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“QRIO”がインドへ、ベトナムへ――日本ユネスコ協会連盟とソニー、QRIOをサイエンスメッセンジャーに任命

2004年08月30日 16時17分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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女優の栗原小巻さんとQRIOの2ショット
日本ユネスコ協会連盟のスペシャルアドバイザーも務める女優の栗原小巻さんとQRIOの2ショット。まるで我が子を見つめるような暖かい視線をQRIOに注いでいた

世界の子供たちが科学への好奇心や探究心、さらに友情を深めるため、QRIOがいま立ち上がる! (社)日本ユネスコ協会連盟(日ユ協連)とソニー(株)は30日、東京・大手町の大手町サンケイプラザで記者説明会を開催し、ソニーが開発した二足歩行ロボット“QRIO(キュリオ)”をサイエンスメッセンジャーとして、日本国内および海外の子供たちに科学の素晴らしさや楽しさを伝え興味を深める科学技術体験教室“QRIOサイエンスプログラム”を、今年9月から実施すると発表した。



発表会の参加者
発表会の参加者。栗原さんの左に日ユ協連の副会長の鈴木幹夫氏、右にはユネスコの事務局長の松浦晃一郎氏、さらにソニーの出井伸之氏とそうそうたる顔ぶれが並ぶ

発表会には日ユ協連の副会長の鈴木幹夫氏、ソニーの代表執行会長兼グループCEOの出井伸之氏、国際連合教育科学文化機関“ユネスコ(UNESCO)”の事務局長の松浦晃一郎氏、日ユ協連のスペシャルアドバイザーを務める女優の栗原小巻さんらが出席し、同プログラム実施の背景や狙いについて説明するとともに、QRIO本人を迎えて任命式(任命証書の授与とタスキの贈呈)が行なわれた。

最初の会場となる仙台国際センター 海外で行なわれる予定地のひとつ、インドのニューデリー こちらも予定地のひとつ、インド南部のカルナータカ州ゴカック
最初の会場となる仙台国際センター。仙台は1947年に民間ユネスコ運動が初めて行なわれた地でもある海外で行なわれる予定地のひとつ、インドのニューデリー同じくインドのカルナータカ州ゴカック。南部にある都市で、子供たちに文字や言葉を教える民間主導の活動“世界寺子屋運動”の支援地のひとつでもある

同プログラムの対象は小中高校生で、現在予定されている活動(開催地)は以下のとおり。なお、来年度の活動については、今年度内の活動結果を踏まえて開催地や回数などを決定したいとしている。

9月23日
宮城県仙台市(仙台国際センター)
10月下旬
インド・ニューデリーおよびカルナータカ州ゴカック(ユネスコ共同学校およびユネスコ世界寺子屋)
12月中旬
群馬県(場所は未定)
1月下旬
ベトナム・ハノイおよびライチャウ省トゥアチュア(ユネスコ共同学校およびユネスコ世界寺子屋)

この活動は、ユネスコの理念である“教育・科学・文化の国際交流を通じて、ともに生きる平和な社会を創る”のもとで、日本国内および海外の教育支援活動を促進し、QRIOへの興味・関心を通じて子供たちが科学への親しみを持つように啓蒙する移動教室。小学生向けにはビデオ教材を通じて、中高生向けにはソニーのQRIO開発担当者がQRIOの解説を通じて、人とロボットの共存をテーマに科学の面白さを伝え、科学技術が生活の中でどのように役立っているかを体験しながら学べるものになっている。

中高生向けの体験学習の内容 小学生向けの体験学習の内容
体験教室の内容。中高生向けには、例えばQRIOが物を認識する仕組みを通じてCCDの働きや具体的に使われている製品(デジタルカメラ)などに触れて、機能を確かめるような内容を予定している小学生向けには、デジタルカメラで撮影した映像などを組み合わせて、“QRIOがやってきた町”の紹介を行なうビデオを自分たちで作成し、上映会を開催。その制作過程とビデオをウェブサイトを通じて配信しつつ、テレビやビデオデッキ、カメラなどの機材が不足している寺子屋には、これらを寄贈するという

「暑さや寒さにも負けず、がんばります」と健気なQRIO

最初に挨拶に立った、日ユ協連の鈴木幹夫氏は、「今回ソニーと協力して一緒にプログラムを実施できることを大変喜んでいる。ユネスコは、教育・科学・文化・コミュニケーションの4つを世界の子供たちに広めていくべく力を注いでいる。人間の好奇心がこれまでにどれだけの文明・文化の発展を導いてきたか考え、これからも人のために役に立つ科学、平和のための科学が進んでいくことを願っている」と述べた。

日ユ協連の鈴木幹夫氏 ソニーの会長兼グループCEOの出井氏 アジア初の事務局長に就任したユネスコの松浦氏
日ユ協連の鈴木幹夫氏ソニーの会長兼グループCEOの出井氏アジア初の事務局長に就任したユネスコの松浦氏

