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KDDI、今年最後の社長定例会見を開催――「電気通信業界は大きな変革期を迎えている」

2004年12月15日 23時40分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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KDDI(株)は15日、代表取締役社長の小野寺 正氏による12月定例会見を行なった。会見では、“災害用伝言板サービス”の提供開始、イベント・展示施設の開設、年末年始の発信規制などについて発表があった。また記者団からは、昨日開催された総務省の“携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会”に関連した質問などが挙がった。

KDDI代表取締役社長の小野寺 正氏
KDDI代表取締役社長の小野寺 正氏

「電気通信業界は、大きな変革期を迎えている」

小野寺氏は、2004年の電気通信業界の動きを振り返り、「IP電話や携帯電話への需要のシフトなど、従来型の固定電話事業の減収傾向が強まり、かつ、事業者間の激しい顧客獲得競争が繰り広げられた1年」と総括した。また、各キャリアの第三世代携帯電話の普及と同電話向けコンテンツサービスの導入、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(株)の基本料金の見直し、ソフトバンク(株)による日本テレコム(株)やケーブル・アンド・ワイヤレスIDC(株)の買収、(株)パワードコムとフュージョン・コミュニケーションズ(株)の電話事業の統合を挙げ、「規制緩和や競争の激化が進展しており、電気通信業界は、大きな変革期を迎えている」とした。

一方KDDIは、「KDDI本体と比較してどちらかというと遅れていた子会社群の再編成を行ない、KDDIグループ全体の強化を図ってきた1年」とし、ディーディーアイポケット(株)の事業譲渡、ツーカーグループの完全子会社化の決定、固定通信事業における法人営業子会社(株)KDDIネットワーク&ソリューションズの発足などを例に挙げた。

小野寺氏は2005年の展望について、「来年は魅力的なコンテンツの拡張を図りつつ、auの第3世代携帯電話サービス“CDMA 1X WIN”の浸透に引き続き努力していくほか、IP電話サービス“KDDIメタルプラス”による固定通信の顧客獲得を積極的に進めるとともに、光プラスなどブロードバンド事業を着実に展開することにより、中長期的な発展を確実なものにしたい」と語った。

なお、NTTドコモは第3世代移動通信方式“W-CDMA”の通信技術“HSDPA”の2005年導入を予定しているが、KDDIとしては、「次の技術的検討をやっているが、来年導入する予定の技術というのは、今のところ考えていない。もう少し時間をいただかないと、CDMA2000 1x EV-DO”の次は見えてこない」とした。新技術の採用ということでは、“FeliCa”のICチップを内蔵する携帯電話を2005年秋に発売する予定であることは、先に発表されている。



ドコモに続き災害用伝言板サービスを導入

続いて小野寺氏は、“EZweb”で展開する災害用伝言板サービスの導入と、イベント・展示専門施設“KDDI DESIGNING STUDIO”の開設を発表した。

災害用伝言板サービスは、災害時における家族や知人等との安否確認を目的とした、auブランドの携帯電話ユーザーのための伝言登録/閲覧サービス。携帯電話は、大規模災害が発生すると、災害復旧にあたる行政などに加えて一般の人が安否確認に使用するため、一時的に繋がりにくい状態になる。

災害用伝言板サービス提供イメージ
災害用伝言板サービス提供イメージ

KDDIは、震度6弱以上の地震など大規模な災害が発生した場合に、災害用伝言板サービス専用のEZwebのサイトを一時的に開設。災害発生地域に住むauの携帯電話の利用者は、専用サイトにアクセスし、“無事です”“避難所にいます”などあらかじめ用意されたチェックボックスか、全角100文字までのテキスト入力フォームを使って、自分の安否情報を登録できる。登録件数は1電話番号につき最大10件で、保存期間は最大72時間。

登録された安否情報は、auの携帯電話やインターネットに接続されたパソコンを通じて、全国から閲覧可能。また、あらかじめメールアドレスを指定しておけば(最大3件)、伝言板にコメントを登録したことを自動的にメールで知らせる機能を備える。災害用伝言板サービスのサービス料金は無料で、パケット通信料の負担のみでできる。

災害用伝言板サービスは1月下旬に、ツーカーグループが同時期に始める災害用伝言版サービスと一体となって運用される。また、今年1月から提供されているNTTドコモの“iモード災害用伝言板サービス”と相互リンクされる予定。なお今回名前が挙がらなかったボーダフォン(株)は、広報部によれば、現在同様のサービスの準備を進めている段階という(開始時期は未定)。

一方、KDDI DESIGNING STUDIOは、“コミュニケーション”“マーケティング”“コラボレーション”の3つをテーマに、製品/サービス/技術の紹介、ユーザーとの対話や交流を目的とした、イベント・展示施設。JR原宿駅より徒歩8分という立地(東京都渋谷区神宮前4-32-19)に現在建設中で、5階建ての建物は、内部が見えるガラス素材の壁と1階から5階まで続くらせん状のスロープが特徴となっている。ショールームのほか、セミナーやワークショップが行なえるスペースや飲食店なども用意されるという。来年3月にオープンする予定。

KDDI DESIGNING STUDIOのロゴ KDDI DESIGNING STUDIOの外観イメージ
KDDI DESIGNING STUDIOのロゴKDDI DESIGNING STUDIOの外観イメージ
「お客様とともに未来をデザインする施設にしたい」(小野寺氏)


「我々の周波数帯域を取り上げて新規参入したいというのはエゴ」

小野寺社長
「後から、いつでも人の周波数を盗って新規参入できることになれば、そんな不安定な環境では、誰も事業運営できない」

質疑応答では、14日に開催された総務省の携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会(第5回会合)と関連し、800MHz帯への参入を目指すソフトバンクグループの主張に対する、小野寺氏が考えるところの最大の問題点は何かという質問が挙がった。これに対して小野寺氏は、「これまで新しいサービス/新しい方式が導入されるときに、新しい周波数を移動体用に割り当てて、新規参入が認められてきた。つまり国は、“新しい産業を興していこう、それによって価格も引き下げ、新しい事業者も入れ、これによって国民に新しいサービスを提供し、場合によっては方式間の競争も促そう”という考え方できている」とし、「なんで2000年の時点で、“IMT-2000”の周波数が割り当てられるときに(ソフトバンクは)手を挙げなかったのか」と指摘。「今までのきちっとしたルール、予定表があるのにも関わらず、それ以外のことをやりたいとおっしゃっている。ルールが違うというのであれば、議論するのは大いにかまわないけれど、ルールを作るのがあの場(検討会)かというとそれは違う」とした。

「我々のCDMA 1Xだって、簡単にうまくいったわけでない。新しい技術(を使ってビジネスを行なうの)はどうしても時間がかかるが、日本の産業全体を盛り上げることになるし、競争の促進にもなる。しかし、既存の技術で、他人の持っている周波数に入りたいというのはいかがなものか。(中略) 後から、いつでも人の周波数を盗って新規参入できることになれば、そんな不安定な環境では、誰も事業運営できないことになる。(中略) 新しい周波数で新しいことをやるというのであれば、ぜひ、やっていただきたい。それは、日本の産業のためにもなる。しかしまったく既存の方式で、我々が使っているところ(800MHz帯)を取り上げて新規参入したいというのはエゴだ」と、ソフトバンクグループを厳しく糾弾した。





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