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富士通研究所、H.264対応の映像圧縮伸張回路を発表──従来の1/5の回路規模で100mW以下の消費電力

2005年11月14日 23時39分更新

文● 編集部 小林久

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(株)富士通研究所は14日、映像圧縮技術H.264規格による圧縮/伸張処理に対応したコア回路を開発したと発表した。

評価ボード
富士通研究所が試作したH.264の圧縮伸張に対応した評価ボード

この回路はリアルタイムでSD品質(720×576ドット)の映像を圧縮でき、90nmプロセス時で100mW以下の消費電力を実現できる。富士通研究所の話では「H.264に対応した圧縮/伸張チップに関しては海外のベンチャー企業数社が技術発表を行なっているが、チップとしてはまだ市場になく、消費電力も数百mW。また、いずれもベースラインプロファイルに対応したもの」だという。富士通研究所の開発したコア回路はこれらのチップの数分の1の消費電力で駆動できるほか、より複雑で高性能な処理が要求されるメインプロファイル・レベル3.0に対応している。

コア回路は現在FPGAを利用した試作回路の段階。2006年末までに音声コーデックや各種インターフェースを1チップに統合したLSIとして、製品化する予定。

訂正とお詫び:初出時に富士通マイクロデバイス(株)からの製品化という記述がありましたが、製品化は富士通(株)が行ないます。(11月15日)

画像を間引いて負荷を低減

H.264は、MPEG-4やMPEG-2よりも低いビットレートでより高い画質を維持できる映像圧縮方式として注目を浴びているが、「MPEG-2の10倍程度の処理量(=10倍の回路規模)が必要とされている」という。そのため、バッテリー駆動できるほど低い消費電力でH.264の圧縮処理に対応できるチップを開発することは極めて困難だったという。

そこで富士通研究所は、H.264の国際標準ソフトと比較して1/5程度の処理量で、ビットレート換算で約30%の高画質化が可能な画像処理アルゴリズムの開発に着手した。試作された標準テレビ対応のH.264コア回路の動作クロックは54MHz(メモリーインターフェースは108MHz)で、回路規模も200万ゲートと小規模に抑えられたという。

富士通研究所では、まず最も高い負荷のかかる“動き検索”のアルゴリズムを最適化した。従来方式では、フレーム間の相違(動き)を検出するために画面の広い範囲をくまなく検索していたが、同社では動きを検出する際にまずフレームの解像度を落として探索する対象を狭め、段階的に高い解像度に戻しながら最適な処理を行なうようにした。

段階的な絞り込みによる動き検索アルゴリズム
段階的な絞り込みによる動き検索アルゴリズム

また、高画質化のために輪郭抽出や色の乗り方などから、顔やゆっくり動く物体といった人間がより強く注目する場所(注視点領域)を判別する技術も採用した。画像劣化が目立つ部分の圧縮率を低く、それ以外の背景部分の圧縮率を高くすることで画質を維持しながら、高い圧縮率を実現することが可能になるという。

人間の資格を考慮した画像制御技術
人間の視覚を考慮した画像制御技術
画質も有利
画質を維持しながら圧縮率が低減できるようになった。会場では7MbpsのMPEG-2とH.264の画質比較、H.264の国際標準ソフトと富士通研究所のエンコーダーの画質を比較するデモも行なわれた。

このほか、動作クロックや供給・停止制御をより細かく行なうことで余分な消費電力を減らす工夫も行なっている。

佐々木氏
バイオメトリクス研究センター長を務める佐々木繁氏

富士通研究所で画像・バイオメトリクス研究センター長を務める佐々木繁(ささき しげる)氏は、本日神奈川県・川崎市にある富士通研究所で行なわれた記者説明会で、今回発表になったH.264のコア回路をデジタルカメラやビデオカメラを初めとした家電機器、ネットワークを利用した比較的小規模な配信システムなどへの応用を考えているとした。

なお、ハイビジョン画質に対応したハイプロファイルへの対応に関して富士通研究所では、方式としてはに詰まりつつあるが処理量が依然として高いため、次世代DVD規格の立ち上がり状況など、再来年程度を目標に市場動向とニーズを見ながら検討している段階にあるという。



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