このページの本文へ

ナウオンメディア、『シリコンバレーの百年』の発売記念試写会を開催――シリコンバレーを沸かした偉人たちが生き生きと語る

2004年12月27日 18時27分更新

文● 千葉英寿

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
渋谷のKANDA BARで開催された記念試写会の模様
渋谷のKANDA BARで開催された記念試写会。スクリーンに映し出されているのは、今は亡きヒューレットパッカード社の創設者であるビル・ヒューレットとデイブ・パッカード両氏のインタビュー

今月22日、SNSユーザーの間で話題になっている、東京・渋谷のソーシャルネットワーキングバー“KANDA BAR(カンダバー)”において、今月24日に発売されたドキュメンタリーDVD-Videoタイトル『シリコンバレーの百年』の発売記念試写会が行なわれた。このイベントの様子と内容の一部を紹介する。

『シリコンバレーの百年』はCBSニュースキャスターのウォルター・クロンカイト(Walter Cronkite)氏が司会を務め、ITテクノロジーの集積地である米国カリフォルニア州シリコンバレーの生い立ちからその百年の歴史をひもとくという内容だ。発売元は、『e-dreams』や『Revolution OS』などのビジネス・ドキュメントのDVDタイトルをリリースしているナウオンメディア(株)。



『シリコンバレーの百年』試写会場での展示即売の模様
『シリコンバレーの百年』試写会場での展示即売の模様

当日、会場には報道関係者ならびにbloger(読者参加型日記=Blog(ブログ)の開設者)が招待された。KANDA BAR(※1)はこじんまりした店内ながらも、ブロードバンドや無線LANなどのインターネット接続環境はもちろん、ビデオプロジェクターなどの映像関連機材も豊富に揃っており、さまざまなイベントに利用されているという。そうした場所において、KANDA BARのマスターを務め、ビデオジャーナリストでもある神田敏晶氏のトークを交えながらの試写が行なわれた。

※1 KANDA BAR ビデオジャーナリストの神田敏晶さんが運営する完全紹介制のバー。すでにバーに来場したことがある人に紹介されるか、orkut(オーカット)やmixi(ミクシー)、gree(グリー)といったSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通じてKANDA BARを知った場合にしか入場できない仕組みになっているユニークなバー。

グレイトフル・デットのジェリー・ガルシア氏
グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシア氏

『シリコンバレーの百年』は次のような内容になっている(以下、本文中では敬称略)。

冒頭、米アタリ(Atari)社の創設者、ノーラン・ブッシュネル(Noran Bushnell)は1970年代のシリコンバレーが1960年代カウンターカルチャーに影響を受け、最先端の考え方やライフスタイル、そして最先端の技術がひとつに混じり合っていたと語る。伝説的なロックバンド、グレイトフル・デッド(Grateful Dead)のジェリー・ガルシア(Jerry Garcia)も「誰もが時代の胎動を感じ、それぞれの分野で時代を動かそうとした」と語る。このドキュメタリーはそうした時代を動かした人々のパワー、数々の技術革新をルネサンスになぞらえ、わずか100年で駆け抜けたシリコンバレーの歴史を紹介していく。



1970年代のコンピューター
1970年代のコンピューター

それでは1970年代以前のシリコンバレーはどのようにして形成されたのだろうか?

始まりは1891年のスタンフォード大学の開校だった。当時の学長ジョーダン(David Starr Jordan)が同学のサイリル・エルウェル(Cyril Frank Elwell)の起こした無線通信技術の研究・開発会社“マッキー無線”に投資した。これが初のベンチャー企業への投資といわれており、その後の大学と企業の連携がシリコンバレーを形作っていった。1914年、“電子工学の父”、デ・フォレスト(Lee de Forest)の発明した真空管(3極管)により米AT&T社がバージニア⇔パリ間の無線送信に成功。1927年にはファーンズワース(Philo T.Farnsworth)がテレビの基となった“全電子式映像伝送装置”を実演した。こうして1930年代にはパロアルトに電子産業が育つとともに、優秀な研究者の輩出と基礎研究の成果を提供するスタンフォード大学と地元企業との強い結びつきというインフラができた。

