. Leeder)氏と日本法人のトップ、ジャパン・カントリーマネージャーの役職にある和田武雄(わだ たけお)氏が出席。同社の戦略における位置づけなどに触れながら、その特徴を説明した。

業績予想
業績予想

シーラス・ロジックは昨年8月に開催した記者会見で、オーディオ機器や計測器向けのアナログ/ミックスドシグナルICの分野に専念すると表明している(関連記事)が、その成果は確実に現われつつあるようだ。リーダー氏は2005年度の第3四半期(9~12月期)の業績と2006年度の第3四半期の予想を提示。アナログチップに専念することで、営業利益率20%のモデルも実現できるとした。

米国本社は昨年5月にDVD機器などに用いるデジタルビデオ集積回路の事業を米Magnum Semiconductor(マグナム・セミコンダクター)社に売却した。ビデオ事業を切り捨てた背景として、リーダー氏は「ビデオ関連チップはMPEGなどの標準規格に準拠していくことが重要であり、それを上回るパフォーマンスのチップを製品化していくことは難しい」とコメントした。

こういった標準技術に対応したチップは今後コモディティー化が進んでいくことが予想され、同等の機能をより低コストで提供できるかどうかが競争のポイントとなる。一方で、オーディオ分野は独自技術を用いて付加価値を提供することができる。つまり、いいものを値下げ競争の影響を受けずに販売できるわけだ。

また、進化の過程にあるデジタル技術は陳腐化もそれだけ速いが、オーディオ向けのD/Aコンバーターの場合5~8年、計測器の場合8~12年と非常にライフサイクルが長い。この独自技術による差別化と投資を十分に回収できるライフサイクルの長さが、強固な経営基盤を築いていくことにつながるという主張だ。

日本市場で特に注目していきたい分野として、和田氏は「DTV(デジタルテレビ)市場とポータブルオーディオ市場を挙げた。

リーダ氏
DTV向けチップのロードマップ(左)と製品ラインナップ(右)

DTV市場に関しては、リファレンス設計のオーディオ関連チップを提供することで、セットメーカーが映像関連技術の開発に集中できるようにするのが主眼。今回発表されたPWM(パルス変調)方式のデジタルアンプ『CS44130』は、48pinの熱強化QFNパッケージ(縦9×横9mm)で提供され、プリント基板に設けた銅プレートに熱を逃がすことが可能。アルミヒートシンクが不要になるため、高さの制約が多い薄型テレビへの搭載に適しているという。

CS44130
『CS44130』を利用したシステム設計例

最大30W×2(8Ω)の出力に対応。2.1chまたは5.1ch出力に対応。消費電力は4Wで、ダイナミックレンジは105dB以上。スイッチング動作に伴うEMIノイズを低減するために、出力段のFETをPチャンネル+Nチャンネルの構成としたほか、電源投入時やソース切り替えの際に発生しやすいポップノイズを低減する仕組みも持っているという。すでにサンプル出荷中で、1万個単位での単価は2.78ドル(約328円)

エントリー向けのA/Dコンバーター『CS5343/44』は、CS5339Aの後継製品で、10ピンのTSSOPパッケージを採用。サンプリングレートは44.1kHz、48kHz、96kHz、108kHzに対応し、出力に必要なレートを自動的に判断して選択する。また入力インピーダンスを高く設定することで、オペアンプも不要とした。ダイナミックレンジは98dB、THD+Nは-90dB。価格は未公開。

HD-AVRリファレンス設計の概念図(左)とミッドレンジ製品の『CS49530』(左)

AVアンプ市場に関してシーラス・ロジックは、米Genesis Micro Chip社と共同で“HD-AVR”と呼ばれるリファレンス設計を提示している。複数の異なる映像ソースをHD画質にスケールアップし、HDMIまたはコンポーネントケーブル1本で、テレビと接続できるようにしている。すでに2年前からエントリークラスの製品『CS49500』が出荷されているが、今回ミッドレンジの『CS49530』が追加され、6月から量産出荷される。今夏にはDolby Digital Plusなどのコーデックをに対応したハイエンドの製品も加わる見込み。CS49530を搭載したAVアンプは2006年のクリスマス商戦に400~800ドル(約4万7200~9万4400円)の価格帯で市場投入されるという。

CS49530では2系統のHDMI入力と1系統のHDMI出力を持ち、CS49500より25%高い300MIPSの処理性能持つ。SACD(Super Audio CD)で用いられている192kHzのDSD(Direct Stream Digital)信号を直接扱えるほか、ビデオアップスケーリング処理やリップシンク(映像と音声のずれを補正)処理を内蔵ROMとメモリーで処理できる。CS49530ファミリーには3製品がラインナップされており、144ピンLQFPパッケージのCS49530-CQ4が12.95ドル(約1528円、1万個時の単価)で6月の量産出荷。128ピンLQFPパッケージのCS49530-CQ8とCS495310CQ8がそれぞれ9.95ドル(約1174円)と11.95ドル(約1410円)で7月にサンプル出荷される。

なお、発表会では2月27日に米国で発表されたマルチチャンネル対応アナログボリュームコントロールIC『CS3308/18』に関しても紹介された。プロ用製品や楽器、ハイエンドオーディオ機器への搭載を想定しており、8チャンネルの出力に対し、+22~-96dB(0.25dBステップ)のゲインコントロールが可能。ダイナミックレンジは127dB。1万個出荷時の単価は1200~1500円程度になるという。

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