(株)ALBERT(アルベルト)は11日、4日にオープンした家電商品選択支援サイト“教えて!家電”の概要を説明した。ALBERTは、コンサルティング会社の(株)インタースコープ、通信販売の(株)ニッセンが出資して今年7月1日に設立された新しい会社。同社では、この教えて!家電のサービスを皮切りに消費者やユーザーのさまざまな疑問や悩みに答えられるウェブプラットフォーム“教えてーな”シリーズを展開していくという。
通販のニッセンとコンサルティング会社が協業
教えて!家電は、提案型の商品検索サイトで、購入条件に答えることでそのユーザーにあった最適な製品を提案してくれる“商品リコメンデーション機能”、Q&Aコミュニティーサイトの“OKweb”やリアル店舗の店員に“質問”できる機能、写真投稿可能な掲示板機能などが提供されている。現在提供されているデジタルカメラ、パソコン、プリンター、薄型テレビ、洗濯機の5カテゴリーに加え、近日中に白物家電や掃除機、ビデオカメラ、DVDレコーダー、デジタルオーディオなどの提供も行なっていく。これらは“購入する際に迷うもの”を基準に選ばれたという。
教えて!家電のトップページ |
ターゲットはECなどでインターネットを利用するが、商品知識はそれほど多くない顧客層。TSUKUMOネットショップ、上新電機オンラインショップ、アット・ニフティストアなど30のECサイトと提携しており、ユーザーが教えて!家電を経由して商品を購入すると売り上げの一部がALBERTにバックされる“アフィリエイト”モデルを採用している。
また、“誰が”“どんな理由で”“何に迷って”“何を買ったのか”という顧客の消費行動を分析したコンサルティングなどBtoBの展開。購入履歴などから効果の高いユーザーに広告を提供する1to1プロモーションなど、収集した個人情報を利用したマーケティング情報の提供も積極的に行なっていくという。
ALBERT代表取締役社長の上村崇氏 | ニッセン通販事業部インターネット事業推進部副部長の福田裕二氏 |
ALBERT代表取締役会長、インタースコープ取締役会長の山川義介氏 | デジタル・メディア評論家の麻倉怜士氏 |
説明会に出席したALBERT代表取締役社長の上村崇(うえむら たかし)氏は、購入レポートを閲覧/書き込めるコミュニティーの参加など「購買のライフサイクルのすべての段階(最初に購入してから次に買い換えるまで)で役立つリコメンデーション機能を提供すること」、消費者のニーズを捉えた1to1のプロモーションは「大手だけではなく個人店舗にも有効」であること、「家電以外の商材も揃え、月間2億ページビューの達成を目指す」などと述べた。ALBERTでは、今後は家電だけでなく金融商品や転職情報、保険、旅行といった商品も提供していく方針だという。また、携帯電話機向けのサービスや、リアル店舗の紹介、価格比較サイトなどとのアライアンスも進めていきたいという。
上村氏は「インターネットからリアル店舗に誘導していくためにはモバイルは重要と考えており、当初から検討を続けている」とした。
ニッセン通販事業部インターネット事業推進部副部長で、ALBERT取締役の福田裕二(ふくだ ゆうじ)氏は、ニッセンがALBERTに投資した目的として、ニッセンの持つデータベースを利用して短期的に収益を計上できる点を挙げた。同氏は「ネットだけで350万人、通販も含めると2000万人の会員に対して“教えてーな”のソリューションを提供することで売り上げの拡大が見込める」「通販のノウハウをALBERTに提供することで両社のビジネスチャンスが広がる」などとコメントした。
リコメンデーション機能をコアに
教えて!家電のコアと言えるのが、独自開発した商品リコメンデーション(推薦)エンジン“Bull's eye”である。
顧客に商品を進める方法としては、いくつかの手法がある。最もシンプルなのは“アンケート”ベースの方法で、性別や年齢、趣味といった登録情報(プロファイル)を元に商品情報を提供する。また、Aの商品を買った人はBの商品も買う可能性が高い(ハンバーガーを買ったらポテトを薦める、航空券を買ったら現地の情報が欲しいはず)といった信頼性のある相関関係を見つけ、その法則に基づいた提案を行なう“ルールベース”の推薦方法などがある。
また最近では、購買履歴やアクセス履歴を、コンピューターが統計的に分析し、顧客の消費行動にあった商品を自動的に推薦する“リアルタイムリコメンデーション”の採用も進んでいる。リアルタイムリコメンデーションは購入履歴を利用する点では、ルールベースの方式と同様だがルールのメンテナンスを人間が行なわずに済むため運用コストが抑えられることなどが特徴となっている。
代表例はAmazon.co.jpなどが採用している“協調フィルタリング”で、ユーザーの購入履歴(行動)を嗜好としてデータ化し、そのユーザーと似たような行動を取っている(似たような嗜好を持つ)ユーザーの購入履歴を参考に推薦する商品を決める。
一方“ディープナレッジ”などとも呼ばれる“コンテンツベース”のフィルタリングもある。これはコンテンツ(商品情報)に付加した属性情報(スペックなど)に価値の重み付け(画素数はある程度あれば満足する人が多い、サイズは大きすぎても小さすぎても満足度が下がる)を施したデータベースをつくり、そのモデルに対するユーザーのレスポンス(購入履歴や、要求スペック)を観察・蓄積し、ユーザーの嗜好を読み取っていく手法。“重み付けユークリッド距離”と呼ばれる方法で、提供されている商品のスペックとユーザーが理想とするスペックがどれだけかけ離れているかを数値化し、一致度の高いものから順番に推薦していく。Bull's eyeはこの“コンテンツベースフィルタリング”を元に開発されている。
教えてーなでは、Bull's eyeを利用してより効果的なリコメンデーションを考えているという。ALBERT代表取締役会長でインタースコープ取締役会長の山川義介(やまかわ よしすけ)氏は記者の質問に対して、今後は家電製品の購入履歴だけではなく、家族構成や家の大きさ、所有している自動車などもトータルにみたリコメンデーション機能の追加、ユーザーが購入した商品をリスト化してオークションサイトへの代行出品を行なうなど、アフターサービス、リサイクルの分野も積極的に開拓していく意欲があることを示した。
トップページで“商品リコメンデーション”をクリック | 商品カテゴリーなどを選択する |
スペック内容のうちどの部分を重視するかはスライドバーで指定する | 商品カタログの中から該当する製品がピックアップされた |
なお、発表会では教えて!家電でコラム執筆を担当するデジタル・メディア評論家の麻倉怜士(あさくら れいじ)氏も出席。同サービスについて「雑誌のよさはディテールだが、双方向ではない。リテラシーがなくても質問に答えて推薦を受けられるというの新しい」と述べた。一方で、今後の家電製品(特にAV機器)に関して「デジタルには2面性があって、安く均一にできる一方で、切り口を変えればまったく新しいものができる。パフォーマンス競争や感動度の違いといった部分を軸に、違いを感じさせる製品を開発してほしい」とした。
同氏はAVの3つの方向性として、ハイビジョンが、放送、パッケージソフト、インターネット配信を一気通貫することで感動を生むハイクオリティーな映像が楽しめるようになること、この10年は圧縮技術による利便性の重視がメーカーの関心事だったが、フルHDパネルの普及や高音質な音楽配信に象徴されるように“いい音・いい絵”で楽しむという品質への回帰が始まっていること、ポータブルオーディオに続く機器として映像を外出先で見るデバイスが定着するかどうかに注目していると述べた。