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【特別企画】デジタル放送時代のTV録画

【特別企画】デジタル放送時代のTV録画

2004年08月27日 20時21分更新

文● 月刊アスキー編集部・小林S

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【特別企画】デジタル放送時代のTV録画

本記事は月刊アスキー2004年6月号の“Kininal Digital”記事をWebサイト向けに再編集して掲載したものです。

我が家にもデジタル放送がやってきた! TVの視聴環境が飛躍的に高画質・高音質に、と思ったのもつかの間、逆にさまざまな不便な点があるのも分かった。“コピーワンス”コンテンツの影響でHDDレコーダが使えないのが発覚。アナログ環境ならばデジタルのコピー制御は関係ないと思っていたのは大きな間違いだった。デジタル放送のコピー制御の仕組みを調べてみた。

我が家のAV環境の一部。AX-20とデジタルSTBが重ねてある。
写真1 我が家のAV環境の一部。AX-20とデジタルSTBが重ねてある。
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 2003年11月から地上デジタル放送開始。2004年4月5日からは、地上デジタル/BSデジタル/CSデジタル放送にすべてコピー制御がかかり、“1回だけ録画可能”(いわゆるコピーワンス)コンテンツとするスクランブル(暗号化)放送が始まった。

 頭ではそう分かっていても、何もデジタル放送に触れていない私には、まったくピンときていなかった。深く考えずにデジタル放送への移行を決めたのが今年3月のこと。

 というのも、集合住宅である我が家のマンションは美観と安全性の問題で“勝手に”BS/CSアンテナを立ててはいけないと、管理組合の規約で決められている。その替わりといってはなんだが、マンション丸ごとケーブルTVが導入され、地上アナログ放送もケーブル会社のインフラで受信。契約すれば多チャンネルのケーブル番組を受信可能で、従来のアナログケーブル放送を契約していた。

 ケーブル会社はJ-COM Broadband板橋。J-COMでは2004年4月よりデジタル配信のサービスを拡充、地上/BS/CSフルデジタルサービスを始めた。デジタルセットトップボックス(STB)に取り替えて(機器レンタル費用は月額に含まれる)、アナログと比べてエキストラフィー約1000円/月を払えばデジタル放送に移行できる。自分で機器を揃える手間もいらず、現在は配信エリア外の立地ながら地上デジタルも見られる。それっ!と飛びついて、4月10日には工事にきてもらい、無事「Panasonic TZ-DCH500」というCATVデジタルSTBがTVの下に納まった。

 我が家のTVは高解像度TVではないので、HDTVを現状と同等のSDTV画質にわざわざ落として見ていることになるが、それでも画像の揺れがないし、無用なノイズもなく、画質の高さに感動。MPEG的なブロックノイズがたまに見えるご愛敬もあるが、それでも女優さんの化粧のノリまでハッキリ分かる高画質。デジタル時代恐るべし。



CGMS-Aがアナログ接続でも
録画を阻む

デジタル放送も番組録画をするつもりが、「コピーガードの信号を検出」という“つれない表示”が出て何も見られない
写真2 デジタルSTB(写真1の上)をAX20にコンポジット端子で接続。これまでのようにデジタル放送も番組録画をするつもりが、「コピーガードの信号を検出」という“つれない表示”が出て何も見られない。

 STBとTV、録画機器との接続はコンポジット端子・S端子など、従来と同じものを使用。多チャンネルへのささやかな対応として、NECのHDDレコーダ「PK-AX20」で録画予約し、家に居られない時間帯の番組をバンバン録画していた。だが、一番の誤算はデジタルSTBからのすべてのチャンネルの信号を、AX20がはじいてしまうこと(写真1)。



番組情報で“デジタル1COPY”が表示される
写真3 番組情報で表示される“デジタル1COPY”が“1回だけ録画可能”であることを示している。無料番組であってもスクランブルがかかりコピーワンスとして放送されている。

 デジタル放送ではコピーワンスの制御がかかり、1世代のコピー(録画)は可能。その次の世代へのコピーはできない。デジタル接続でもないのにコピー制御がかかるのはどういう仕組みかというと、CGMS-Aによって、“録画自由”“1回だけ録画可能”“録画不可”という制御情報をアナログビデオ信号そのものに乗せているから、というのが分かった。CGMS-Aを受け取ったデジタル録画機器(D-VHS、HDD&DVDレコーダ、DVなど)は、録画不可の場合は自動的に停止する仕様になっている。AX20は常にタイムシフトという仕様で“必ず”HDDに番組を録画し、PCへの配信やコピーもできてしまう。これでは“1回だけ録画”にならず、録画も視聴も不可という設定にしたのだろう。

表1 アナログビデオ信号のコピーガード

マクロビジョン
VHSやDVDソフトなどで利用されているコピーガードで、アナログビデオ信号に乗せられ、アナログ-アナログ接続でコピーされるのを防ぐ。ビデオデッキの回路の特性を逆手にとっており、画像を暗くする、同期を乱すなどの症状が出る。
CGMS-A(Copy Generation Management System-Analog)
ビデオ信号に「録画自由」「1回だけ録画可能」「録画不可」といった複製制御情報を信号として埋めこむ仕組み。デジタル録画機器がその信号を受信するとそれに応じた処理がなされる。VHSなどのアナログビデオデッキはCGMS-Aの信号の状態によらず録画が可能。

