今年の“もて耐”は無線LAN対応パソコンを持って!――インテル、“Pit Live TV powered by Intel”のプレス説明会を開催
2004年08月05日 20時55分更新
サーキットのスタンドからパソコンで順位をチェックしている。こんな風景が、当たり前になるのかもしれない!? |
球場に野球観戦へ行く際に小型ラジオを携帯するのは、熱心な野球観戦ファンには“常識”だが、これからはサーキットにレース観戦に行く際に“無線LAN対応パソコン”を持っていくのが“新・常識”になるかもしれない。
インテル(株)は4日、(株)ツインリンクもてぎが経営する栃木県芳賀郡茂木町のレーシングサーキット“ツインリンクもてぎ”にプレス関係者を集め、同会場の来場者に向けて今年4月から実施しているIEEE 802.11b/g方式の無線LAN経由による映像&順位データ配信サービス“Pit Live TV powered by Intel”の説明会を開催した。会場内での受信は無料で行なえ、IEEE 802.11bもしくは802.11b/gの無線LANに対応するパソコンおよびPDAで視聴可能。ただし、インターネット経由での配信、およびPit Live TV経由でのインターネットへの接続サービスは行なっていない。
インテル(株)のマーケティング本部モバイル&ワイヤレスマーケティング インフラストラクチャ・プログラム・マネージャの江頭靖二氏 | ツインリンクもてぎの営業部の本間公康氏 |
説明会には、インテルのマーケティング本部モバイル&ワイヤレスマーケティング インフラストラクチャ・プログラム・マネージャの江頭靖二氏、ツインリンクもてぎの営業部の本間公康氏らが出席。サービス開始の背景や今後の展開について説明した。
実際に“Pit Live TV powered by Intel”を受信しているところ | こちらは“Pit Live TV powered by Intel”の高画質モードを表示している |
このサービスを導入した理由について、江頭氏は「Centrino(セントリーノ)の利便性がビジネスシーンには広く受け入れられた半面、家庭や個人ユーザーにはなかなか親しんでもらう機会がなかった。こうしたスポーツイベントで積極的にアピールすることで、家庭への一層の浸透を図りたい」とインテルとしての狙いを説明した。一方、本間氏は「サーキットに来場される方に、レースを楽しんでもらうサービスの一環として導入した。メインスタンド前や施設内には以前からTVモニターによるライブ中継や順位一覧表などが視聴できるサービスを展開してきたが、サーキットの各コーナーなどで観戦している方にも、現在の順位争いを確認してもらうために“見えるラジオ”などさまざまな工夫を重ねてきた。最近の無線LANの普及とその高速な伝送速度を利用すれば、映像配信(マルチキャスト)も可能と思い、今回のサービス導入に至った」と話し、両者の思惑が一致したことからこうしたサービス提供が開始されたことを説明した。インテルはツインリンクもてぎのスポンサーの1社で、今回スポンサー契約の一環として資金面での協力と技術支援、機材導入に関するアドバイザーとしての役割を果たした。なお、新規の設備投資は1億円程度投入したとのこと。
サーバーなどの設備は会場の“ブリッジスタンドハウス”にある映像編集・中継施設内に収容されている。システム構成は以下のとおり。
サーバー群
- レース映像配信
- Xeon搭載サーバー2台(Windows Media高画質/ノーマル画質)
- 順位表配信
- Xeon搭載サーバー2台(Windows Media/OKI Media Server)
- データ管理用ストレージ
- Xeon搭載サーバー1台
- 管理サーバー
- Itanium 2搭載サーバー1台(HTTPサーバー/DNS/DHCPサーバーなど)
無線/有線配信システム
- AP(アクセスポイント、2.4GHz帯)
- グランドスタンド/インテルターン(スーパースピードウェイ(※1))/V字コーナー(ロードコース)/90度コーナー(ロードコース)
- WIPAS(Wireless IP Access System)
- グランドスタンド⇔V字コーナー、グランドスタンド⇔90度コーナーの遠隔無線データ伝送
- VDSL(Very high speed Digital Subscriber Line)
- グランドスタンドの各AP間での有線通信
※1 スーパースピードウェイ/ロードコース ツインリンクもてぎは、名前のとおり2つのコースが組み合わさったサーキット構成になっている。ひとつは楕円形のオーバルコース“スーパースピードウェイ”で1周2.4km。もうひとつは複数のコーナーが組み合わせられた“ロードコース”で1周4.8km。両者は2ヵ所のアーチで交差するように設計されている
Xeonサーバーは19インチラックマウントに配置され、最下段には無停電電源装置も配置されている |
Windows Mediaの高画質中継は約500kbps、ノーマル画質は約250kbps、順位表は約150kbpsの合計約1.1Mbpsでマルチキャスト配信している。受信するには、会場で無線LANアクセスポイント“pitlivetv”(インフラストラクチャーモード)を検索・設定し、ウェブブラウザー(Internet Explorer 5以上)で専用ウェブサイト“http://pitlivetv/”にアクセスする。あとは、動画はWindows Media Player 9以降で、順位表はWindows Media PlayerもしくはOKI Media Player(同ページからダウンロード可能)で表示できるという仕組み。
サーバーが配置されたAV編集ルーム。この部屋の一部から、TV中継なども行なわれているという |
推奨動作環境は、OSにWindows XPを搭載し“インテルCentrinoモバイル・テクノロジ”採用のノートパソコン、およびPocket PC/Linux搭載“ザウルス”(SLシリーズ)の各種PDA。動作環境として無線LAN機能を搭載し、DHCPクライアント機能が必要。なお、PDAではノーマル画質の動画と順位表のみ視聴可能となる。
ツインリンクもてぎのコース周回を説明するバスツアーに登場した“チームクニミツ”監督の高橋国光氏。レーサー&レーシングファンには雲の上の存在だ |
これまでの実績として、「今年4月に行なわれた“ブリヂストン インディジャパン300マイル”の時に約1000台の接続、6月の“2004年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(フォーミュラ・ジャパン)”で700~800台の接続を確認している。今後はこれを2~3倍に増やしていきたい」(本間氏)と語った。
ブリッジスタンドハウスの屋上に配置されたWIPASアンテナ |
今後のサービス強化について、本間氏は「IEEE 802.11gが普及し、回線の増強が図れた場合には、高画質化を進めるとともに、来場者が見たいシーン(ロケーション、カメラ位置)を選択したり、見逃したシーンをプレイバックできるビデオ・オン・デマンド機能といったプレミアム(高付加価値)機能を提供したい。さらに、会員制を導入して、自宅に戻ってからも振り返って視聴できるようなサービスにもつなげていきたい」と展望を明らかにした。また、携帯電話向けサービスの展開について聞いたところ、FOMA対応端末も検討したことがあるものの、1つのアンテナで20人程度しか接続できない点、遅延が大きい点などを挙げて、現時点でサービスの予定はないと話した。
会場を歩いていても、よくよく見ないと気付かないが、確かにアクセスポイントが設置されている。左はロードコースの90度コーナー付近、右はスーパースピードウェイのメインスタンド前のもの) |