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ヤマハ、ルーター事業10周年を記念した講演会を開催――「ヤマハは日本で独自に市場を作ってきた」と村井 純氏

2005年01月21日 18時38分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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ヤマハ(株)は21日、東京・大手町の大手町サンケイプラザに販売関係者/ユーザー/報道関係者ら400名余りを集め、同社のルーター事業10周年を記念して“通信ネットワーク これまでの10年、これからの10年”と題した講演会を開催した。

講演に先立って挨拶した常務取締役の前嶋邦啓氏
講演に先立って挨拶した常務取締役の前嶋邦啓氏

講演会には慶応大学環境情報学部教授でWIDEプロジェクト代表を務める村井 純氏、ヤマハのAV・IT事業本部 通信機器開発部部長の高山 明氏らが出席し、村井氏は同社が10年に渡って手がけてきたルーター事業のインターネット普及への貢献について、高山氏はヤマハがルーター事業を手がけるようになったきっかけや今後の製品作りの方向性について説明した。

講演に先立って常務取締役の前嶋邦啓(まえじまくにひろ)氏が壇上に立ち、「ヤマハは主に3つの事業で成り立っている。その中核として、音・音楽に関する製品や半導体、メディア関連があり、ルーター事業もここに属する重要な中核。ヤマハとしてはこだわりを持って経営を行っている。一桁違う技術、ひと味違う技術でユーザーと価値を共有していくことを基本理念に、新たな製品価値を生み出すべく事業を進めてきた。これからもルーター事業において、機能やコストパフォーマンスに優れた信頼性の高いネットワークソリューションを、スピーディーに提供することで、新たな感動と豊かな文化形成のためのベース(基盤)となる情報ネットワーク社会の構築に貢献していく」と挨拶した。

慶応大学環境情報学部教授でWIDEプロジェクト代表を務める村井 純氏
慶応大学環境情報学部教授でWIDEプロジェクト代表を務める村井 純氏

続いて、村井氏は「インターネットを手がけてきた知り合いに、ヤマハの話をすると皆が大喜びする。楽器など、コンピューターとは関係のなかった機器がネットワークにつながることこそ、自分たちが望んできた世界だ、と。しかし、ヤマハがルーターを作っていることを知っているか? と聞くと一様に知らないと答える。けれども、ヤマハは日本に独自の市場を作ってきたパイオニア的存在だと思い、深く感謝している」と最初に謝辞を述べた。

村井氏の示したヤマハへの謝辞
村井氏の示したヤマハへの謝辞

村井氏の述べた、ヤマハの行ってきたインターネット普及への貢献をまとめると次のようになる。

  • SOHOマーケットの発展に寄与
  • ISDN時代のリーダー
  • IPv6のパイオニアプロダクトメーカー

特に10年前、そのころは50万円以上の製品が一般的だったルーターを20万円を切る価格で提供し、以来TA内蔵のISDNルーターの発売、マニュアルやファームウェア/ソフトウェアのオンライン提供など、他社に先駆けた製品作りを続けてきたとヤマハの活動を称えた。その一方で、教育/金融/行政などの分野では日本のIT化が立ち遅れている現状を示し、今後の10年では新たなる価値や成果を上げるべく(具体的にはIPv6対応製品やVoIPの普及など)、引き続き努力を望むと期待を述べた。

AV・IT事業本部 通信機器開発部部長の高山 明氏
AV・IT事業本部 通信機器開発部部長の高山 明氏

最後にAV・IT事業本部 通信機器開発部部長の高山氏が壇上に立ち、ヤマハがルーター事業に取り組んだ理由を振り返りながら、「電子キーボード『DX7』の開発にあたって、高度なDSPを自社開発していた。この技術を通信分野で生かせないかと考えて、18年前に作ったのがファクス用モデムLSIだった。国内では売れなかったものの、米国で“PCファクス”として採用され、月産20万個も売れることもあった。その後、IDSN用LSIを開発し、1993年には通信カラオケに利用され、1995年にはTA機能を内蔵したルーターを開発して中小企業などに安く導入できる製品として好評だった。このとき、“rt100i-users”というメーリングリストを開設して積極的にユーザーサポートを行なったことも高く評価された」とインターネット黎明期~普及前期の同社の活動を説明した。

ヤマハがルーターを手がけるようになった理由とその時代背景 ネットワーク/インターネットの普及とヤマハのルーターの進化の系譜
ヤマハがルーターを手がけるようになった理由とその時代背景ネットワーク/インターネットの普及とヤマハのルーターの進化の系譜

また、1998年に発売され、その後も同社のルーター製品のブランドとなっている“NetVolante(ネットボランチ)”の命名の理由については、「ご存じの通り、サッカーJ-1のクラブチーム“ジュビロ磐田”の前身はヤマハ発動機だが、このサッカーの要となるポジションが“ボランチ(ミッドフィルダー)”。同様にネットワークの要として重要な役割を果たすべく名前をつけた」と説明。さらに、今後のルーター事業の展望については、「(業務用の大規模ネットワーク向け製品ではなく、よりエンドユーザーに近い位置づけの)“カスタマーエッジルーター”を作り続ける。さらに商品だけでなくソリューションを提案する。先進機能の追及と互換性の堅持を続ける」と3つのスローガンを掲げ、同社の企業理念にも重なる“音・音楽とネットワークの未来”を構築するような技術研究や製品作を行なうことを強調し、締めくくった。

ヤマハが取り組んでいるネットワーク関連技術 ヤマハの現在のルーターラインナップ ヤマハの評価・試験体制の一端
ヤマハが取り組んでいるネットワーク関連技術ヤマハの現在のルーターラインナップヤマハの評価・試験体制の一端

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