 ほかのメーカーの家電製品はどうかというと、コピーワンスに対応済みのものがほとんどだが、機能的には細かな部分で異なる(表2)。HDDへは録画でき、DVD-RAM/-RW(DVD-VRモード)へのムーブ(移動)が可能としているのが主流。HDDのデータを消去することで“1回だけ録画”したことにしているのだ(図1の中央)。このときメディアはCPRM(Content Protection for Recordable Media)対応でなくてはならず、メディアごとに個別の暗号キーも含めて暗号化するので、ファイルを別のメディアに移動すると再生できないという仕掛けになっている。CPRMに対応していない“より廉価なDVD-R、DVD+RW/+Rメディア”へは、そもそも書き込みができない。また、HDDからDVDへムーブができない製品もあるから注意が必要だ。なお、最近のPCのビデオキャプチャ製品は、AX20と同様にコピーワンスのコンテンツは録画・視聴できない仕様になっているようだ。

表2 「1回だけ録画可能」への非対応状況(主なもの)

ソニー
PSX DESR-7000、DESR-5000
HDDへの録画は可能だが、DVDへの直接録画とムーブは不可
RDR-VD6、RDR-GX5、RDR-HX8、RDR-HX10、RDR-GX7
HDD、DVD-RWへの直接録画は可能だが、ムーブは不可
NDR-XR1
HDDへの録画は不可
NAV-E900、NAV-E600
ソフトウェアアップグレードによりHDD録画に対応
CSV-EX11、プレミアムアップグレードしたCSV-EX9、CSV-E77
「Click to DVD」搭載バイオと連携したネットワーク経由でのDVD作成は不可

東芝
RD-XS31、RD-XS41、RD-XS32、RD-XS35、RD-X4、D-R1、D-VR1、D-VR80
HDDまたはDVD-RAMに録画、ムーブとも可能だが、RD-X4を除いてDVD-RWへの記録は非対応

ビクター
DR-MH5
HDD、DVD-RAM、DVD-RWに録画可能だが、ムーブは不可

NEC
PK-AX10、PK-AX20
視聴、録画は不可
PK-AX300
CPRMに非対応。視聴は可能だがタイムシフト、HDDへの録画は不可

図1 現在の録画機器の基本的なふるまい

図1 現在の録画機器の基本的なふるまい

デジタル放送では、コンポジット端子・S端子にはCGMS-Aにより「1回だけ録画可能」な状態で録画機器に送られる。デジタル録画機の場合は、HDDと、CPRMに対応したDVDメディア(現在はDVD-RAMとDVD-RWのみ)へはDVD-VRフォーマットで書き込みが可能。HDD&DVDハイブリッドレコーダでは、内蔵のHDDからDVDへ「ムーブ(移動)」が可能で、HDDの録画データはムーブすると消去される。VHSデッキでは、CGMS-Aの信号はそのまま次世代に受け継がれているのに注目。ただし、これはあくまでも原則であり、機器により対応状況は異なる。なお、ここではD-VHS、DVなどのデジタル接続の録画機器は説明の対象から除外している。

図2 デジタル録画機器からのコピー

図2 デジタル録画機器からのコピー

一度録画した「1回だけ録画可能」な番組は、次世代へは「録画不可」という信号に置き換わる。そのため、デジタル録画機器では録画ができない。いっぽうVHSデッキでは録画が可能だが、CGMS-Aの信号は「録画不可」となるので、このVHSテープからはデジタル録画機器への録画はできない。

図3 我が家のビデオ機器の接続状況

図3 我が家のビデオ機器の接続状況

AX20は残念ながら「1回だけ録画可能」信号が含まれたビデオ信号がくると、録画ができないばかりか、視聴も不可となってしまう。せっかくのタイムシフト機能もなにもかもデジタル放送には使えない。

“1回だけ録画可能”な“CPRM対応”DVDメディア
“1回だけ録画可能”に対応したDVDメディアには“CPRM対応”と表記されている。PCデータ用とうたわれているメディアはCPRM対応ではないので注意しよう。

 VHSなどのアナログビデオ機器では“1回だけ録画可能”“録画不可”の影響を受けずに録画できるが、実はCGMS-A信号はそのまま受け継がれる。デジタル機器で録画した際に、1回だけ録画可能信号は録画不可に変わる。そのため、ビデオテープに録画して画像が劣化しているにもかかわらず、デジタル機器にコピーできない場合もあり得る。


 これらはHDTVクオリティでないにも関わらず使用上はこうした制限がかかる。MPEG-4などへコピーする際に劣化したとしてもムーブと見なされ元データは消去しなくてはならないなど、コピーワンスはさまざまな問題をはらんでいる。コンテンツ保護は重要だが、ユーザーの立場からは“やっかいな代物”になりつつある。

 よくよく理解の上で、デジタルレコーダやデジタル放送の導入をおすすめする。



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