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日本SGI、松井龍哉氏と商用マネキン型ロボット“Palette”を開発――モデルやバレリーナの動きで衣服を美しく見せる

2005年02月28日 22時23分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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日本SGI(株)は28日、フラワー・ロボティクス(株)代表でロボットデザイナーの松井龍哉(まつい たつや)氏とマネキン型ロボット“Palette(パレット:コードネーム)”を共同開発し、年内に事業化することを発表した。

ロボットデザイナーの松井龍哉氏とPalette Palette(全身型)
ロボットデザイナーの松井龍哉氏とPalettePalette(全身型)

日本SGIと松井氏は、2002年に日本SGIの“CI(Corporate Identity)”キャラクターとしてロボットの“Posy(ポージー)”を発表。Posyはこれまでに、ルイ・ヴィトン ジャパン(株)やゲラン(株)など高級ファッションブランドのパーティーの“ゲスト”や、全日本空輸(株)などのCMキャラクターとして採用されている。現在も継続中のPosyのプロジェクトはビジネスを主眼としたものではないが、松井氏は「ファッション業界から注目を浴びた。(中略)ファッション業界のプロジェクトに参加して、ロボットでも人の心に感動を与えられることが分かってきた」と成果を明かした。マネキン型ロボットのPaletteの企画は、「Posyが持っているエッセンスを凝縮して1つのものを作れないか”という視点から生まれた」のだという。

Paletteは、“衣服を最も美しく魅せるマネキンロボット”として開発されたもの。Paletteという名称は、「パレットに絵の具を載せるようにSGIのソリューションをインテグレートさせる」というイメージから名づけられている。現在のところ、衣服展示用の“全身型(女性)”と、ジュエリー展示用の“上半身型(アッパートルソ型、女性)”の2モデルが開発されており、記者発表会では全身型のデモンストレーションが行なわれた。

Palette Palette
記者発表会で、Paletteはバレリーナの動きを再現した。なお松井氏によれば「“駆動部を有するマネキン型ロボット”のことで国際特許を出願している」とのこと

全身型は台座の前面3個所に人感センサーが内蔵されており、Paletteの最も近くにいる人に向けて、肩/肘/首などの間接が稼動して衣服を動的に見せる。Paletteの動きは、日本SGIのモーションキャプチャー技術によってバレリーナやスーパーモデルの動きを再現したもので、ポージングのデータはSDメモリーカードに収録され、それを差し替えることで変更できる。操作スイッチは、電源のON/OFFスイッチ、人感センサーのON/OFFスイッチ、マネキンが能動的に動かない“着替え用”スイッチの3つのみ。安全性には配慮し、着替えの際にスタッフの指や衣類などがPaletteの関節に巻き込まれないよう、関節部が動いても隙間ができない構造を採用しているという。

Paletteのモーション作成ソフト
Paletteのモーション作成ソフト。開発は日本SGI
Paletteの台座の全面。左右と中央に人感センサーを内蔵 操作スイッチは3つ
Paletteの台座の全面。左右と中央に人感センサーを内蔵操作スイッチは、電源のON/OFFスイッチ、人感センサーのON/OFFスイッチ、マネキンが能動的に動かない“着替え用”スイッチの3つのみ

将来的には、男性タイプ/子供タイプ/脚が付いたタイプなど用途にあわせた外見/駆動部の開発を行なうだけでなく、監視カメラをPaletteに内蔵して通行客の属性を収集するなど、マーケティングやセキュリティー分野への応用が計画されている。そのほか、ネットワーク経由でのマネキンの制御なども検討されており、“ロボットを都市のインフラへ”をコンセプトに、“既存のマネキンがPaletteに置き換わることによって世界中のショッピングストリートが情報網と繋がること”を1つのビジョンとして掲げているという。なお、市場に出ている既存のマネキンの台数について日本SGIは、「入れ替えのサイクルが2年と早く正確なことはわからない」としながら、「日本においては数千万台と言われている」(ブロードバンド・ユビキタスソリューション推進本部 新規事業推進オペレーション統括 大塚 寛氏)と紹介した。

監視カメラと連動した、マーケティングやセキュリティ分野への応用が計画されている 監視カメラを使って文字を認識するデモ
監視カメラと連動した、マーケティングやセキュリティー分野への応用が計画されている。写真の向かって右は、監視カメラを使って文字を認識するデモ
日本SGI代表取締役の和泉法夫氏
日本SGI代表取締役の和泉法夫氏

Paletteの価格や販売方法(買取/リース)は現在未定で、「年内の事業化を目指して、生産台数を含めたものを固める。価格は、段階的になるかもしれないが、限りなく既存のマネキンの価格に近づける」(代表取締役社長 和泉法夫氏)とした。当初のターゲットの1つはPosyを採用したような高級ブランドだが、大塚氏によればすでにPaletteの買取を決めた海外の美術館があるという。

なおPaletteは、東京・恵比寿で3月1日まで開催中のプライベートショー“日本SGI ソリューション・キュービック・フォーラム 2005”で、一般公開されている。



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