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【Macromedia MAX 2005レポート Vol.2】サプライズゲストはやっぱりこの人“ブルース・チゼン”が登場――“General Session”レポート

2005年10月18日 23時13分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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ジー・フランク氏
ユニークたっぷりなプレゼンテーションで場を盛り上げたジー・フランク氏

17日の午前中に行なわれた1回目の“General Session”(18日には携帯電話などテーマを絞ってより掘り下げた講演となる2回目がある)では、デザイナーのジー・フランク(Ze Frank)氏による前振りのあとで、CEO(最高経営責任者)のスティーブン・イーロップ(Stephen Elop)氏、CSA(最高ソフトウェア設計責任者)のケビン・リンチ(Kevin Lynch)氏、さらに米SAP社からのゲストなどを招いて、エンタープライズ向けサービスを含むMacromediaの将来の方向性を説明した。最後にサプライズゲストとして登場したのは、Macromediaの買収完了を数ヵ月後に控えたこの人、米Adobe Systems(アドビ システムズ)社のCEOのブルース・チゼン(Bruce Chizen)氏だった。が、これは予想通りの登場とあってか、あまり驚きの声は上がらなかった。



MacromediaのCEOのスティーブン・イーロップ氏 Adobe SystemsのCEOのブルース・チゼン氏
MacromediaのCEOのスティーブン・イーロップ氏Adobe SystemsのCEOのブルース・チゼン氏

ブルース・チゼン氏の発言は先立って日本で話した内容と変わらず、MacromediaのRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)環境とAdobeの文書管理システムを融合することで両社のメリットを生かしていく、といった内容に終始した。

CSAのケビン・リンチ氏
CSAのケビン・リンチ氏

一方、セッション全体を通じて注目を集めたのは、リンチ氏が“Coming Soon”として紹介した3つのテクノロジーである、携帯電話向けの次世代Flash再生環境『Flash Lite 2.0』、RIA開発環境の新バージョン『FlexBuilder 2』とこれに対応する再生ソフトの最新版『Flash Player 8.5』、および“Flash+HTML”というデスクトップアプリケーションとして開発中の開発コードネーム“Apollo(アポロ)”だ。





Action Script 2.0に対応するモバイル向けFlash再生環境
“Flash Lite 2.0”

Flash Lite 2.0の特徴
Flash Lite 2.0の特徴

Flash Lite 2.0は“Flash Player 7”ベースで開発された携帯電話/モバイル機器向けのFlash再生環境。副社長兼テクノロジーアドバイザーの田中章雄氏の補足説明によると、従来の1.1ではFlashコンテンツの動作制御を行なう基本言語“Action Script”がごく初期の限定的な機能しか利用できないため、最近のFlashコンテンツの開発者には使いにくいものだった。しかし、Flash Lite 2.0はFlash Player 7相当のAction Script 2.0を実行可能にしたことで、より複雑な動きを制御できるようになったという。

Action Script 2.0への対応のほか、サーバーとのデータ通信を意識した設計にしており、リアルタイムにXML形式でデータをやり取りして、サーバーを参照して最新データを反映する“XMLパーサー”機能も備える。また、携帯電話に実装されたさまざまなハードウェア、具体的にはデジタルカメラの制御やGPS機能をFlashから利用するためのAPIを搭載する予定だという。これにより、ウェブブラウザーで実現したRIA環境が徐々に携帯電話(モバイル)にも実装されるようになってきた、と同社の果たす役割の重要性を強調した。



単独でコンパイル可能なRIA開発環境へ
“FlexBuilder 2”――そして“Flash Player 8.5”とは?