続いてソニーの出井氏は、「ソニーは戦争終結後の1946年に設立された会社で、平和の中で育ってきた。創業者の盛田氏は戦争が嫌で嫌で、平和の中で貢献できる企業としてソニーを育ててきた。教育財団や学校への支援活動も続けている。例えば中国・北京の繁華街に子供向けの科学ミュージアムを作り、科学の楽しさを伝えるための活動を行なっている。同様の施設(“ソニー・エクスプローラサイエンス”)はお台場にもある」「QRIOができたときに、これを売ってどうこうするのではなく、子供たちが科学する心を広げていきたいと考え、世界各国でデモンストレーションを行なってきた。昨年はパリ(フランス)、モスクワ(ロシア)、中国、インドと回っている。世界各地で宗教や考え方は違っても、科学に対する子供たちの関心は共通で、目を輝かせて、好奇心を持って接してくれる。QRIOの名前は“curiosity(キュリオシティー、好奇心を意味する英単語)”に由来する。言葉を認識する、触る、話す、動く、(転んだら)自分で立ち上がる、制御するといったことができる現在のコンピューターの集大成。今のパソコンとは違った(QRIOのような)コンピューターが将来は必要とされるだろう。ソニーでは2050年に人間がコンピューターとサッカーの試合ができるような世界を目指して、ロボットコンテストの開催も行なっている(編集部注:“ロボデックス”を指すと思われる)」「飲み仲間である松浦さんから話をうかがい、今回ユネスコを通じて教育・科学・文化に貢献できる企画に参加させてもらった。QRIOをお預けして科学のメッセンジャーとして活躍できる場を与えてもらい、この上ない喜びを感じている。ぜひ大活躍してもらいたい」と、このプログラムに対する積極的な協力姿勢を示した。

来賓として紹介された松浦氏は、アジアから初めて選出された第8代の事務局長で、今回のプログラムにも積極的に関わっているという。同氏は、「ユネスコは毎年9月16日を世界憲章を採択した記念日として定めているが、来年(2005年)は採択からちょうど60周年を向かえる。憲章に掲げた“世界平和の追求”を行なうには各国の政府間だけでなく市民社会の協力が欠かせない。日本は、戦後世界に先駆けて民間レベルでの“ユネスコクラブ”(民間のユネスコ協会)が仙台で設立された。現在は全世界に6000ほどあり、そのうち5%(300)が日本にある。数の多さだけでなく、積極的な活動を行なっているのも日本が一番だろうと思う。それらのとりまとめを行なっているのが日本ユネスコ協会連盟である。今回、かねてより親交のあるソニーの出井さんの協力のもとで、QRIOが活動に参加してくれるのは大変喜ばしい。また、今日出席いただいた栗原さんはスペシャルアドバイザーとして活動いただいている。ユネスコクラブはその国の中での活動だけでなく、クラブ同士の交流も積極的に進めている。特に東アジアの5ヵ国、日本、中国、韓国、北朝鮮、モンゴルで東アジア事業分科会を取りまとめている。栗原さんにはこの会合にも出席いただき、平和を願う詩の朗読をお願いし、参加者に感銘を与えていただいている。今回のプログラムにおいても参加いただき大変感謝している」と、プログラムを企画・立案した日ユ協連とそこに協力・参加する個人や団体に対して、改めて謝辞を述べた。

挨拶の後で詩を朗読した栗原さんと、直立不動で迎えるQRIO
挨拶の後で詩を朗読した栗原さんと、直立不動で迎えるQRIO

日ユ協連のスペシャルアドバイザーとして活動している女優の栗原さんは、「QRIOを創られたソニーの関係者の皆様には、心からの祝福と感謝を述べたい。ユネスコの大きなテーマは“科学の発展、教育の充実、そして世界の平和”を実現すること。QRIOを通じて人々は科学の偉大さを知り、子供たちは命の尊厳を見出すでしょう。QRIOのこれからの活動が国境を越え、世界の平和に寄与することを願い信じています」と話した。

栗原さんがお辞儀をすると、遅れてQRIOもお辞儀を返した タスキをかけてもらうために、左腕を挙げたQRIO QRIOの優しく接しながらタスキをかける栗原さん
タスキを受けるQRIO。栗原さんがお辞儀をすると、遅れてQRIOもお辞儀を返した。会場では無線LANによる外部操作が行なわれていたようだタスキをかけてもらうために、左腕を挙げたQRIOQRIOの優しく接しながらタスキをかける栗原さんと、それを見つめる出井氏、鈴木氏

最後に任命式が行なわれ、女優の栗原小巻さんからタスキをかけられたQRIOは、「皆さんこんにちは、ソニーのQRIOです。僕たちQRIOは、今日日本ユネスコ協会連盟のサイエンスメッセンジャーに任命されました。科学の発達が世界の平和に役立つよう、世界の子供たちに科学の楽しさを感じてもらえたらうれしく思います。暑さや寒さなど、ロボットにとって苦しい環境も予想されますが、サイエンスメッセンジャーの名に恥じぬようがんばって活動しようと思っていますので、皆さんも期待していてくださいね」と流暢な言葉で挨拶した。

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