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【CeBIT 2005 Vol.1】欧州最大の情報通信産業の展示会“CeBIT 2005”が開幕――基調講演には独SAPのカガーマンCEOらが登場

2005年03月11日 17時54分更新

文● 安藤怜

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ヨーロッパでは最大規模となる情報通信産業の展示会“CeBIT 2005”が、ドイツ北部のニーダーザクセン州ハノーバーのハノーバーメッセで、現地時間の10日から16日に開催される。主催は、ドイツ産業見本市(Deutsche Messe AG)。10日の開幕に先立つ9日には、プレス・カンファレンスや基調講演が行なわれた。

会場のハノーバーメッセ入り口。ヨーロッパは、寒波に襲われていることもあり、9日は朝から雪が散らついていた記者会見が集中して行なわれるカンファレンス・センター

今年のCeBITの出展社数は6270社で、昨年の6109社を上回る。来年ドイツで開催されるサッカーのワールドカップや、イタリア・トリノでの冬季オリンピックをあてこんで、家電メーカー各社が大画面テレビやデジタルビデオレコーダーなどに力を入れて展示を行なう傾向にある。また、第3世代携帯電話の新製品や、携帯電話を利用して音楽やビデオなどを楽しむサービスも主な展示のひとつとなるようだ。

基調講演――IT技術への熱狂を取り戻すもの

基調講演は、9日午後6時より、ハノーバー・コングレス・センターにて行なわれた。4人の登壇者のうち、3人目の独SAP社の最高経営責任者、へニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏が、今年のメイン・スピーカーだ。また、4人目のスピーカーとして、例年どおり、ゲアハルト・シュレーダー(Gerhard Schroeder)独首相も登壇した。

メイン・スピーカーである独SAPのへニング・カガーマンCEOゲアハルト・シュレーダー独首相。「CeBITが始まった1986年、多くの人がこの展示会は失敗すると予想したが、欧州最大のイベントに成長した。いまや新しい時代を迎えつつある」とCeBITの成功を称えた

カガーマン氏は冒頭、20年前に初めて自身がCeBITに訪れたときのことについて、「当時のカスタマーにとっては、役に立たないグラフィックスソフトの展示だったかもしれないが、その時の私は熱狂に包まれていた」と振り返り、「この週末、同じような熱狂を、来場者から感じることができるでしょう」と述べ、今年のCeBITに対する期待を語った。

今年の見どころや現在のデジタル機器市場については、「最新の携帯電話や、どこでも音楽を聞いたり、ビデオを見たり、ゲームをすることのできる携帯ツールにへの来場者の関心は高い。現在の消費者は“おもしろい”と感じられるものにはお金を使う」とする一方で、「必要以上にCPUパワーやHD容量のあるパソコンを買うことには慎重になっている」とも述べ、スペック面の単純な進化から、価値の向上を重視する傾向が強まっていることを指摘した。また、「デジタル機器に組み込まれてソフトウェアが普及するケースがいっそう進み、人々の見えないところでソフトウェアが動いていることが多くなった」と語り、デジタル機器の進化にはソフトウェアの進化が欠かせないとした。

また、IT業界全体の状況は、「コンピューター産業は、合併や値下げ競争によって、厳しくなりつつあると言われているが、私はそうは思わない。世界のIT投資は、2002年、2003年とマイナス成長となったが、2004年には30兆ドル(約3200兆円)へと回復し、2008年までは毎年6%の成長を続けると見られる」との予測を紹介し、この成長の背景にある理由を3点挙げている。

「情報通信技術には多大な関心が払われなくなっている」
2003年8月の米ニューヨーク市での停電のように、情報通信技術上のミスによって大きな損害が発生した例を挙げ、現代の生活が情報通信技術から大きな恩恵を受けているにもかかわらず、普段はそれに気付かない、というほどにまで生活に浸透しており、成長は目に見えなくても続いている
「科学はIT技術なしには進歩しない」
原子物理学から宇宙工学、遺伝子工学など、ありとあらゆる科学がITなしので発展は考えられなくなっている
「ビジネスとITはいまや分離不可能である」
現在は、IT技術を使わずにグローバル企業として成功することは不可能な時代になった

カガーマン氏は特に、3点目のビジネスとITの強い結びつきについて、「コンピューター産業の歴史において初めて、我々(IT産業)が企業の競争力を高めるために貢献できるようになった」と述べ、これらの理由から「IT技術にふたたび熱狂をもたらすものとなるだろう」と語った。

さらに、今後のITの展望について、「IT技術は、組み込みソフトウェアの普及により、これからますます見えにくくなるだろう。しかしその一方で、ますます不可欠なものにもなっていく。また、ITによって、国境を越えて、今まで知らなかった人々やアイデアや商品を知ることができ、貧しい国と豊かな国のギャップを埋めることにも貢献するだろう」と述べた。

カガーマン氏は最後に、IT業界においてアメリカ企業のウエイトが高いことに触れて、「ヨーロッパは、ITとビジネスの融合と、サービスに重点を置いたシステムの構築の2つに焦点を絞るべきである」と提言。そして、ITとビジネスの融合には教育制度の改革が必要であること、サービスに重点を置いたシステムの構築には、組み込みソフトウェアが主要な役割を占めると指摘し、講演を締めくくった。

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