Flex 2/Flex Builder 2/Flex Enterprise Services 2の関係
Flex 2/Flex Builder 2/Flex Enterprise Services 2の関係

FlexBuilder 2は、従来“Zorn(ゾーン)”のコードネームで呼ばれていたもの。RIAの開発環境である『Macromedia Flex』は従来サーバーでアプリケーションを組む方やエンタープライズ向けのサービスとして開発・提供してきたが、今後はより多くのデベロッパー向けに提供するべきと捉えて、FlexBuilder 2を開発・提供するという。最も大きな特徴は単体でコンパイルしてEXEファイルを作成できるようになったことで、VisualStudioやJavaのEclipse環境でプログラム開発をしている方に、同様の開発環境を提供できるようになると説明する。

また、Flex/FlexBuilderは従来限られたデベロッパー向けに開発途中のα版/β版を提供してきたが、FlexBuilder 2では新たに“Macromedia Labs.”という開発者なら誰でも参加できるオープンなウェブページを用意し、ここでα版を試せるようにした。実際に開発してみて、気づいたことや修正してほしい要望などをぜひフィードバックしてほしいと来場した開発者に積極的な参加を促した。

SAPのシュローダー氏がVisual Composerでデータ連携をSAP上で構築 これをFlex向けに書き出して、ウェブブラウザー上でリアルタイムに変化・確認できるデータに出力してみせた
SAPのシュローダー氏がVisual Composerでデータ連携をSAP上で構築これをFlex向けに書き出して、ウェブブラウザー上でリアルタイムに変化・確認できるデータに出力してみせた

既存のFlex市場であるエンタープライズ向けにも“Flex Enterprise Service 2”を提供する。これはSAPのガイド・シュローダー(Guido Schroeder)氏がデモしたもので、SAPのプレゼンテーション開発環境(画面構築ツール)“Visual Composer”を使ってデザインしたデータをMXML形式に変換し、Flexで管理・運用するという一連の流れを実演してみせた。このほか、金融・通信など大規模なリアルタイムデータ連携が必要な環境にFlexが使われ始めていると説明。こうしたエンタープライズ向けサービスはFlex単体でカバーするのではなく、SAPなど実績のあるビジネスアプリケーションと連動する形でサービスを提供していくという狙いを示した。

Flash Player 8.5
Flash Player 8.5。最大の特徴はActionScript 3の対応だが、これに対応するFlashコンテンツの作成には、今後登場するFlex Builder 2が必要

なお、Flex 2/FlexBuilder 2に対応するFlash再生環境として現在Flash Player 8.5を開発している(現在はα版で、今後2ヵ月以内にリリース予定)。Flash Player 8.5の最大の特徴は、“Action Script 3.0”に対応することで、これは従来のAction Scriptと互換性を持たない、まったく新たに高速動作を主眼として開発した実行言語。Just In Timeコンパイラーを搭載し、ある特定のアルゴリズムを実行するテストでは1590%(15.9倍)のパフォーマンス向上がみられたという。このほか、実行時にエラーチェックを行なう、必要なオブジェクトをプログラムコードを先読みすることで事前に読み込む、メモリーの不要な領域を開放する“ガベージコレクション”を実装する、などの最適化も行なった。これにより、「プログラミングのランタイム環境としても恥ずかしくないものになった。Flashで複雑なアプリケーションを作成したい開発者も、実行速度を懸念することなく開発できるようになる」(田中氏)と強い期待感を示した。なお、Action Script 3.0を実行するVirtual Machineも一新され、Action Script 1.0/2.0とは互換性がなくなったため、既存のFlashコンテンツを再生するための旧来のVirtual Machineも合わせて搭載している。Virtual Machineのファイルサイズは100KB程度なので、ユーザーの負担にはならないだろう、とのこと。なお、Action Script 3.0対応のコンテンツ開発環境は、今のところFlex 2/FlexBuilder 2しか用意されない。Flashについては、将来のバージョンでサポートする予定としている。

Flex 2の登場に賛辞を送った、米マーキュリーインタラクティブのチーフマネージャー
Flex 2の登場に賛辞を送った一人として、米マーキュリーインタラクティブ(Mercury Interactive)社のチーフマネージャーが登場。同社はテスティングやオプティマイズ(最適化)などで、ビジネスアプリケーション開発の支援を行なう。ちなみに、日本のマーキュリー・インタラクティブ・ジャパン(株)の代表取締役社長には、アドビ システムズ(株)の元社長である石井 幹氏が就任している。このあたりに、浅からぬ因縁を感じる


