コンサルティングとガバナンス(監督体制)を中核とした“マネージドサービス”を提供 |
日本電気(株)は25日、東京・三田の同社本社にプレス関係者を集め、同社のアウトソーシング事業(※1)を強化する施策として、コンサルティングとガバナンス(監督体制)を中核とした“マネージドサービス”を本日より本格提供すると発表した。同社ではこの体制強化に向けて、今年4月に500名規模のコンサルティングからサービス提供までの一貫した事業体制、ならびに約50名のネットワークアウトソーシング専任営業部隊を新設し、2008年度に売上高1500億円(現状では1000億円強)を目指すという。
※1 アウトソーシング事業 一般には、社外にリソース(人材や機材、情報など)を求めて、社内リソースのコア事業への集中を図る施策を差す言葉。ここでは、情報システム担当者やCTO(最高技術責任者)/CIO(最高情報責任者)などに意思決定のための情報を提供するコンサルティング業務や、メール/スケジュール管理などの情報ネットワーク関連のハードウェア/ソフトウェア/サービスの提供および管理業務全般を差しているマーケティング推進本部長の藤岡忠昭氏 |
発表会にはマーケティング推進本部長の藤岡忠昭氏、マネージドサービス事業推進本部長の山口真人氏らが出席し、事業強化の背景や具体的な施策などについて説明した。最初に挨拶した藤岡氏は、2004年度から2008年度にかけて、アウトソーシングを含むSI(システムインテグレーション)サービス全体が2.5%の成長、ITアウトソーシングに限って言えば8.0%の成長が見込まれる。さらにセグメント別に内訳を見ると、サービスサポートやSIサービスは減少傾向にあり、2006年度にはITアウトソーシングがSIサービスを上回り、2008年度にはSIサービス全体の42.4%に上るという予測(出展:インターナショナルデーターコーポレイションジャパン(株)(IDC Japan))を示した。NEC社内でも傾向(トレンド)は同様で、特にITアウトソーシングは年間7%の高い伸びを見せているという。
ITアウトソーシング市場のトレンド | NECが社内で実践している25%のTCO削減戦略“アタック25” |
一方、顧客のほうではアウトソーシングに対する見方が変わってきており、「2000年前後に急増したアウトソーシング契約を見直す時期に差し掛かった」と語った。その理由として、“料金の内訳が不明で、コスト削減の効果が実感できない”“活用や改善の内容が見えずらい”ことを挙げた。
さらに、NEC自身が“アタック25”と名づけられた社内ITコストの25%削減施策を実施中で、社内1万3000台の端末の集中管理やサーバー統合、BC/DR(災害発生時における対策やビジネス継続性の確保)に向けて自社をユーザーとするサービスの開発/改善や効果測定、監督などを行なっているという。
顧客のIT部門の課題を、NECが一緒になってアウトソーシングで解決するという | 運用クリニックの概要 | BCコンサルティングの概要 |
こうした背景を受けて、顧客のIT部門の課題をNECと共有化し、問題解決を目指す“ソリューション”としてのアウトソーシングを提供するべく、
- コンサルティングの強化
- 戦略策定を“運用クリニック”“BC(ビジネス継続)コンサルティング”の視点から強化
- 導入に当たっても、ガバナンス(監督体制、効果の具体化)を重視して、COBIT/ITIL(※2)対応の“ガバナンスコンサルティング”を新設。
- 顧客が望むコンサルティングに併せたマネージドサービス
- “全体最適化”“プラットフォーム最適化”“ネットワーク・デスクトップ”の3つの視点から人材/リソース(ハードウェア&ソフトウェア)/アセット(資産)を管理
- サーバー/ストレージ/ネットワークの統合により運用・管理を効率化
という2本の柱で最適なサービスを提供するとしている。
※ COBIT/ITIL COBITは“Control Objectives for Information and related Technology”の略。企画/計画、資材調達と開発、サービスの提供と継続的な運用、効果測定、という4つのステージに分類して、情報技術の導入に関する監督体制の完成度を測る手法。米国情報システムコントロール協会(ISACA)が提唱している。ITILは“Information Technology Infrastructure Library”の略で、英国商務局(OGC)がまとめたITサービスの管理・運用に関する成功事例をまとめたマニュアル。マネージドサービス事業推進本部長の山口真人氏 |
山口氏は新サービスについて、運用クリニックでは「経営戦略と情報戦略を複合的に精査し、情報システムの費用構造を分析してコスト評価を行なう」と述べ、既存の単独サービスを組み合わせるだけでなく、顧客と共に課題解決を目指す姿勢を示した。BCコンサルティングについては、「米国ではすでに当たり前になっているが、日本では(災害対策の必要性についての)意識がまだ根付いていない。BIA(ビジネス影響分析)を行ない、BCM(事業継続管理)方針の策定を行なう。ここまでやっている顧客はまだ少なく、実績としては昨年1年間で10社程度だった」と述べ、23日の地震を例に挙げつつ啓蒙活動から始めていくことを明らかにした。
アウトソーシング ガバナンスコンサルティングの概要 | NECが提供するマネージドサービスの概要 | マネージドサービスの特徴 |
最後に新サービス体制について、「従来は下請けというイメージだったが、(アウトソーシングサービスを)長く続けるためには、NECの強みを生かして顧客の悩みを解決する“パートナー”になることが重要」と語る。その関係の中で“ステアリングコミッティ(経営戦略への助言)”“サービスレベル管理”“モニタリング&レポーティング”などのサービスを複合した“リレーションシップマネジメント”を顧客に提供していく、とまとめた。