NTT Com、個人利用に適した低価格のIPv6通信サービス“OCN IPv6”を12月上旬より提供開始――料金を抑えてIPv6対応機器やアプリケーションを促進
2005年11月21日 21時23分更新
IPv6で接続したWindowsパソコンから、家庭内の家電などを制御するデモ。エアコンに見立てた扇風機や、照明器具、ドアロックを遠隔操作した |
NTTコミュニケーションズ(株)(以下NTT Com)は21日、個人顧客向けのIPv6通信サービス“OCN IPv6”を、12月上旬から提供すると発表した。同社の提供するインターネット接続サービス“OCN”の会員向けに提供され、月額料金は315円。Windows XP用の接続プログラムも無償で提供される。
同社は以前より、企業顧客のみならず個人ユーザーを対象として、IPv6を利用できるサービス各種を提供していた。しかし個人ユーザーが広くIPv6を利用する環境は整ってはおらず、当然ながらIPv6を前提としたアプリケーションやサービスもほとんどない。そこで同社は、既存のIPv4網で使えるIPv6サービスを提供することで、IPv6対応機器やサービス開発を促進するとしている。OCN IPv6の特徴は以下のとおり。
- 既存のインターネット接続(IPv4)との併用が可能
- リモートでの接続が可能
- 公衆無線LANサービスなどを利用して、外部からIPv6サービスを利用できる
- 月額料金は315円
- 同時に2セッションの利用が可能
- IPアドレス固定と非固定の2セッションを同時に利用可能。1セッションあたり/64(2の64乗個)のグローバルIPアドレスブロックを提供
- Windows XP用接続プログラムを無償提供
- IPv6での接続に必要なプログラムのWindows XP SP2用を、同社ウェブサイト等から無償提供する。
- NATの内側から利用可能
- 個人宅のブロードバンドルーターの内側から、接続プログラムを使用してIPv6サービスを利用できる。また外部から宅内機器への接続も、ルーター側の設定変更等は不要。
NTT Com コンシューマ&オフィス事業部 OCNサービス部 担当課長の鈴木聡介氏 |
記者発表会にて同社コンシューマ&オフィス事業部 OCNサービス部 担当課長の鈴木聡介氏は、IPv4のグローバルIPアドレスが、昨年から急激に消費されており、2009年にはIPアドレスの枯渇問題が現実のものとなると述べたうえで、同社が提供するOCN IPv6サービスにより、「IPv6の普及を大きく阻害していると思われる“使い勝手の悪さ”を、基本的にすべて解消できたのではないか」と述べた。金額を315円と非常に安価に設定した点についても、「数千円では個人に広がらない」(鈴木氏)との考えに基づくものという。OCN IPv6を利用可能なOCNのサービスは以下のとおり。
- OCN光 with フレッツ
- OCN光「Bフレッツ」/「フレッツ・光プレミアム」
- OCN ADSL「フレッツ」
- OCN ADSLセット
- OCNモバイルアクセス
- OCNダイヤルアクセス
- バリュープラン
IPv6で同社のウェブサイトに接続している様子。写真では見えないが、IPv6での接続を示す文字列も表示されていた |
前述の特徴にもあるように、OCN IPv6では既存の個人宅のインターネット環境やサービスを、そのまま利用しながらIPv6のサービスを利用可能とするように考慮されている。既存のIPv4ベースのインターネット接続と、IPv6ベースを同時に利用できる。OCN IPv6を利用する際には、接続プログラムを起動してサービスに接続する。雰囲気的にはダイアルアップでのインターネット接続と同じようなものだ。ただし接続プログラムはOCN専用で、他のISPを利用することはできないとのことだ。鈴木氏は次期Windowsである『Windows Vista』では標準でIPv6での接続がサポートされるため、接続ソフトは不要になるとした。またルーターメーカーにも対応を要請しており、(株)コレガが対応するルーター製品を予定していると、鈴木氏は述べた。またサービス開始と同時期に、接続に必要な仕様が公開される予定で、Windows XP以外のOS(LinuxやFree BSDなど)用の接続プログラム開発を可能とするとしている。
携帯電話でもIPv6で家庭内の機器に接続
デモの概要図。IPv4ベースのブロードバンドルーターを経由して、家庭内のIPv6対応機器と接続する |
IPv6ではアドレス長が128bitになることで、膨大な数のIPアドレスが使用可能になる。それにより期待されているのが、家庭内のさまざまな機器にIPアドレスを割り当てて、宅内や宅外からネットワーク経由で機器間を接続(Machine to Machine)し、情報をやり取りしたりリモートでの制御を実現することだ。OCN IPv6でもこうした用途を想定し、公衆無線LAN経由でIPv6を使用した外部からの接続をサポート。外出先から自宅に接続し、宅内のパソコンや機器を制御することを可能としている。
記者発表で披露されたデモでは、こうしたリモート接続による宅内機器の制御を想定したデモが行なわれた。デモでは大手町にある同社のオフィス内に、インターネット経由(Bフレッツ)で接続して、IPv6対応ウェブカメラを操作したり、エアコンや照明器具、ドアロックを操作してみせた。またパソコン内に蓄積されたビデオコンテンツを、ストリーミング再生するデモも披露され、良好なパフォーマンスを実現していることが示された。
IPv6経由でメディアサーバーからビデオ映像を再生したデモ。ウェブブラウザー上からリストアップされたコンテンツを選ぶと、Windows Media Playerで高画質のビデオ映像が、途切れることなく再生されていた |
現状で予定されているOCN IPv6のサービスはあくまでWindows XPを搭載するパソコン用だが、携帯電話機もIPv6端末として期待されている。そのため携帯電話機からIPv6網に接続して、パソコンと同じように宅内のIPv6機器を制御するデモも披露された。デモに使用されていた携帯電話機は、ごく一般的なPDCタイプの端末(F506i)である。家電のオンオフだけでなく、ウェブカメラを上下左右に向けたり、映像を静止画として表示する様子が見られた。商用サービスへの展開も期待されるだろう。
携帯電話からIPv6経由で家庭に接続し、パソコンと同じようにウェブカメラを操作しているデモ。携帯側の回線速度の限界でリアルタイムでの映像表示は困難のようだが、携帯側で更新をかけると、静止画が更新されるようだ | 携帯電話側の操作ソフト。カメラを上下左右に向けたり、ズームやワイドなども操作できる |