HTML+Flashの意図するところは?
コードネーム=Apollo

Macromediaの示すロードマップ
Apolloの説明の導入となった、Macromediaの示すロードマップ

“Apollo”は、SOA(サービス指向アーキテクチャー)を個人向けに具現化したデスクトップアプリケーション。HTML対応といっても「Macromediaがウェブ(ブラウザー)を作るわけではない」(田中氏)。HTMLで作られたコンテンツがこれまでの資産として多く、また今後も増え続けることから、デスクトップアプリケーションの内部でHTMLコンテンツのレンダリング(解釈・表示)機能を取り込む必要があるため、と理由を説明する。ただし、HTMLエンジンを自前で用意するのか、他社と協力して実現するのかについては、未定とのこと。

Apolloの説明
Apolloの説明

会場ではApolloの示す未来像として、HDD内に溜め込んだ動画/音楽などのマルチメディアファイルをパッケージのレーベル画像で探したり、もし手元になければオンラインショップに“シームレス(連続的)”に移動して、欲しいレーベルを手に入れる。インクリメンタルサーチ(最初の数文字を入力していくと、そのスペルに合致するタイトルを自動的に絞り込む)にも対応し、“Spiderm(スパイダーマンのつづりの途中)”まで入れると、『スパイダーマン』シリーズの映像やゲーム、CDなどを探し当てると同時に、テーマが絞り込まれると自動的に、壁紙が映画『スパイダーマン2』の名シーンに切り替わって、画面全体がスパイダーマンの世界に変貌する。と、このような“ユーザーがこうあってほしい”と望む世界を具現化する入り口、デスクトップとして開発しているものだとしている。

Apolloを含むFlash/Flex関連のアーキテクチャーの未来図
Apolloを含むFlash/Flex関連のアーキテクチャーの未来図

このコンテンツ同士の紐付け(関連付け)や連続的な表示などにFlash/Flex関連技術を駆使していることをアピールするのが狙いで、同様のインターフェースをTV(STB=セットトップボックス)や携帯電話など、現在Flash Playerが利用され始めているデバイスにも応用して、TVから同じような操作で見たい映像/聞きたい音楽を探し出したり、携帯電話で最新の映画の予告編を確認しながら、映画館のチケットを予約、さらに映画館付近の地図を呼び出す、といったRIA体験を“未来予想図”として提示していた。

自分のHDD内にあるマルチメディアデータを参照する“Library”機能 マウスカーソルを“Store”に移動することで、シームレスにオンラインショッピングに移行
自分のHDD内にあるマルチメディアデータを参照する“Library”機能今すぐ見たいものが手元になければ、マウスカーソルを“Store”に移動することで、シームレスにオンラインショッピングに移行できる
スパイダーマンに関する買い物をしたければ、デスクトップもその壁紙に自動的に変化する 映像を楽しんでいるときに、関連製品(ゲームやグッズなど)が欲しくなれば、その場から探すこともできる
スパイダーマンに関する買い物をしたければ、デスクトップもその壁紙に自動的に変化するさらに映像を楽しんでいるときに、関連製品(ゲームやグッズなど)が欲しくなれば、その場から探すこともできる。ちなみに、このデモを行なっていたマイク・サンダーマイヤー(Mike Sundermeyer)氏は「わぉ、ばっちりのところで止めちゃったよ!」と喜んでいた
Apolloのイメージデモ

そのほか、Apolloの特徴として、オンライン/オフラインのどちらでも同様に利用可能(ネットワークに接続した時点で、XMLパーサーによりサーバー側の最新情報と同期する)、1クリックでウェブサイトからインストール可能で、追加機能などを自動的にダウンロードして最新状態を維持する“アップグレードマネージャー”を搭載、などを挙げた。Flash Playerをパソコンだけでなく多様なハードウェア/デバイスに組み込んできたMacromediaが、クロスプラットフォームの利点を最大限活用するべく動き出したプロジェクトと言えそうだ。

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