富士通(株)は7日、東京・紀尾井町にあるホテルニューオータニにプレス関係者を集め、電子デバイス事業の戦略説明会を開催。説明会には取締役専務兼経営執行役専務の小野敏彦氏が出席し、半導体業界の現状や同社の方針などについて解説した。
取締役専務/経営執行役専務の小野敏彦氏 |
小野氏は冒頭で、半導体市場について「2005年の4月~6月を底に業績が回復してきた。いろいろな不確定要素はあるのだが、2006年は堅調に推移すると見ている」とコメントした。
その上で半導体ビジネスは、「依然としてPCと携帯が世の中を引っ張っている。世界中の半導体はこの2大アプリを中心に動いているのだが、富士通を含めて日本勢はこの分野に弱い。つまり“天下の王道”から外れている」と語った。
米国の調査会社・iSuppli社を出典とする“2015年 アプリ別半導体消費予測と成長率”のグラフ。10年先の市場でも、PCと携帯電話という“2大アプリ”が消費量/成長率で高い数値と予測している |
2005年第3四半期(10月~12月)における、デバイスソリューション事業の決算では、売上高が前年比で0.1%減となっているが、この理由について小野氏は「プラズマディスプレー(PDP)、液晶ディスプレー(LCD)の事業を譲渡したため」と解説する。
2005年第四四半期におけるデバイスソリューションの決算。売上高は0.1%減となっているが、PDP/LCDの事業譲渡の影響を考慮して売上高を計算すると、前年比で12.8%増に転じるとしている |
2002年より着手した電子デバイス事業の構造改革についても言及。小野氏によれば、「以前はロジック/フラッシュ/メディアデバイス/LCD/PDP/化合物といった多様な事業を展開していたが、各分野で莫大な投資がかかっていた」とのこと。
そこで、2005年2月にLCD事業をシャープ(株)に譲渡。同じく2月には、PDP事業を担当していた(株)日立製作所との合弁会社、富士通日立プラズマディスプレイ(株)の経営権を日立製作所に譲渡した。
化合物を扱っていた富士通カンタムデバイス(株)は、2004年4月に住友電気工業の半導体デバイス部門と統合してユーディナデバイス(株)として分社化。フラッシュメモリー事業も米Advanced Micro Devices(AMD)社と統合して、2003年7月に米Spansion社を設立。
複数分野にわたっていたデバイス事業をスリム化し、ロジック事業にリソースを集中する改革を行なってきた |
「3年かけて事業構造を変えて、ロジック事業にリソースを集中する」(小野氏)ように方向転換してきた。今後は、130nm以上の“基盤”テクノロジーが7割、90nm以下の“先端”テクノロジーが3割というリソース配分で事業を展開していく。
ロジック事業の売り上げ実績と見込み |
ビジネスモデルに関して、「最近では、90nmや65nmといった“製造”に関する部分が注目されていて、もちろん富士通も高く評価していただいているが、富士通のデバイス事業に関して本当にお客が魅力を感じているのは“設計、試作、検証”の部分。このレベルでやり直しをしていると、時間もコストもかかってしまう。富士通は、デバイスに組み込むソフトも含めて検証しているため、ほぼ100%に近い状態で“一発完動”する」(小野氏)と、同社の強みを語る。
ビジネスモデルについて |
先端分野の開発・量産では、製造プロセスにおいて「65nmは製品デザインの受付を開始、45nmはプロセスモジュールの開発が完了」(小野氏)と発言。60/90nmプロセスに対応した300mmシリコンウエハーの製造能力を強化するため、2007年4月に稼働、7月に量産の予定で三重工場に新棟を建設する。
45/60/90nmプロセスの開発・量産状況 | 2005年9月に量産をスタートした第1棟に加え、第2棟を建設中 | |
先端ロジックでは画像/ワイアレス/セキュリティーの分野に注力する | 今後の課題 |