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【特別対談】二大企業の重鎮が語る、アップルへの提言――第3回「望まれるパソコン業界のパラダイムシフト」

2006年04月12日 19時58分更新

文● 林 信行、編集部

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第1回第2回に続き、最終回となる今回では、Intel Macの展望やコンピューター業界全体の未来について熱く語られた。米アップルコンピュータ社、そしてパソコン業界がよりよい方向に向かうために、巨頭2社の元トップが提言する秘策に注目だ。

*この対談はMac miniとBoot Campの発表前、2月上旬に収録されたものです。

対談風景
左・インテル(株)元会長・西岡郁夫氏、右・マイクロソフト(株)元会長・古川 享氏 撮影:(有)パシャ 篠原孝志 協力:九段会館


紆余曲折を経てアップルと成就

――米インテル社とMacはもともと、関わりが深かったんですよね?


【西岡】 ええ、インテルはMacを片思いし続けていた会社で、ずっとラブコールを送り続けていましたね。

1993年に米国で開催された“COMDEX”(コムデックス)というコンピューターの展示会で、アップルはインテルCPUで動くMac OS(コード名“StarTrek”)を招待客だけに見せてくれました。「やっとMacが世界標準になる」と喜んだんですが、当時のアップルCEOのジョン・スカリーはこの開発計画を中止したんですよ。あれは本当に残念だった。

その頃のWindowsはネットワーク対応が弱かったし、あのOSがそのまま完成して世に出ていたら、ビル・ゲイツは今の地位にいなかったのでは、とも思います。1995年に『Windows 95』が出たときも「なんだ、こんなのもうとっくにMacでできていたよ」というのが率直な感想でしたから。


――私はその5年後くらいにスカリーをインタビューしました。「アップルは儲けの大半をハードの売り上げから得ていたものの、MS-DOSやWindowsに対抗するには倍近い値段をOSに付けて、さらに社員も大幅に削減しないといけなかった」と振り返っています。


【西岡】 そう、アップルは徹底的にハード依存の会社だったんですよね。


【古川】 ただ、私はそこはやり方次第だと思いますよ。アップル日本法人の社長就任の話を持ちかけられた際、クパチーノの本社に「OSのライセンスだけで料金を徴収せずに、互換機メーカーからハードウェアのライセンス料も徴収するようにすれば、自分たちで製造するよりも儲かるのでは」と提案したんです。でも、露骨に「日本法人の仕事はMacを売るだけだ」と言われてね(笑)。

もし、互換機戦略を展開するなら、ソニー(株)とかの日本企業との橋渡しもできると言ったのだけど、「われわれが探しているのはMacを売ってくれる人物で、それ以外のことは期待していない」と言われて、そこで話が終わってしまった。あとから聞いたら、ソニーの出井さん(出井伸之元会長)もMacの互換機を作りたいとアップルに声をかけていたけど、実現しなかったらしいですね。


【西岡】 インテルもそうやってラブコールを送り続けては無視されてきたんですよ。

――でも、それが長い紆余曲折の末、今回、ようやく実ったんですね。


【古川】 新しいインテルMacのテレビCM、あれを見て驚いたんですけど、普通、CPUの製造ラインは横に流れているはずなのに、CM内のシーンではまるでCPUが別世界へ昇天していくかのようにスーッと上がっていくじゃないですか。それで、iMacの中に入る。

スティーブ・ジョブズもあのCMがよほど気に入ったのか、たった90分の基調講演で2回も流していたけど、今回の提携における、アップルの期待の大きさみたいなものを感じますよね。

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