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ウインドリバー、米本社CEOの来日記者会見を開催――“DSO”により組み込み機器用ソフトウェア開発の効率化を

2005年08月31日 19時13分更新

文● 編集部 内田泰仁

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ウインドリバー(株)は31日、都内ホテルで記者会見を開催し、来日中の米ウインドリバー・システムズ(Wind River Systems)社の会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)のケン・クライン(Ken Klein)氏が同社の事業戦略や組み込み機器向けソフトウェアに関連する業界の展望などについて説明を行なった。

米ウインドリバー・システムズの会長兼社長兼CEOのケン・クライン氏ウインドリバーの主要顧客とカテゴリー。図中の比率はグローバルの数値で、日本市場でのものは、ネットワークが20%、インダストリアル&オートモーティブ(産業機器/車載機器)が20%、航空宇宙・防衛向け機器が12~15%、デジタルコンシューマー(デジタル家電)が45%。自動車産業、デジタル家電産業が先進的な日本市場においては、両分野における取り組みを特に重要視しているという

ウインドリバーは、ネットワーク機器/デジタル家電/車載情報端末/産業用機器/航空宇宙および防衛用機器などの組み込み機器向けのソフトウェアプラットフォームや統合開発環境を提供しているが、同社では現在“DSO(Device Software Optimization:組み込み機器搭載ソフトウェアの最適化)”という戦略に基づいた、組み込み機器に搭載されるソフトウェアの開発環境/開発プロセスを最適化する基盤技術やソフトウェア、サービスの開発と普及に取り組んでいる。

組み込み機器用ソフトウェア開発におけるメーカーが抱える課題の具体例

同社がこのような戦略を指向する背景事情は、組み込み機器用ソフトウェアの開発の負担の増大にあるという。クライン氏によると、現在の組み込み機器開発において、メーカーの開発費の62%は組み込み機器用のソフトウェア開発コストに費やされ、一般的な組み込み機器用アプリケーションのコードのライン数は100万行をすでに突破しており、今後もこの増加傾向は強まり、数年で現在の倍になるのは確実だという。そのため、組み込み機器メーカーは、従来の“ハードウェア開発会社”から“ハードウェア組み込み用ソフトウェアの開発会社”へと性格が変わりつつあるほどだとしている。さらに、市場競争の激化による製品開発期間の短縮もメーカーの負担を高めているといい、一般的な組み込み機器の開発期間は約9ヵ月、携帯電話などの特定分野では3~4ヵ月に短縮されており、この傾向は今後も続くと見られているという。

クライン氏はこのほか、

  • さまざまなソフトウェア基盤ベンダーがそれぞれ独自の製品を提供していることから統合や標準化が図られていないミドルウェアやランタイム
  • 統合的な開発環境がないことが原因で企業全体に一貫して展開できない開発プロセス(プロセス間での断絶)
  • 多種多様なOSや組み込み機器用チップの存在
  • 組み込み機器に求められる必要用件の変化(増大する複雑化への対応、さまざまな技術の搭載、ネットワーク化の進展)

などの要因も組み込み機器開発の抱える問題点として挙げており、これらの課題を解決する手法として、“DSO”の必要性を訴えている。

ウインドリバーが提供する“DSO”に基づくソリューション体系

“DSO”のアプローチの基本は、End-to-Endの開発プロセス(ハードウェア立ち上げ~ファームウェア/ドライバーなどの開発~アプリケーション開発~検証およびテスト~製造)の提供にあり、一貫したプロセスを実現することにより、開発プロセスの企業全体への展開、標準化と統合の進んだ開発環境/ミドルウェア/ランタイムの提供、アプリケーションごとに最適なOSの選択、パートナーシップの拡大による容易なテクノロジーの採用を可能にするという。同社では、“DSO”のアプローチに従い、オープンソースの統合開発環境“Eclipse”をベースとした組み込み機器に特化した統合開発環境『Wind River Workbench』、統合化されたミドルウェア群、組み込み機器用OSのVxWorksおよびLinux、同社パートナー企業のハードウェア/ソフトウェアなどをパッケージ化した、特定マーケット向けのプラットフォーム(ネットワーク機器/デジタル家電/車載情報端末/産業用機器/航空宇宙および防衛用機器)を提供している。

米ガートナー社が公開している“ハイプサイクル”という技術の成長と可視化の進捗を示した図。X軸が技術の成長、Y軸が可視化の進展を表わしている。2005年のデータから“DSO”が表中に登場しており、“DSO”がITカテゴリーのひとつとしてアナリストに認知された例としている

“DSO”は業界団体などにより展開されているものではないが、クライン氏によると、現在では同社以外の企業においてもその必要性が指摘され、用語として引用される例もあるという。また、IT系のアナリストから、技術カテゴリーのひとつとして取り上げられるようになったといい、同社の取り組みは確実に組み込み機器用ソフトウェアの市場に浸透しつつあり、“現実のもの”として認知されてきているとの見方を示した。同社では今後、パートナーとのエコシステムの強化や、技術サポートサービスの強化(特に日本においては、サービスの強化に向けて組織を再編、投資の増額を行なっている)を積極的に進めていくとしている。



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