サン・マイクロシステムズ(株)は23日、都内ホテルでプレスセミナーを開催し、1月25日(米国時間)に米サン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)社が発表した同社OS“Solaris”のオープンソース・ライセンスおよびオープンソース化プロジェクト“OpenSolaris”についての解説を行なった。
Solarisのオープンソース・ライセンスの概要と特徴 |
米サン・マイクロシステムズの発表によると、同社は2004年11月に発表した『Solaris 10』のソースコードを、オープンソース推進団体“OSI(Open Source Initiative)”の認定したライセンス方式“Common Development and Distribution License(CDDL)”(※1)に基づいて提供するという。ビルドが可能なソースコードは、2005年第2四半期に提供が開始される予定で、オープン化に伴って約1600件の特許も公開される。また、この発表と同時に、ソースコードの事前公開情報として、Solaris 10の新機能のひとつであるパフォーマンス解析ツール“Solaris DTrace”のコードがCDDLに従って公開されている。
※1 今年1月14日にOSI理事会の承認を受けたライセンス方式。“MPL(Mozilla Public License)をベースに、MPLをより簡潔、明快に改め、告知要件もシンプルに変更し、特許訴訟に対する保護の強化などが盛り込まれているという。 CDDLに従って公開されたコードの再利用を容易にすることが目的のひとつだといい、類似したコミュニティーやライセンス目的を持つ案件であれば改めてライセンスを起草する必要はない。サン・マイクロシステムズでは、固有コードと“OpenSolaris”コードの混在や、“OpenSolaris”の一部分からの成果物によるサブセットを利用した組み込み製品、エンドユーザーによるカスタマイズ、教育機関でのOSの研究開発なども認めている。取締役フィールドマーケティング統括本部統括本部長の杉本博史氏 | Solarisのオープンソース化で創出されるオープンソース・エコシステムの概念図 |
サン・マイクロシステムズが積極的に協力、貢献している開発者コミュニティーの一覧。ちなみに、OpenOfficeは5000万ダウンロードを突破したとのこと |
プロダクトマーケティング本部本部長の纐纈昌嗣氏 |
“OpenSolaris”プロジェクトの概要を説明したプロダクトマーケティング本部本部長の纐纈昌嗣(こうけつまさつぐ)氏によると、今回のSolaris 10のオープンソース化の“決断”を下したのは、米サン・マイクロシステムズの会長兼最高経営責任者(CEO)のスコット・マクニーリ(Scott McNealy)氏だという。オープンソース化にコミュニティーと連携した開発(サン・マイクロシステムズ社内の開発陣と社外の開発者の共同作業、もしくは、社内のみ、社外のみの開発者による作業、など)により生み出されたコードや技術は、社外の開発者も参加可能な透明なプロセスとオープンなレビューを経て、“OpenSolaris”のコードへと統合されていくとしている。
“OpenSolaris”の開始に伴う今後のSolarisの開発プロセスの図。写真左は立ち上げ初期段階のもの、右は最終的な開発プロセス。ゆくゆくは、“OpenSolaris”の1ディストリビューションとしてサン版“Solaris”をリリースする形態になっていくという |
“OpenSolaris”の開始に伴う今後のSolarisの開発プロセスについては、当面はサン・マイクロシステムズ社内の開発プロセスに則って開発されたSolarisのソースを“OpenSolaris”で公開するという流れが取られる(Solaris 10のオープンソース化はこの形態によるもの)。将来的には、“OpenSolaris”でのオープンな開発プロセスで開発されたソースを基に、サン・マイクロシステムズによる“ディストリビューション”として“製品版”Solarisをリリースする形態を目指していくという。“OpenSolaris”に基づく製品版Solarisでは、テストやサポート、ISV/IHV認定などのプログラムは、サン・マイクロシステムズが今後も行ない、従来製品と同等以上の品質、互換性、セキュリティーを提供するとしている。
一方、“OpenSolaris”コミュニティーでは、機能の強化やドライバー開発、バグ修正などに取り組み、ISV/IHV認定こそ行なわないものの、コミュニティーとしてのサポート、技術情報や開発上の議論の場などの情報源となるウェブサイト(http://www.opensolaris.org)の運営を行なう。現在ウェブサイトでは、前述の“Solaris DTrace”のソース公開が行なわれているが、2005年第2四半期を予定しているSolaris 10のソースコード全体の公開の際には、ソースコード、各種ツールおよびドキュメント、メーリングリスト、ユーザーグループ、ブログやWiki、FAQ、論文、サンプル、バイナリーの“OpenSolaris”ディストリビューション、コミュニティー独自のものを含む各種コンテンツなどを提供予定だとしている。
コミュニティーのガバナンスプランとしては、サン・マイクロシステムズ社内外のメンバーで構成される諮問委員会を設立し、コミュニティーの発展促進に努めるという。諮問委員会は年間2~4回の会合を持ち、初期段階では、サン・マイクロシステムズ社内メンバー2名、パイロットコミュニティーから2名、オープンソース分野での著名人1名の5名体制を検討しているとのことだ。また、最終的には自己統治型のコミュニティーに発展させていきたいという。
“OpenSolaris”プロジェクトで公開されるソースコードの内容は、2005年第2四半期時点では、Solaris 10の新機能を含むOSおよびネットワーク機能のカーネル/コマンド/ライブラリー(法律上開示できないものは除く(※2))を予定しており、その後、他社の開発したドライバーなどの法律上開示できないものを除いたソースコードの大部分を公開するという。なお現在は、知的所有権の関係上公開できない部分と公開できる部分とを切り分ける作業が行なわれているという。
※2 Solarisに付属するATOKなどの他社製のコンポーネントなど。ただし、バイナリーとしては配布を予定しており、プログラムとして利用することは可能だというセミナーの最後に行なわれた質疑応答では、米IBM社が行なった特許公開とサン・マイクロシステムズのソース公開に伴う特許公開の違いについての質問が出たが、これについて纐纈氏は、「Solarisは同社のコア技術」であるという点を強調し、IBMが公開した特許は、必ずしもIBMのコア技術にあたるものではなく、2社の特許公開にはその意味に大きな違いがあるとした。また、Solarisのオープン化による収益の影響については、ハードウェアやミドルウェア、その他のソフトウェアから得る収益がメインであることから、「減少は多少あるものの、直接的なビジネスへの影響はミニマム」だと述べた。
Solaris 10の特徴 | 市場における現在のSolaris 10の動き | |
参考として紹介されたSolaris 10の概要 |