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スカイプ・テクノロジーズのCEO、ニクラス・センストローム氏が来日――「eBayは8700万の優良顧客を持つのが魅力」

2005年11月07日 18時11分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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ルクセンブルクのスカイプ・テクノロジーズ(Skype Technologies)社は東京・赤坂見附のホテルニューオータニにおいて7日、(株)日経BPの日経コミュニケーションと共同で、日本で初の公認イベント“Skype Day in Japan 2005”を開催した。それに併せて、同社の創業者でCEO(最高経営責任者)のニクラス・セントローム(Niklas Zennstrom)氏が来日し、P2P通話ソフト『Skype(スカイプ)』の日本でのイベント開催の背景や、同社が提案するビジネス展開(ビジネスソリューション)などを説明した。

スカイプ・テクノロジーズの創業者でCEOのニクラス・セントローム氏
スカイプ・テクノロジーズの創業者でCEOのニクラス・セントローム氏

記者会見に先立って行なわれたセントローム氏の基調講演では、

  • 成長を続ける日本市場の将来性を見通して、今回のイベントを日本で開催した
  • 日本でもすでに50社以上のハードウェア/ソフトウェア企業が対応製品やサービスを開発しており、パートナー企業は増加を続けている
  • 音声サービスと対応する周辺機器/サービスを連携した“Skype Ecosystem”を日本でも積極的に展開し、サポート体制の整備を推進していく
  • その一環として開発者向けのコミュニティー“Skype Developer Zone”を展開、その中で“Skype API”(Skypeの機能をほかのソフトウェアなどから利用するためのインターフェース)を公開し、Windows/Mac OS/Linuxなどの環境でSkype関連の新製品は新サービスを開発・提供する開発者を支援している
  • さらに、ビジネス向けの展開を視野に入れつつ、“プラットフォーム・アドバイザリー・カウンシル”を構築。現在開発している“Skypeプラットフォーム”にデベロッパーからの意見を取り入れる体制を整えており、さらにカウンシルの会員に日本からも約20名が参加している

などが語られた。

これを受ける形で午後に開催された記者会見では、集まった記者からの質問に答えるQ&Aセッションが行なわれた。ここでは、そのやり取りを紹介する。

[記者] 先日、米eBay社の買収を受けて傘下に入ったが(関連記事)、そのメリットは何か? また、(eBayとの協業による)新たなサービスを検討しているのか?
[センストローム] さまざまなオプション(選択肢)の中から、戦略的なパートナーとしてeBayを選択した。オンラインオークションやマーケットプレイス(中古販売)などのサービスはもとより、8700万の優良顧客を持つことが魅力と考えた。
今後は“Pay per Call”というサービスを検討している。クリックすると広告主の提供を受けて、通話サービスを利用できるというもの。今後も“オンラインコミュニケーションカンパニー”を目指すという点では、従来と何ら変わらない。
[記者] ワイヤレス(携帯電話事業)への展望は? ドイツでは携帯キャリアー会社のE-Plus Mobifunk GmbHと提携したが、日本ではどこかとの提携があるのか?
[センストローム] (無線通信全般を指して)ワイヤレスサービスとしては、ノートパソコンやPDA向けのクライアントを提供しているが、パートナー(提携企業)は必ずしも求めていない。ただし、提携することでユーザーメリットがあるのも事実だろう。どこと折衝しているかについては、この場では言えない。
[記者] E-Plusとの提携について、具体的に教えてほしい。
[センストローム] E-Plusでは、定額の3GサービスにSkypeの通話機能をセットにして、何分かの利用料を付属するという形で協力を実現している。(Skype側としては)ワイヤレスかどうかを意識してはいない。今現在できる技術で、携帯電話でも使えるようにしたまでです。
[記者] (日本でSkypeの販売代理店を行なう)(株)ライブドアがこの秋(編集部注:10月25日にサービス開始を当初の11月1日から12月1日に延期することを発表している)、Wi-Fiサービスを始めますが、どういうデバイスにSkypeが組み込まれるのか?
[センストローム] (ライブドアとSkypeの立場上)この場で答える状況ではないが、ほかのもの(無線LANを使った各種通信サービス)と同様にSkypeも利用できるはずだ。
[記者] 販売パートナーのライブドアはコンシューマー(一般消費者)に強いが、企業向けのチャネルは弱いのではないか? 企業向けサービスに注力するためには、ほかの販売パートナーとの提携も視野に入れていくのか?
[センストローム] 会社のスタンスとして、どこか専属のパートナーと契約するということはない。例えばフュージョン・コミュニケーションズ(株)とは“SkypeIn”(固定電話と同様の電話番号を割り当てて通話を行なうサービス)で提携し、(Skypeで通話するためのヘッドセットやマイク、ブロードバンドルーターなどの)ハードウェアでは(株)ロジクールや(株)バッファローとも提携している。それぞれの市場や企業の専門性に合わせて提携しており、企業向けサービスについても、今後提携先を検討していくつもりだ。
[記者] 日本の通信事業の特異性についてどう考えているか? 日本の総務省は、“Skypeは通信事業者ではないので、電話番号を下ろせない”としているが、これが障害になるのではないか?
[センストローム] 日本だけでなく、他国でも同様のことは言われている。元々、我々は通信事業者ではない。あくまでも通信事業者(通信インフラ)に対して、音声通話のサービスを提供している。顧客同士をつなげるサービスを提供している。そのために(顧客が固定番号による呼び出しを求めるなら)フュージョンなどとも提携していく。日本の場合(フュージョンと提携することで)、総務省の規制/免許制度に、あえて我々が携わる必要がない、というメリットがある。今後もSkypeとしてはオンラインの通話サービスを推進していくし、フュージョンの顧客以外にも同様のサービスが利用できる枠組みを作っていきたい。
[記者] MSNメッセンジャーとYahoo!メッセンジャーの相互乗り入れ(通信・通話の互換性)、Google Talkなどのサービスも出てきているが、これらはSkypeの脅威になるのか?
[センストローム] 今後時間の経過とともに分かってくることだが、これらのサービスは従来、パソコン同士のメッセージ通信サービスが中心だった。我々は最初から音声通話に注力している。今後これらのサービスが音声通話に注力していくかどうかは分からないが、我々は今後も継続的にオンラインの音声通話に注力する。
[記者] Skypeがなぜ儲けを出せるのか、いまだによく分からないのだが。
[センストローム] 今年は5000万ドル(約59億円)、来年は2億ドル(約236億円)の売上を目標としている。これらはSkypeのアカウントを作ってもらい、SkypeInを使った通話料を支払ってもらうことで稼ぎ出している。まだユーザー全体の5%程度しか支払われていない(無料利用の枠内に収まるユーザーが大半を占める)が、それでも儲けが出ているのは、マーケティングやシステムインフラなどにコストがかからないためです。

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