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日本IBM、“オートノミック・コンピューティング”と“グリッド・コンピューティング”の最新動向に関するプレスセミナーを開催

2004年12月06日 23時09分更新

文● 編集部 内田泰仁

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日本アイ・ビー・エム(株)は6日、迅速かつ柔軟なオンデマンド・ビジネスIT基盤のための技術紹介をテーマとしたセミナー“IBM オンデマンド・テクノロジー・フォーラム 2004”を開催、これに併せて行なわれたプレス向けセミナーにおいて、同社が提唱する“オートノミック・コンピューティング”および“グリッド・コンピューティング”に関する最新動向についての説明を行なった。

米IBMのオートノミック・コンピューティング担当バイスプレジデント、アラン・ガネック氏“オートノミック・コンピューティング”の3年間の成果

“オートノミック・コンピューティング(Autonomic Computing)”とは、IBMが提唱する自己管理技術を備えたハードウェア/ソフトウェアおよびこれらを含むソリューションで構築されるコンピューティング環境。複雑化が進むコンピューティング環境の理解および管理/継続的な調整/不測の事態への対応/故障の未然防止と回復を自律的に行なうことを目的とする。

説明を行なった米IBM社のオートノミック・コンピューティング担当バイスプレジデントのアラン・ガネック(Alan Ganek)氏は、「(オートノミック・コンピューティングは)すでに実現されているもの」であるとし、2001年にそのビジョンを発表してから今日までにさまざまな研究・開発が進行し、IBMおよびパートナー企業から提供されている各種製品/サービスが利用できるようになっており、加えて、自己管理システムの実現に向けたオープンスタンダードの実現にも取り組んでいると述べた。具体的な成果としては、アーキテクチャーのブループリントの第2版を発表したほか、200以上の特許を取得、標準化団体に17種類の新仕様を提出、40社以上の企業とパートナーシップを結び、50以上の関連製品が提供されているという。

米Federated Department Store社で用いられている“オートノミック・コンピューティング”を適用した基幹システム

同氏のプレゼンテーションでは、“オートノミック・コンピューティング”を活用した具体例として、米Federated Department Store社(米国の大手小売業者)の基幹システム、米シスコシステムズ社との協業によるネットワーク・エンドポイントのセキュリティー強化ソリューションの事例を紹介。前者は、DB2とWebSphereの運用に“オートノミック・コンピューティング”を適用、オンライン販売のショッピングカート/広告システム/季節商戦向けのインベントリーなどの管理について、優先順位と負荷に応じてシステムリソースの割り振りを自律的かつ動的に変更することで、システムをより効率的に運用することを実践しているという。後者は、エンドポイント端末(モバイルパソコンなど社外でも利用される端末)に“オートノミック・コンピューティング”に対応したセキュリティー管理クライアントを導入、社内ネットワーク接続時にセキュリティーポリシーに適合しない場合(ウイルスなどに感染しているなど)、自動的にポリシーを修正するシステムとなっている。

また、同日には新規7社を含む計10社の日本企業が同社とパートナーシップを締結し、“オートノミック・コンピューティング”を適用した製品の開発に取り組んでいることを発表しており、ガネック氏のプレゼンテーションの中でも紹介された。この日発表された国内パートナー企業10社は以下のとおり。

  • エヌエスアンドアイ・システム・サービス(株)(新規)
  • キヤノンシステムソリューションズ(株)(新規)
  • (株)CSIソリューションズ(新規)
  • 住商情報システム(株)(新規)
  • ニイウス(株)(新規)
  • 日本情報通信(株)(新規)
  • 日本ビジネスコンピューター(株)(新規)
  • 新日鉄ソリューションズ(株)
  • 東芝ソリューション(株)
  • 日立ソフトウェアエンジニアリング(株)

米IBMのグリッド&バーチャリゼーション担当バイスプレジデント、アルバート・バンシャフト氏IBMの“グリッド・コンピューティング”の機能

一方の“グリッド・コンピューティング(Grid Computing)”は、プロセッサーパワーやネットワーク、ストレージなどのコンピューティング資源を仮想的にひとつのシステムとする技術。各環境の余剰資源を集約して利用することで、システムの稼働率を上げ、かつ大型のコンピューターのような高性能を実現する。ガネック氏に続いて登壇した米IBMのグリッド&バーチャリゼーション担当バイスプレジデントのアルバート・バンシャフト(Albert Bunshaft)氏は、この“グリッド・コンピューティング”の動向を説明。かつては学術研究を中心として利用されてきた“グリッド・コンピューティング”だが、現在は同社の広範囲にわたる製品/サービスに取り込まれ、研究開発/エンジニアリングおよびデザイン/ビジネス解析/エンタープライズ環境の最適化/行政での活用といった分野での適用を推進しているという。

IBMが技術面で協力する“World Community Grid”のエージェントソフトウェアを実行中の画面。グリッドによるたんぱく質解析が第1弾の取り組み

また、バンシャフト氏は同日付けでIBMより発表された“グリッド・コンピューティング”を用いた世界規模の人道的貢献活動を目的としたプロジェクト、“World Community Grid”を紹介。同プロジェクトは、新種または既存の疾病、自然災害/飢餓への対策、環境などの研究を支援する目的で運営される団体で、米国立衛生研究所、世界保健機構、国連開発計画などのメンバーが諮問委員を務める。同社は、“World Community Grid”のインフラ構築のためのハードウェア/ソフトウェア/技術サービス/ホスティング/メンテナンス/サポートサービスを提供するという。なお、同プロジェクトの第1弾の活動は“ヒトのたんぱく質解析”で、解析結果を疾病治療や原因解明の開発につなげていくという。

“World Community Grid”のグリッドへ参加するには、同プロジェクトのウェブサイト(http://www.worldcommunitygrid.org/)で配布されているエージェントソフトウェアをダウンロードし、導入することが必要。エージェントソフトウェアを起動しておくと、参加者のパソコンがアイドル状態のときに、同プロジェクトのサーバーにデータを要求し、解析のための計算を実施、さらに計算結果を自動的に送信する、という一連の作業を自動的に繰り返し実行する。



日本IBMのエマージング・ビジネス担当兼グリッド・ビジネス事業部長で理事の高野孝之氏

なお、冒頭の挨拶に立った日本IBMのエマージング・ビジネス担当兼グリッド・ビジネス事業部長で理事の高野孝之氏は、山之内製薬(株)において日本IBMが構築したグリッド・コンピューティング・システムが10月14日に稼動開始され、創薬研究のために利用されることを発表した。山之内製薬と日本IBMは、2003年6月から導入に向けた検討と検証作業を実施、10月14日の本稼動に至ったという。山之内製薬では、“インシリコ・スクリーニング”と呼ばれる創薬リード化合物(薬剤の候補となる化合物。市販されているものは世界中に約1000万個近くになるという)探索技術にこのグリッド・コンピューティング・システムを活用するとしている。

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