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サン・マイクロシステムズと東京大学、新しい産学連携モデルの確立を目指す協定の締結を発表

2005年06月20日 21時59分更新

文● 編集部 内田泰仁

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サン・マイクロシステムズ(株)と国立大学法人東京大学は20日、IT分野での基礎研究技術を相互に提供し、新しい技術/価値の創造や産学連携モデルの確立を目指す組織的な共同研究に向けた協定書を締結したと発表した。東京大学による外資系IT企業の米国本社との連携を視野に入れた協定の締結は今回は初めて。

今回の協定に基づくサン・マイクロシステムズと東京大学の共同研究のモデル共同研究のスケジュール

今回の協定は、世界レベルでのビジネスコミュニティーを構築するとともに、テクノロジーやソリューションの研究開発を共同で戦略的に行なっていくというもの。東京大学が取り組む産学連携プログラム“Proprius21(プロプリウス21)”のスキームに則って、今後1年間をかけて、共同研究のテーマの探索/計画の作成/レビューを実施し、その後に実際の共同研究を行なっていくという。

この間の両者の橋渡し役となる共同研究員として、東京大学の若手の研究人材“ポスドク”(ポストドクター。博士課程を修了し、常勤雇用される前の若手研究者を指す)をサン・マイクロシステムズの費用負担により配置(当初は1名を予定。状況によっては増員も考えられるという)。将来的には、サンの研究開発機関“Sun Labs”と東京大学の間での研究員の相互人材交流なども行なっていき、相互の研究文化を実際に体感し人的交流を図ることで、IT業界でのグローバルな産学連携を目指すとしている。

研究検討対象分野

現時点での研究検討対象分野は、次世代デジタル・キャンパスと位置付けている“ナレッジマーケットプレイス”に関する技術なを中心に、eラーニング環境やコンピューターサイエンス環境の研究開発などが挙げられている。両者はこれらの研究開発を通じて、近い将来に“市場が求める技術”として、セキュリティー、コンパイラー、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、モバイル・テクノロジーなどの分野での共同研究プロジェクトを推進していくとしている。

従来の産学共同研究と“Proprius21”を取り入れた共同研究の違いを示すフロー

“Proprius21”は、従来の産学連携による共同研究が陥りがちであったジレンマ(スコープの合意がないままの研究開始、研究テーマの矮小化/成果のコミットがない/実用化の出口がない/期待した成果ではないなどの成果に対する疑問)を解消するために作成されたプログラムで、共同研究を実施する前に共同研究計画を立案したのちに、通常の共同研究プロセスへと移行していく。このプロセスを取ることにより、有効な産学連携の成果(産業界のニーズの反映、大きな社会貢献、研究視点の拡大)を得られると同時に、創出や成果の期待できない計画の早期排除が可能となるという。運営にあたっては、企業と同大学間での対等な討議の保障や、メンバーの入れ替え、守秘義務や情報管理の徹底といった内容も盛り込まれている。

協定書に署名し、写真撮影に応じる両者の代表

この日東京大学内で開催された共同記者会見には、東京大学の理事・副学長で産学連携本部長の石川正俊氏、サン・マイクロシステムズの代表取締役社長のダン・ミラー(Dan Miller)氏らが出席し、今回の協定締結の意義や今後の展開についての説明を行なった。

東京大学の理事・副学長で産学連携本部長の石川正俊氏

サン・マイクロシステムズとの産学連携に向けた協定締結を「情報の分野における、新たな大きな一歩」と評する石川氏は、IT分野の強化を大学が取り組むべき重点分野と位置付け、同大学では「研究開発や教育の強化と情報化に積極的に取り組んでいる」としている。また、“Proprius21”のスキームを採用したことに関しては、「計画性を重視し、目に見える成果を求める」ためとしており、同大学としては、今回の産学連携により、優れた成果の世界への発信を強く求めていくと強調した。

サン・マイクロシステムズの代表取締役社長のダン・ミラー氏

石川氏に続いて登壇したミラー氏は、「技術や研究をシェアする、コミュニティーとともにそれを育てていく、ということはサンの基本」であるとともに(その具体的な例としてはJavaを挙げている)、「学生、教授、サンの研究者が一緒になって研究を行なっていくという大きな構想のもの」だとして、積極的に東京大学との共同研究を推進していくとした。当初共同研究が検討されている分野としては先に紹介したものが挙げられているが、ミラー氏個人としては「石川氏のチームが取り組んでいるロボティクス分野などに強い興味」があるとして、共同研究の枠組みの拡大にも意欲を示している。また、今回の産学連携に見られるような“グローバルなコラボレーション”と“技術や研究のシェア”は21世紀のIT企業にとって非常に重要なテーマだと指摘している。

なお、今回の協定は、共同研究に開始に向けた事前の検討を行なうことを目的としたものであり、現時点では具体的な共同研究の件数などは定まっていないという。サン・マイクロシステムズのエデュケーション・リサーチ営業本部 本部長で執行役員の中西直之氏によると、今後行なっていく共同研究は規模としては大きなものになるといい、サン・マイクロシステムズの投資規模としては年間数億円を見込んでいるとしている。

協定の概要を説明したサン・マイクロシステムズのエデュケーション・リサーチ営業本部 本部長で執行役員の中西直之氏(写真左)と東京大学の産学連携研究推進部長の太田与洋氏(写真右)

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