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IIJ、IIJ-Tech、日本HP、RFIDプラットフォームの提供で協業――HPのRFID実験施設を利用して、環境構築の研究などを行なう

2005年08月01日 20時31分更新

文● 編集部 小西利明

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RFIDを巡る協業について説明する、IIJ 代表取締役社長の鈴木幸一氏 日本HP 専務執行役員 営業担当の飯塚雅樹氏
RFIDを巡る協業について説明する、IIJ 代表取締役社長の鈴木幸一氏日本HP 専務執行役員 営業担当の飯塚雅樹氏

(株)インターネットイニシアチブ(IIJ)と同社の子会社である(株)アイアイジェイ テクノロジー(IIJ-Tech)、および日本ヒューレット・パッカード(株)(日本HP)の3社は1日、RFID(無線ICタグ/電子タグ)を利用した物流プラットフォームの実用化に向けて協業を行なうことを発表した。その中には、日本HPなど4社が共同で開設したRFID検証施設“HP RFID Noisyラボ・ジャパン”を利用した、RFIDプラットフォームの実用環境構築と評価/検証なども含まれる。3社は協業によって、企業間国際物流の実用に耐える“グローバル・リアルタイムSCM(サプライチェーンマネージメント)”を提供するとしている。協業が発表された3分野は以下のとおり。

EPCglobal Network準拠のRFIDプラットフォームに関する共同研究
RFIDの国際標準規格“EPCglobal Network”に準拠した、RFIDによるプラットフォームについての共同研究により、国際間物流分野へのRFID基盤構築技術を開発する。
HP RFID Noisy ラボ・ジャパンでの実用環境構築。共同研究の評価検証
日本HPなど4社が千葉県木更津市内に開設した実験施設“HP RFID Noisy ラボ・ジャパン”を使用して、実際の工場内や物流現場を模した環境下でのRFIDプラットフォームの実用環境構築と、その評価/検証を行なう。
企業間国際物流におけるRFIDプラットフォームの提案と構築
企業間の国際物流に適したRFIDプラットフォームの提案と構築を、3社のノウハウを生かして共同で行なう。

冒頭で挨拶を行なったIIJ代表取締役社長の鈴木幸一氏は、RFIDが話題になり始めた頃から、IIJでは注目していたと述べる一方で、その可能性の高さを評価しつつも「本当の実用化はこれからだろうと考える」と述べた。また日本HPを代表して挨拶を行なった同社専務執行役員 営業担当の飯塚雅樹氏は、HPが積極的にRFIDの活用に取り組みつつある点(たとえばHPの全プリンター製品にRFIDを付けて、物流管理に活用するプランなど)を述べた。その上で、RFIDにとって今後重要な課題として、「標準化、インターネットとの融合、理解をもらえる事例の構築」を3つの鍵であるとした。

RFIDの将来の市場予測。物流用途での活用が期待されている
RFIDの将来の市場予測。物流用途での活用が期待されている

今回の協業についてIIJと日本HPでは、RFIDに対するそれぞれの位置づけについて“RFIDテクノロジー”“ITテクノロジー”“ネットワークテクノロジー”の3つの軸を用いた図で説明を行なった。日本HPはITテクノロジーを中心に、ハードウェア製造業としての側面から、ネットワーク技術開発やソリューション販売といったネットワーク寄りの側面まで、幅広い分野でRFIDに関わる。一方でIIJは強みであるネットワーク技術と、国内でのRFID実証実験参加やEPCglobalへの参加などの経験を元に、ネットワークからRFID技術をカバーする。これら両社の位置づけや経験を組み合わせることで、RFIDプラットフォームの実用化を目指す。

RFIDに対するIIJと日本HPの取り組みの位置づけ

今回の協業の中で大きな位置づけを占めるのが、HP RFID Noisy ラボ・ジャパンであろう。これは米国で2005年1月に発表された検証施設の日本版で、工場内や物流センターと同様に、ベルトコンベアーやフォークリフトなど、物流拠点と同じような設備を設置して、その中でRFIDをどう活用するかのプランを立てて、実験を行なうための施設である。雑多な機械が発する電磁波によるRFIDへの干渉を検証するなどに利用されるようだ。日米以外にシンガポールにも設置が予定されていて、この3ヵ国を選んだ理由については、ビジネス面だけでなくRFIDが使う周波数帯がそれぞれ異なっているためという。今回の協業では、日本のラボとインターネット上に構築されるEPC Network(電子製品コード ネットワーク)を結び、物流をモデル化した上で、実際のプラットフォーム構築の際の問題点や相互運用性などを検証する。

将来の実用化されたRFIDプラットフォームでは、EPC Networkを基盤として、そのうえに各社の必要に合わせたプラットフォームを構築する。プラットフォーム自体は単一種ではなく、さまざまな構成があり得るが、標準化されたEPC Network自体は揺るぎがない。協業が想定しているグローバル・リアルタイムSCMでは、各物流拠点からの各RFIDの情報がインターネット経由で送られる。これによって、“情・物一致”のリアルタイムでの物流管理が可能になるとしている。

RFID Noisy ラボとEPC Networkによる実験のイメージ図。ラボ内からRFIDの情報をネットワーク上に送出する バーコードを置き換える96bitのEPC(電子製品コード)を使うEPC Networkは基盤技術で、その上に異なるプラットフォームが構築される
RFID Noisy ラボとEPC Networkによる実験のイメージ図。ラボ内からRFIDの情報をネットワーク上に送出するバーコードを置き換える96bitのEPC(電子製品コード)を使うEPC Networkは基盤技術で、その上に異なるプラットフォームが構築される

ちなみに上の図では海外との物流も図に含まれているが、今回はあくまで日本国内での検証に止まり、海外の拠点との接続は範囲外とされている。しかし物流のグローバル化を考えれば、海外拠点との接続も必要になるのは当然で、日本HPでも今後の課題としている。

IIJと日本HPでは、RFIDを物流に具体的に活用するためのプラットフォーム作りを通して、プラットフォームの提供やビジネスのサポートという“顧客への貢献”と、新しいマーケットの立ち上げや技術の公開、RFID自体の普及などの“市場への貢献”を実現するとしている。しかし一方で鈴木氏は質疑応答の中で、RFIDの普及を左右する要素として、コストと“誰が儲けられるのか”が課題であるとした。特に物流におけるRFIDの利便性は、IIJも参加したさまざまな実験によって実証されつつあるが、その利益を誰が享受できるのかが見えないことが、実証実験から実用に進まない理由であると述べた。

今後の展開としては、9月からRFIDにまつわるハード(RFIDタグ、リーダー/ライター)、ソフト(ERPやデータベースソフト、ミドルウェアなど)の評価と検証、大規模なトランザクション処理の実験を行ない、11月にはNoisyラボをオープンして、RFID実用環境の構築を行なうとしている。

HP RFID Noisy ラボ・ジャパンを用いた今後のロードマップ
HP RFID Noisy ラボ・ジャパンを用いた今後のロードマップ

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