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東京工業大学や日本AMDなど、日本最速の100TFLOPS超を目指すスーパーコンピューティング・グリッドの説明会を開催――5240個のOpteronでクラスターを構成

2005年11月29日 21時10分更新

文● 編集部 小西利明

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東京工業大学 学術国際情報センターの松岡聡教授
東京工業大学 学術国際情報センターの松岡聡教授

東京工業大学と日本エイ・エム・ディ(株)などは共同で、東京都目黒区の大岡山キャンパス内にて、同大学が導入を進めているスーパーコンピューティング・グリッドについての説明会を開催した。同システムは日本電気(株)(以下AMD)がリードインテグレーターとして受注したもので、AMDのサーバー&ワークステーション用CPU“Opteron”のデュアルコア版を計10480コア分(5240 CPU)搭載。平成18年(2006年)までに国内最高速となる100TFLOPS(テラフロップス、1秒間に100兆回の演算を行なえる)を超える演算能力を備える予定。

東京工業大学のスーパーコンピューティング・グリッドの構成図
東京工業大学のスーパーコンピューティング・グリッドの構成図

同大学が導入するシステムは、デュアルコアのOpteronを8個(16コア)搭載するサン・マイクロシステムズ(株)のサーバー製品“Sun Fire x64”シリーズ(未発表製品にて型番等は不明)を655ノード分、CPUコア数で10480個分を連結したクラスターシステムとして構成されている。Opteronは2.4GHzを639ノード分、2.6GHzを16ノード分採用しているとのこと。さらにOpteronに加えて、米ClearSpeed Technology社製の『CSX600プロセッサー』(※1)を、SIMD演算アクセラレーターとして360ノード分装備しており、Opteron 10480コアで50TFLOPS、CSX600 360ノード分で35TFLOPSの、計85TFLOPSの演算能力を2006年3月時点で備える。さらにCSX600を追加調達して600ノードに増強する予定があり、これが実現されると演算能力は110TFLOPSとなり、日本国内はもとよりアジア圏でも最高速、世界のスーパーコンピューターの速度ランキング“Top500”でも、ベスト5に入ると見られている。OSにはLinux(SUSE Linux Enterprise)を採用しているが、将来的にはWindowsやSolaris 10なども採用の予定。搭載メモリー総量は21.4TB。ネットワークにはイスラエルのVoltaire社のInfiniband 10Gbpsネットワークシステム(最大で13Tbps)を、ストレージネットワークには米Cluster File Systems社の大規模並列ファイルシステム“lustre”を採用(ストレージ総容量 約1.1PB)するなど、多くの企業が参加したプロジェクトとなっている。ちなみに同システムは競争入札で応札されたとのことだが、導入にかかった費用は公表されていない。

※1 64bit浮動小数点演算コアを1プロセッサー内に96基搭載した浮動小数点演算プロセッサー

説明会にはNEC 執行役員常務の山本正彦氏、日本AMD 代表取締役社長のディビット M.ユーゼ(David M. Uze)氏、サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長のダン・ミラー(Dan Miller)氏も来場し、同大学の取り組みに祝辞を述べた。

スーパーコンピューティング・グリッドに携わった企業は、NECを中心として多岐に渡る 100TFLOPSの演算能力は、“地球シミュレータ”の40TFLOPSを大きくしのぐ。ロードマップを見ると、2008年に200TFLOPS、2010年には1PFLOPSを達成する計画もあるようだ
スーパーコンピューティング・グリッドに携わった企業は、NECを中心として多岐に渡る100TFLOPSの演算能力は、“地球シミュレータ”の40TFLOPSを大きくしのぐ。ロードマップを見ると、2008年に200TFLOPS、2010年には1PFLOPSを達成する計画もあるようだ

同大学ではこのシステムの利用例として、“地磁気の変動予測”“生体物質の構造機能予測解析”“カーボンナノチューブのシミュレーション”などの例を挙げている。システムについての説明を担当した同大学 学術国際情報センターの松岡聡教授はそのほかの効用として、アジア最速の情報インフラを備えることによる大学自体のネームバリュー向上や、学内情報システムの集約化なども可能であるとした。松岡教授は同システムの特にSIMD演算アクセラレーターが効果を発揮しやすい用途として、流体シミュレーションやバイオインフォマティクス(生命工学に情報科学/情報工学を組み合わせた学問)の研究などを挙げている。

同システムの効用。演算能力を生かした研究の促進だけでなく、大学内情報システムのホスティングや、大学自体の競争力向上なども効用とされている 同システムでの研究が期待される分野
同システムの効用。演算能力を生かした研究の促進だけでなく、大学内情報システムのホスティングや、大学自体の競争力向上なども効用とされている同システムでの研究が期待される分野

また松岡教授は“みんなのスパコン”というキーワードを掲げて、大学全体で同システムを活用可能とするという目標を掲げた。既存のスーパーコンピューターは、OSもアプリケーションも独自の“孤高のハイエンド”で利用しにくいものだったと述べ、同システムではパソコンで一般的なx86ベースのCPUを使い、OSにもパソコンで一般的なLinuxやWindowsを導入することで利用のための敷居を大きく下げ、スーパーコンピューターの演算能力を使った研究教育を促進するという。松岡教授はこのコンセプトを、「新入の学部生がいきなりスーパーコンピューターユーザーになれる」「グランドチャレンジを日常的に行なえる」といった言葉で説明した。ただしx86ベースのOpteronはまだしも、SIMD演算アクセラレーターのプログラミングには、高度な技術が要求されるようだ。

文部科学省が音頭を取って、2006年度から研究開発が始まる“京速計算機システム”と同システムの比較も示され、京速計算機システムの開発に必要な技術的課題の多さが提示された
文部科学省が音頭を取って、2006年度から研究開発が始まる“京速計算機システム”と同システムの比較も示され、京速計算機システムの開発に必要な技術的課題の多さが提示された

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