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富士通、今後のネットワーク事業展開に関する記者説明会を開催――先端技術の積極的な投入に注力

2005年03月03日 22時32分更新

文● 編集部 内田泰仁

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富士通のネットワーク事業の展開目標

富士通(株)は4日、バックボーンやモバイル、アクセスシステムなどの分野を中心とした、同社のネットワーク事業に関する記者説明会を開催した。説明を行なった同社取締役専務の伊東千秋氏は、2007年度の売上高目標を4600億円、営業利益率目標を7%とし、先端技術とインテグレーションの総合力で成長と利益の両立を目指すと述べた。



取締役専務の伊東千秋氏今回取り上げられた事業分野

ネットワーク関連事業の構成と規模
今回の記者説明会で取り上げられた同社のネットワーク事業は、“バックボーンネットワーク”“アクセスシステム”“モバイルシステム”“企業ネットワークおよびサービス”の4分野。モバイルについては、携帯電話端末事業は含まず、主に基地局やインフラ関連の事業を指す。ビジネス規模としては、日本国内での展開だけでなく、北米やヨーロッパなども含むグローバルな事業となっている。

同社のネットワーク事業は、日本国内では全方位的な展開を行なっているが、北米や英国を中心としたヨーロッパでは、同社が得意としているセグメントに特化した事業展開を行なっており、北米の光伝送システムでは28%、英国のADSLバックボーンでは50%のシェアを持ち、いずれも両セグメントのトップとなっているという。



日本、北米、ヨーロッパにおける、富士通が注力する分野の市場動向

各地域市場の特徴的な動向としては、次の3市場が紹介された。

国内の通信関連プロダクト市場
2002年を底に微増傾向に転換、光伝送化やIP化に投資がシフト
北米の光伝送システム市場
2000年の100億ドル(約1兆1000億円)をピークに、2001年には45億ドル(約5000億円)、2002年には12億ドル(約1300億円)と急激に縮小、2003年には10億ドル強(約1100億円強)と底値を迎え、同社にとっても「相当なネガティブインパクト」(伊東氏)だったという。
この時期の落ち込みから、市場の予測では、“光伝送システム市場は今後10年から20年程度、ビジネスがないのでは”とまで言われていたという。しかし、米国の通信キャリアー各社の競争と積極的な展開の拡大にともなって需要が回復傾向になり、2004年以降は平均7%の成長に転じると見込まれている
英国ブロードバンド加入者数
ADSL/CATV/光によるブロードバンド接続ユーザーが急激に増加中で、2007年までの平均成長率は33%の見込み。なお、英国のブロードバンド市場は、ヨーロッパではドイツに次いで第2位

富士通のネットワーク事業の業績推移と目標値
同社の各分野におけるビジネスの見通し。伝送システムは復調傾向、IPシステム関連は他者との協業により新しい展開が進行中

これに対して同社の業績推移は、市場の動向と同様に2002年の大幅な業績の落ち込みを底に、事業規模の縮小に対応したスリム化(国内開発/製造部門の合理化、海外人員の削減、北米のPBX事業の撤退)と、事業の選択(光伝送システム、IPシステム、第3世代携帯電話ネットワーク事業にリソースを集中、アクセスシステム事業を関係会社化して専業化、仏アルカテル社、米シスコシステムズ社との協業/共同開発)といった「七転八倒の苦しみ」も伴ったという業績回復に向けた施策を実施し、現在は着実に損益改善が進んだという。これにより、2004年度には営業損益の黒字転換と営業利益率2%の達成が見込まれるとしている。

次に、各事業分野ごとの今後の取り組みとしては、それぞれ以下のような展開を示している。

バックボーンネットワーク
光システム分野:「米国の先端企業よりさらに1歩進んだ技術を投入する」という先端技術開発/投入に注力。北米の通信キャリアー/CATV事業者の積極拡大路線に向けた技術の提供、ブロードバンドかによる継続的なトラフィック増加が進む日本におけるバックボーン増強へのシステム提供
IPシステム分野:英ブリティッシュ・テレコム社の電話網の全IP化計画への参入(正式な参入ベンダーは現在未決定。富士通では受注に向けて好感触を得ているという)など各種通信のIP化事業への取り組み強化、シスコシステムズとの協業によるハイエンドルーターの投入
アクセスシステム
“ブロードバンド先進国”の日本市場において、通信キャリアー各社の光アクセス網への投資集中に対応し、専業関連会社の富士通アクセス(株)によりビジネス展開を強化
次世代無線通信技術“WiMAX”によるビジネスの開拓
モバイルシステム
日本国内:(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ向けインフラビジネスのポジション維持と拡大、イー・アクセス(株)の携帯電話事業における商用システムへの参画に向けた活動の展開(富士通は実証実験に参画。商用システムについてはイー・アクセスはまだベンダーを決定していない)、次世代規格に向けた技術開発
海外:第3世代携帯電話のヨーロッパでの本格化と中国での始動に向け、アルカテルとの協業で2007年度にW-CDMA方式のインフラ市場でシェア15%を目指す
企業ネットワークおよびサービス
競争力強化のためのビジネスインフラの継続改善、TCO削減、スピードや信頼性の向上などのニーズに答え、システムの複雑化に対応するため、ハードウェア製品を取り扱う部門とネットワークサービスを取り扱う部門を一体化し、ワンストップオファリングが可能な600人体制の統一部門を創設。システムの簡素化を図るハードウェアの投入

“品質”“ものづくり”“環境”への取り組み

また、これらのビジネス展開と同様に“品質”“ものづくり”“環境”への対応にも力を注いでいくと述べ、“高信頼・高品質な製品”へのこだわり、携帯電話基地局や伝送システムなどの工場の生産システムの高効率化、環境負担を低減する技術革新と有害物質全廃を目指す活動の展開を行なっていくとした。

光伝送システムにおける同社の技術革新の歴史。北米のバックボーンネットワーク市場で生き残っていくには、常に北米の競合企業よりも先を行く先端技術を持つ必要があるとしている
秋山氏のプレゼンテーションでは、たびたび“先進技術への注力”というフレーズが語られたが、コモディティー化・ボリューム化による展開については「(富士通の事業には)まったく見合わない」「低価格路線の分野での勝負は中国などの新興企業に敵わない」との認識を示し、最先端の技術を発揮できる分野へのビジネス展開を集中していくとの方針を示している。また、幅広い事業分野に展開していることに関して「百貨店(のような幅広い事業展開)はだめだという声もあるが、専門店(のような特定の狭い分野のみに注力した事業展開)も限界に来ている」と述べ、システムの多様化・複雑化が進行する現在は、幅広い事業を展開していることで可能となるワンストップな提案・提供ができることが重要だとした。また、この展開を継続的に強化していくには、キーとなる技術の自社内での開発・革新と、自社が持たない技術を持った企業との積極的な協力体制構築が重要だとしている。このほか、「日本国内市場での1%勝った負けたのシェア争いもまた重要ではあるが、グローバル市場でどのような規模なのかという点を重視していきたい」と述べ、同社の事業展開は、日本国内または海外各地域ごとの“単独”のビジネスとして運営していくのではなく、グローバルで連動・連携した展開を行なっていくとしている。



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