現在最も“高音質”なHDDオーディオプレーヤーとして、7月の発売以来、マニア層を中心に絶大な支持を集めてきたケンウッドの「HD20GA7」。その上位機種が発売された。
デジタルアンプの搭載など、高音質が評価されている「HD20GA7」の上位モデルが「HD30GA9」だ。 |
先週末から店頭に並び始めた「HD30GA9」は、新たに“Media KEG”(メディアケグ)のブランド名を冠し、HDD容量が従来の20GBから30GBに増量された新モデル。さらにMP3やWMAの圧縮時に失われた高域成分を補完して再生する“Supreme”(サプリーム)と、独自の可逆圧縮コーデック“KENWOOD Lossless”(KLS形式)を新たにサポートした。非磁性体ステンレスでできた左右完全対称のシャーシに、振動や共振を効果的に減衰できるという調整穴(fホール)を追加するなど、細かな音質のチューニングも行なわれている。ちなみに、末尾の数字“9”は、クラスを示すもので、従来製品の“7”よりも上位製品であることを示している。
外観や操作性は従来機を踏襲
外観は従来機種とほとんど変わらない。唯一の違いは背面に記された型番と“Supreme”のシルク印刷だ。カラーリングはブラックの1色のみで、HD20GA7で選べたホワイトは選択できない。QVGA(240×320ドット)表示に対応した2.2インチの低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレーや、押し込みの深さでメニューの移動速度が2段階に変わる十字ボタン、操作ボタンの隙間が青く光るイルミネーションといった特徴も変わらない。
中央の“SP”の文字がSupremeロゴ。 | 本体にもサプリーム(Supreme)の項目が追加された。 |
再生可能な形式は新たに追加されたKLS形式(可逆圧縮)のほか、WAV(非圧縮)、MP3(最大320kbps)、WMA(最大192kbps)に対応する。エンコーダーソフトは特に付属しないが、Windows標準添付のWindows Media 10(または9)などフリーのエンコーダーやライブラリーソフトが出回っているので、特に問題はないだろう。転送ソフトはオリジナルの「KENWOOD Media Application」(以下KMA)が付属し、暗号化などの処理を行なう。
KMAをインストールしてあれば、Windows Media PlayerでプレーヤーにWMAやMP3のファイルを転送することもできる。逆に、音楽配信サービスなどから入手した著作権保護付きのWMAファイルは、Windows Media Playerからしか転送できない。なお、マイクロソフトの可逆圧縮形式であるWMA Losslessには対応しない。HD30GA9に転送する際は、192kbps以下のビットレートに再エンコードする必要があるので、注意が必要だ。
十字キーの上下ボタンは浅く押した場合はゆっくり、深く押した場合は速くスクロールできる |
本体の使い勝手もHD20GA7とほぼ同様である。
違いは、本体メニューにSupremeのオン/オフメニューが追加されたことと、転送ソフト(KMA)にパソコンからHD30GA9にWAVファイルを転送する際に、自動的にKENWOOD Lossless(KLS)形式に変換するオプションが追加されたことだ。それ以外は基本的に9月に公開されたHD20GA7用の最新アップデータの内容に即している。
KMAからの転送時にはパソコン内の指定したファイルをHD30GA9にコピーする“転送”と、フォルダー内容を合わせる“同期”の2種類が選べるが、HD20GA7に当初付属していたバージョンでは、同期フォルダーの階層構造が無視されたり、KMAからプレーヤーに転送したファイルを削除できない仕様になっていた。これらの問題点はアップデートで改良されている。後述する曲目情報の扱いなど、iPodシリーズに付属するフリーソフト「iTunes」などと比べてまだ垢抜けない部分があるが、機能面での致命的な不満はほぼ解消された。