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経済産業省、平成17年度の電子タグ実証実験プロジェクトの公募説明会を開催――産業界からの強い期待を示して会場は超満員!

2005年05月18日 22時37分更新

文● 編集部 小西利明

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電子タグ政策の基本的な考え方について述べる経済産業省商務情報政策局情報経済課長の加藤洋一氏 説明会の開かれた港区の機械振興会館内のホールは、来場者が多すぎて用意された椅子では足りず、立ち見はおろかホールの外で音声だけを聞く人も出るほど盛況であった
電子タグ政策の基本的な考え方について述べる経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の加藤洋一氏説明会の開かれた港区の機械振興会館内のホールは、来場者が多すぎて用意された椅子では足りず、立ち見はおろかホールの外で音声だけを聞く人も出るほど盛況であった

経済産業省は18日、都内にて“平成17年度電子タグ実証実験プロジェクトの公募説明会”を開催。同省の電子タグ普及に向けた政策プランと、平成15~16年度(2003~2004年度)に行なわれた実証実験についての説明を行なうと共に、今年度の実証実験事業の公募についての説明を行なった。応募締切は6月24日。

電子タグ(無線タグ、RFIDタグとも呼ばれる)とは、超小型の非接触ICチップを使い、それらを材料や商品などにタグとして付属させることで、その物に関するデータを随時取得可能にする仕組みである。現在はラベルに印刷されたバーコードなどがこれらの用途に用いられているが、電子タグはより多くの情報を記録できる(ネットワークと組み合わせれば、ICチップの記憶容量以上のデータを物に結びつけることも可能)うえ、電波による読み取り/書き込みが可能なので、物流管理や商品在庫管理などの迅速化が可能になる。ユビキタスネットワーク社会の根幹をなす技術として、各国の政府や産業界が技術開発や規格の策定に精力的に取り組んでいるホットな分野である。

加藤氏のスライドで示された電子タグの利用モデルイメージ。物に関する情報がタグとしてついて回り、必要なところで手軽に取り出せる
加藤氏のスライドで示された電子タグの利用モデルイメージ。物に関する情報がタグとしてついて回り、必要なところで手軽に取り出せる

公募説明に先立ち、同省の電子タグ政策についての説明を行なった経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の加藤洋一氏は、電子タグの市場規模や一般的なユーセージモデル、欧米の取り組みについて述べたうえで、同省での電子タグ普及政策の重要課題として“低価格化”と“国際標準化”の2つを挙げた。電子タグ自体の低価格化については、昨年8月より日立製作所(株)に委託を行ない、電子機器製造企業や印刷会社などの協力も得て、タグ1つの価格を5円程度(月産1億個を想定)まで引き下げる“響(ひびき)プロジェクト”を、2年計画で実施しているという。また国際標準化について、電子タグとリーダー/ライターとの間の通信プロトコル(ISO18000-6 type-C)や、電子タグに記録する商品コードなどの標準化活動に対し、日本からも提案が行なわれ、標準化作業が進んでいるとした。そのうえで加藤氏は今年度の“電子タグ活用基盤推進事業”として総額31億円が用意され、そのうちほぼ半額の15億円が、今回公募を行なう電子タグ実証実験事業に対して投入されるとした。

経済産業省による電子タグ普及政策の1つ“響プロジェクト”は、小型化や印刷技術の利用により、電子タグのコストを劇的に下げることを狙う 電子タグ普及政策のもう1つは、国際標準化の推進。積極的に標準化活動に加わることにより、将来のビジネスに先手を打つ
経済産業省による電子タグ普及政策の1つ“響プロジェクト”は、小型化や印刷技術の利用により、電子タグのコストを劇的に下げることを狙う電子タグ普及政策のもう1つは、国際標準化の推進。積極的に標準化活動に加わることにより、将来のビジネスに先手を打つ
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐の伊原智人氏
経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐の伊原智人氏

続いて同省商務情報政策局 情報経済課 課長補佐の伊原智人氏により、平成15~16年度に行なわれた、電子タグ実証実験事業についての説明と、平成17年度の公募についての説明が行なわれた。同省と産業界が共同して行なったこれまでの実験事業では、実際の物流の中に電子タグを導入し、電波帯域による通信状態の違いや、電子タグの認識や通信に要する時間、周辺環境による影響、さらには実際に電子タグを導入することによる業務効率化(特に時間短縮)の効果など、基礎的な分野から実用上の効果まで、多岐に渡る実験が行なわれた。

平成16年度の事案では、建設・産業機械の製造工場での応用や、書籍流通と書店での販売、家電流通、医薬品の流通と管理など、7種の業界での事業実験が行なわれている。百貨店・アパレル業界と行なった電子タグを使った流通と在庫管理の実験では、(株)三越の日本橋本店や(株)阪急百貨店の有楽町店などで実験が行なわれただけでなく、作業時間の短縮によるコスト削減や、在庫管理の効率化による販売機会の拡大により売上も上がるといった効果が認められ、今年4月からは実用化へと進んだという。



平成15年度の実験のレポート。家電や出版物の流通や販売店での実験が行なわれた
建設機械の製造部門での実験では、製造工程管理だけでなく、金属機械の多い環境下での電波の受信状態なども調べられた 医薬品業界での実験。小さな薬品容器に電子タグが付けられるかや、液体薬品による電波の減衰の影響なども調査されている
建設機械の製造部門での実験では、製造工程管理だけでなく、金属機械の多い環境下での電波の受信状態なども調べられた医薬品業界での実験。小さな薬品容器に電子タグが付けられるかや、液体薬品による電波の減衰の影響なども調査されている
平成16年度の実験のレポート

平成17年度の公募では、以下の4つのテーマに基づいた提案を募集している。提案の審査に際しては、国際標準化に貢献することや、実験成果を元に実用化への取り組みへと発展する可能性のあるもの、響プロジェクトで開発中の電子タグ試作品の評価を行なうこと、日本の経済活性化に即効性を持って貢献することなど、技術開発からビジネスへの実用化までを視野に入れた案件であるかを重視するという。

産業構造改革・行革推進型プロジェクト
物流や販売管理、リサイクルまでの含めたトレーサビリティーの実現など。
新産業想像型プロジェクト
電子タグの有する潜在能力を引き出す技術開発により、新しい産業想像を目指す。
産業間連携型プロジェクト
商品流通に関わる一連の企業の壁を超えるプロジェクト。
国際連携型プロジェクト
日中韓・ASEAN諸国を中心に、国際標準に準拠した電子タグの共通基盤を作り、物流や貿易の効率化やトレーサビリティーを実現する。

申請書類は、経済産業省のウェブサイトの公募のページからダウンロードできる予定(Word形式とPDF形式)。申請書類の送付は郵送で、第1期公募の締切は6月24日。締切後は有識者による評価委員会による審査が、7月いっぱいをめどに行なわれる予定である。年内に第2期の公募も検討されているが、第1期の案件で予算金額に達した場合は、第2期公募は行なわれない場合があるという。

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