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【ISSCC 2005 Vol.1】ソニー、IBM、東芝ら、Cellプロセッサーを発表――PowerPC 970+8基の128bit SIMD RISC CPUのマルチコアCPU

2005年02月08日 22時06分更新

文● 西川善司(トライゼット)

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8基あるSPEは、128bit SIMDタイプのRISCプロセッサーコアだ。各SPEは128bit SIMDベクトル演算(たとえば32bit長、4要素ベクトル演算)を行なえるので、イメージ的にはGPU(グラフィックスチップ)の、プログラマブルシェーダーユニットに近い。

SPEは128bit SIMDのベクトルプロセッサー。1つずつが256KBのローカルメモリーを備える
SPEは128bit SIMDのベクトルプロセッサー。1つずつが256KBのローカルメモリーを備える

GPUのプログラマブルシェーダーユニットは、プロセッサー上のプログラマブルSIMD演算器という程度だが、SPEはそれ単体で高度な処理が可能なRISCプロセッサーであり、プログラマビリティーの面では、現行GPU(GeForce 6800やRADEON X850など)のプログラマブルシェーダーを遙かに凌駕する。レジスター数は128bit長が128本。条件分岐や反復命令を含んだ高度な構造化プログラミングが可能な命令セットの充実に加えて、“EIB(Element Interconnect Bus)”と呼ばれる内部バスで各SPEが相互接続されている点が、GPUのプログラマブルシェーダーとまったく異なっている。

PPEと8基のSPEを相互に結ぶ内部バス“EIB”
PPEと8基のSPEを相互に結ぶ内部バス“EIB”

たとえば現行のGPUでは、あるパイプラインに内包されるプログラマブルシェーダーは、他パイプライン側のプログラマブルシェーダーと相互に情報をやりとりするような仕組みはなかった。しかしCellのSPEでは、8基あるSPEとPPEが相互にEIBで接続されている。SPEの“S”のSynergistic(相互依存の)は、こうしたアーキテクチャーを表している。またSPEはDMAコントローラーを介してメインメモリーへのアクセス能力も持っており、単なるストリームプロセッサーの演算器の枠をこえたポテンシャルを有している。Cellプロセッサーの性能を最大限に生かすには、1PPE+8SPEの内部構造をいかにして効果的に利用するかにかかってくる。“どういう目的でどう活用できるか”“どういう設計のプログラムを組めばいいのか”を開発者に示していくのは、なかなか難しそうではある。

I/O部分もなかなか贅沢で、内蔵メモリーインターフェースは、米ラムバス社が開発した“XDR DRAM”のデュアルチャネル接続に対応する。帯域は25.6GB/秒で、最新パソコンのメモリインターフェース帯域の約3倍にもなる。そのほかに76.8GB/秒の帯域を持つ外部インターフェースバスも備えており、もう1基のCellプロセッサーを接続したり、グラフィックスプロセッサーやその他の周辺チップを接続するために活用する。

第1世代のCellプロセッサーは1PPE+8SPEという構成であるが、発表ではSPEの個数を用途に合わせてスケーラブルに増減させたバージョンも提供できるとしており、SPEの個数を減らした廉価バージョン登場の可能性も示唆した。さらに高い性能が要求される場合には、1PPE+8SPEというCellコアを増設していくというソリューションもある。すでに公開されているCellプロセッサーに関する特許文書中には、1PPE+8SPE構成を4基使ったアーキテクチャーの図が示されている。現在の製造技術では複数の1PPE+8SPEを1チップに実装するのは難しいが、将来的にはそうした上位バージョンが出てくる可能性は高い。

PlayStation3に関しての言及はなし

なお今回はPlayStation3に関しての言及はなく、あくまでのCellプロセッサーの発表に留まった。またワークステーション用CPUや汎用メディアプロセッサーとしての可能性を示唆しつつも、具体的な実動機の公開やデモンストレーションは行なわれなかった。今回はあくまでアーキテクチャーの公開に重点を置いたプレゼンテーションであった。Cellに関する発表は今後も予定されているが、“Cellプロセッサーはどういった機器に搭載されるのか”“Cellプロセッサーはどうプログラミングすれば最大性能が生かされるのか”といった部分が焦点となるだろう。

ワークステーションやゲーム機のCPUとして考えた場合、PPE部分の活用だけでも十分高いパフォーマンスが得られる。しかしCellプロセッサーならではのソフトウェアパラダイムを広く認知させるためには、8SPEの効果的な活用事例のデモンストレーションが絶対に必要だ。今回の発表ではCellプロセッサーのプログラミングモデルに関する具体的な話は行なわれなかった。プログラミング環境などに関連した情報は、今後徐々に開示していくとのことだ。

Cellプロセッサーはまったく新しい汎用CPUではあるが、その実体的なアプリケーションの代表格として期待されるのはPlayStation3だ。2005年3月頃に開催予定とされる流通・報道関係者向け説明会“プレイステーションミーティング”では、この8SPE部分のアグレッシブな活用デモを期待したいところだ。

Cellプロセッサーは動的な省電力制御の仕組みを持っている。なおチップの冷却はヒートシンク+ファンによる一般的な空冷方式
Cellプロセッサーは動的な省電力制御の仕組みを持っている。なおチップの冷却はヒートシンク+ファンによる一般的な空冷方式

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