IBMのレイノルズ・ジョンソン氏
IBMのレイノルズ・ジョンソン氏

さらに“シリコンバレーの父”と呼ばれる元スタンフォード大学工学部長のフレデリック・ターマン(Frederick Terman)は、大学とハイテク企業の連携の利点を説き、シリコンバレー工業団地の設立に尽力した。ターマンは1939年、同大学の院生で音声周波数発振器を発明したビル・ヒューレット(William Redington Hewlett)とデイブ・パッカード(Dave Packard)に投資した。米ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)社の誕生だ。電子機器に特化した同社は戦争によって時流にのり、成功を納めた。1952年には米IBM(International Business Machines)社がシリコンバレー工業団地に進出、レイノルド・ジョンソン(Reynold B. Johnson)が初のディスクドライブであり、現在のHDDの原型となる“RAMAC(Random Access Method of Accounting and Control)”を発明した。

インテルのゴードン・ムーア氏
インテルのゴードン・ムーア氏

1957年、ノーベル賞受賞者ビル・ショックレー(William Shockley)の元にいたゴードン・ムーア(Gordon E. Moore)をはじめとする8人は半導体企業、米フェアチャイルド・セミコンダクター(Fairchild Semiconductor)社を設立。同社は企業としての成功は見なかったが多くの技術者を輩出、ここから41社もの半導体企業が起きた。これらの新興企業を表した言葉として、“シリコンバレー”という言葉が初めて使われた。こうして、1966年にはシリコンバレーは半導体企業の一大集積地になっていた。

これらの新興企業は互いに競いつつも、情報を交換することで、課題を次々にクリアし、技術革新を推し進めた。そうした企業のひとつとして、1968年、ボブ・ノイス(Bob Noyce)とゴードン・ムーアが米インテル(Intel)社を設立。シリコンゲートによるメモリーの大量生産に成功し、一躍半導体企業のトップに立った。1972年にはテッド・ホフ(Marcian Ted Hoff)、フェデリコ・ファジン(Federico Faggin)らがマイクロプロセッサーを発明した。しかし、当時マイクロプロセッサーが現在のパソコンにつながるとは思われていなかった。

アップルからは創設者のひとりスティーブ・ジョブス氏をはじめ、当時の主要スタッフのインタビューも収録されている
アップルからは創設者のひとりスティーブ・ジョブス氏をはじめ、当時の主要スタッフのインタビューも収録されている

1970年代には起業家精神の象徴的存在である米アップルコンピュータ(Apple Computer)社が登場する。アップルが発明した“パソコン=パーソナルコンピューター”は、権威や中央管理の象徴とされるメインフレームのインテルやIBMと異なり、カウンターカルチャー(反体制運動)のひとつとして生み出されたものだった。

アタリのノーラン・ブッシュネル氏
アタリのノーラン・ブッシュネル氏

1970年代以降についても、読者の皆さんが耳にしたことのあるようなエピソードや初めて知る事実など、興味深い話題や証言が登場する。

全米のゲームセンターを一変させたアタリのビデオゲーム、アップル誕生のきっかけになった“箱”の存在、ウォズ(Stephen Wozniak)とジョブズ(Steven Paul Jobs)の2人のスティーブのほかにアップルを成功に導いた立役者の存在とその証言、1980年代のサン(Sun Microsystems)、シリコン・グラフィックス(Silicon Graphics)、アドビ システムズ(Adobe Systems)といった企業の創業ラッシュに彼らがどうやって起業したのか、そしてインターネットのきっかけとなった人物の証言などが次々に語られる。

最後に多くの起業家たちの言葉が綴られているが、中でも「行動あるのみ、そして失敗を恐れず、突き進むのです」というスティーブ・ジョブスの言葉がとても印象的だった。


すでに書籍などで言及されているエピソードも含まれているが、やはり当事者たちが生の声で語る様は圧巻であり、コンピューターやベンチャーに多少とも興味のある方にとっては大変価値のある映像作品と言えるだろう。すでに起業されている人にとっては仕事の上でのヒントが見つかるかもしれないし、ビジネスの席での話題作りに一役買ってくれる事は多いに保証する。

シリコンバレーの百年(原題:Silicon Valley - A 100 Year Renaissance)

『シリコンバレーの百年』『シリコンバレーの百年』
価格
3990円(税込)
音声
ドルビーステレオ2.0ch、日本語字幕
収録時間
約90分
発売・販売
ナウオンメディア

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン