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インテル、自社内でのIT部門による業務効率化の取り組みを解説――レポートの日本語版も来月に公開

2005年08月30日 19時57分更新

文● 編集部 小西利明

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米インテル 情報セキュリティー ディレクターのマルコム・ホーキンス氏
米インテル 情報セキュリティー ディレクターのマルコム・ホーキンス氏

インテル(株)は30日、都内にて報道関係者を集めたミーティングを開催し、インテル全社内におけるIT部門による業務効率化やセキュリティー管理の取り組みについての説明を行なった。同社ではエンタープライズ分野でのIT活用の参考としてもらうために、自社でのIT技術活用の取り組みを“IT@Intel”のウェブサイトなどで公開している。同社IT部門の取り組みについては、年次報告書“Annual Performance Report(インテルIT 200x年パフォーマンスレポート)”を発行しており、今回もレポートの2004年版に即した内容となっている。2004版のパフォーマンスレポートは英語版がすでに同ウェブサイトで公開されており、日本語版も9月中には公開の予定である。同社がこうした取り組みを行なっているのは、自社のIT部門の効率化によりビジネス上の利益をもたらすだけでなく、率先して自社の製品や技術をユーザーとして利用することで、開発やマーケティングにフィードバックするという理由もあるという。

インテル 情報システム部 部長(IT@Intel担当)の海老澤正男氏
インテル 情報システム部 部長(IT@Intel担当)の海老澤正男氏

レポートの説明を行なった同社情報システム部 部長(IT@Intel担当)の海老澤正男氏は、まずワールドワイドでのインテルIT部門業務範囲などについて説明を行なった。それによると、担当すべき従業員数は正社員と契約社員を合わせて約9000人。15万9000のLANノードがあり、サーバー数は約6万6300台以上もあるという(ただしサーバーの大半はエンジニアリング部門にある)。社内のネットワークを行き交うデータ量も膨大で、ネットワークで処理される情報量は、平均で200TB/日にも及ぶという。また近年のインテルは“Centrinoモバイルテクノロジ”のように無線LAN技術の普及を強く推進しているが、実際に社内でも無線LAN搭載ノートパソコンの活用が進んでいて、全世界のインテルの拠点で無線LANが利用可能になっており、全サポートクライアントの約72%がノートパソコン(日本法人での知識労働者では99%!)になっているということだ。



インテル社内でのデータトラフィックの例 インテル社内での無線LANとノートパソコンの普及を示すデータ。もはやほとんどがノートユーザーである
インテル社内でのデータトラフィックの例インテル社内での無線LANとノートパソコンの普及を示すデータ。もはやほとんどがノートユーザーである

海老澤氏はIT部門による業務効率化については、“ビジネス上でどういう意味、価値があるのかを算出する”ことが重要とし、インテルの場合は2004年1年間で10億ドル(約1100億円)ものビジネス価値を創造し得たとした。“技術とインフラの改善”の主な内容としては、外部のキャリアに依存していたメンテナンスを内部に取り込むことで、パフォーマンスを維持しつつ通信コストを削減。またクライアントの構築をシステム当たり99ドル(約1100円)以下、30分以内に低減。ITコストも2003年と比べて15%削減を実現したという。2004年に行なわれた主要な案件としては、人材管理部門システムをItanium 2ベースに入れ替える大規模なアップデートや、中国での新工場立ち上げ支援、ワイヤレスネットワーク構築の完成などが挙げられた。またサプライチェーンと受注管理をItanium 2ベースのERPシステムに統合し、サプライチェーンの効率性を50%向上、需要予測の改善により2億5000万ドル(約275億円)のビジネス価値を生成したとの事例も紹介された。一方でIT化は業務効率の改善だけでなく、職場環境を働きやすいものに改善することも重要だと海老澤氏は指摘した。“社員に高いプレッシャーをかけすぎて、働きにくくなっては意味がない”というわけだ。

また米インテル 情報セキュリティー ディレクターのマルコム・ホーキンス(Malcolm W.Harkins)氏はインテルの情報セキュリティーへの取り組みについての説明を行なった。ホーキンス氏は最近の一般的な傾向として、セキュリティーホールが公表されてから、それを利用した攻撃コードが登場するまでの時間が非常に短くなっているほか、ツールの自動化、金銭的利益を狙ったプロの攻撃者の増加、PDAや携帯電話機などのハンドヘルドデバイスを対象とした攻撃の登場と増加などの傾向を述べた。

そのうえでインテルの2004年の取り組みとして、外部コンプライアンス監査の実施や、9万回以上のライセンス監査、世界中の20ヵ所で緊急対応(不正アクセスや災害対策)に対する社員教育をIT部門に関わる2000人以上に実施するなどを行なったという。成果としては、セキュリティー関連問題への平均回答時間の短縮や、内部ネットワークの保護を質的に向上し得たとした。また規則/法令順守の重要性については、セキュリティー侵害などにより個人情報の流出を招いた場合は、重大さによっては訴訟のリスクも発生し、莫大な損害を被る可能性があると述べ、対策の重要さを指摘した。

一方で情報システムは非常に複雑であり、危険性の特性や脆弱性、システムの挙動が(特に専門家以外のユーザーに)理解されていないという問題点も指摘。ユーザーへのトレーニングの必要性を説いた。また教育用のドキュメントなどは、使用者にとって分かりやすいものでなくてはならず、「100ページ読んでようやく分かるようなものではいけない」とも述べた。

インテル社内でのセキュリティー教育用に使われているウェブサイトの例。分かりやすいトレーニングが必要とマルコム氏は指摘する
インテル社内でのセキュリティー教育用に使われているウェブサイトの例。分かりやすいトレーニングが必要とマルコム氏は指摘する

技術面での対策としては、ソフトウェアのみによるセキュリティー対策(ウイルス対策、ファイアウォールソフト等)では難しいとして、セキュリティーの改善にはソフトとハード(スマートカードによる認証、セキュリティーチップ等)の組み合わせが必要であるとした。また最近のPentium 4やPentium Mなどに導入された“Execute Disable bit”のような一部のウイルスの動作を封じる技術は有用であるとしたほか、パソコン全体のセキュア化を目指す“LaGrande Technology”の開発により、進化したOSとハードウェアにより強固なセキュリティーも実現可能になると述べられた。

セキュリティーに関するソフト&ハードの技術。ソフトウェアでの対策は容易な部類だが、セキュリティーのレベルを向上させるには、ハードウェアも用いた方法が必要としている
セキュリティーに関するソフト&ハードの技術。ソフトウェアでの対策は容易な部類だが、セキュリティーのレベルを向上させるには、ハードウェアも用いた方法が必要としている

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