(株)KDDI研究所と独立行政法人の産業技術総合研究所は1日、複数のコンテンツの中から、個人のプロフィール/気分/状況などに合わせて最適と思われるものを選び出すコンテンツ推薦エンジンのプロトタイプを発表した。早ければ2005年度内(~2006年3月)、遅くとも2006年度中に実用化に向けた精度や負荷などの検証を行なう。
KDDI研究所 取締役 松本修一氏 | 産業技術総合研究所 研究コーディネーター 大蒔和仁氏 |
新システムは、物販やデジタルコンテンツ/ガイド情報などを提供するインターネットサービス(パソコン向け/携帯電話機向け)に組み込むことを目標として開発されたもの。現在それらのサービスでは、利用者に製品/コンテンツ/情報を推薦するために、人気ランキングや製品分野による商品/情報検索システム、ユーザーの利用/購買履歴に基づく推薦システムなどを運用している。しかし2社は、例えば同じ個人でも“家族と観るならこの映画”“恋人と観るならこの映画”といった具合に気分や状況によって嗜好は変化し、現状の推薦システムではそれをカバーしきれていないと分析した。
2社が開発した推薦システムは、個人のプロフィール/利用履歴/気分/状況などデータを、それらの相互依存関係を図式化する“ベイジアンネット”を用いて整理し、個人の嗜好をより的確に推定しようというもの。例えば、あるユーザーが性別や年齢などのプロフィール情報を予め入力し、実際にコンテンツを購入する際に“笑いたい”“泣きたい”など今の気分を設定すると、その条件設定の場合にユーザーがどのようなコンテンツを好むか統計情報と照らし合わせてより的確なコンテンツを推薦するのだという。データの相互依存関係を表現するモデルは2社、ベイジアンネット構築ツールは産業技術総合研究所、個性と状況に基づく推薦システムはKDDI研究所が開発した。
ユーザーのプロフィールや状況などの相互関係をベイジアンネットで整理し、適切なコンテンツを推薦するという |
プロトタイプの携帯電話版ウェブサイト。パソコン版のウェブサイトは撮影禁止のため、掲載できない |
記者発表会で公開されたプロトタイプは、映画に関する約1600人ぶんのデータをアンケートで取得してベイジアンネットを構築し、それと照らし合わせてコンテンツを推薦するというもの。プロトタイプと同じ映画の分野で実証実験を行なうかどうかは現在未定だが、産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター主任研究員の本村陽一氏は「データが多ければ多いほど推薦の精度が向上するので、(1600人ぶんでは)まだ足りない」という。なお、実用化は数年後とだけしか発表されていないが、サービス提供企業とともに実証実験の段階からデータを集め、そのまま実用化に踏み出すことを目指している。