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「それでも紙はなくならない」「件数の多い申請から電子化」現実的な運用を進める各自治体――“先進自治体事例発表会 2005”

2005年07月29日 20時32分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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東京・赤坂見附のホテルニューオータニで29日、電子申請推進コンソーシアム主催の地方自治体向けイベント“先進自治体事例発表会 2005”が開催された。これは、各種届出/申請の手続きを電子化することで、住民が24時間いつでも手続き(申し込み準備)が行なえる、申請書類の運用・管理を省力化できるなどのメリットを、千葉県浦安市、大阪府豊中市、広島県の3つの事例で紹介するセミナーイベント。会場には全国の自治体から情報システム担当者らが出席し、熱心に聞き入りながら予算や運用上の問題などについて現実的な質問も行なっていた。

醍醐恵二氏
千葉県浦安市の経営企画部情報政策課電子自治体推進室 副主査の醍醐恵二氏

最初に壇上に立った千葉県浦安市の経営企画部情報政策課電子自治体推進室 副主査の醍醐恵二氏は、いきなりすべての書類を電子化するのではなく、洗い出しから始めたという。浦安市の場合、手続き(住民から受け付ける申請)の数は1041種類、年間71万9000件が発生するという。これらを

  • 法律上の理由で電子化できないもの
  • 添付書類がある/事前協議が必要/対面審査が必要など、電子化が困難なもの
  • 押印がひつようなもの/手数料の授受があるもの/文書で交付するものなど、システム改善で電子化が可能なもの
  • 阻害要因がない/電子化が容易あるいは予定しているもの
  • 電子化済みのもの

のように電子化への阻害要因の有無、ならびに年間の受付件数(1000件未満か1000件以上か)で分類して、受付件数が多くて阻害要因が少ないものを中心に“最初に電子化を進める手続き”をあぶり出した。その結果、すぐに電子化に着手すべき手続きは33件となり、「ここまで減ると実現性が高まった」と胸を張った。

電子申請に移行する際の阻害要因による分類の例1 電子申請に移行する際の阻害要因による分類の例2
電子申請に移行する際の阻害要因による分類の例

ちなみに、同市が最初に電子化に着手したのは、平成15年度(2003年度)で、当時は228書式450様式についてPDFファイルによる入力フォームを用意してダウンロードサービスを開始した。その後、平成16年(2004年)6月に“2次元コード”を使って入力後の転記などを省力化するシステムの開発に着手。今年になって“駐輪場の申請”“粗大ゴミの申請”の2件で運用開始した。平成18年度(2006年度)には、これをより多くの申請に適用したいとしている。

千葉県浦安市が目指す“申請・届出サービス”の書式
千葉県浦安市が目指す“申請・届出サービス”の書式

醍醐氏は「浦安では“電子申請”と言う言葉は使わない」と断言する。「役所では最終的にアナログ(紙)で受け取るため、デジタルデータだけで処理がすべて済むわけではない。電子申請とは、いわば現在の市役所の隣に新しい役所=電子自治体を立てるようなもの。まったく新しい機能ではなく、隣の空き地に庁舎を建て増すわけで、職員を新しい庁舎のために増やすわけにはいかない。つまり、今まで以上に忙しくなる。アナログな自治体を今までどおり経営しつつ、電子自治体も経営するのだから、これをITという道具を使って効率的に運営していく。これがあるべき姿だと考える」と述べ、電子申請というお題目に振り回されるのではなく、役所に来てもいいし家から申請もできるというように“選択肢を増やす”ことが重要と語った。さらに高速道路のETC(自動料金収受システム)を例に上げ、電子化することで住民のほうにもメリットがあり、自然に電子化へと誘導することが必要だろう、と提案した。

入力用PDFフォームのダウンロードを開始 二次元コードを使ったシステムの構築と稼働 二次元コードシステムの拡充
第1段階、入力用PDFフォームのダウンロードを開始(2003年)第2段階、二次元コードを使ったシステムの構築と稼働(2004~2005年)第3段階、二次元コードシステムの拡充(2006年)
千葉県浦安市が行なっている段階的整備の実例

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