このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

「今後はIPの外販も行なう」――エヌビディアのマニッシュ・シン氏が携帯電話向けアクセラレーターチップ『GoForce 3D』を説明

2004年08月02日 00時00分更新

文● 編集部 佐久間康仁

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
米エヌビディア社のシニアマーケティングディレクターのマニッシュ・シン氏ら
米エヌビディア社のシニアマーケティングディレクターのマニッシュ・シン氏(中央)とエヌビディア(株)のシニアマネージャ&モバイルメディアビジネス担当の花崎勝彦氏、米エヌビディア社のシニアパートナーシップディレクターのサンダー・ベラムリ(Sander R.Velamuri)氏

無線通信やモバイル技術の総合展示会“ワイヤレスジャパン2004”(7月21日~23日、会場は東京国際展示場)にブースを構えたエヌビディア(株)は、会場内のプライベートルームで個別に記者説明の時間を設けて、現在開発中の携帯電話/PDAなど小型デバイス向けのグラフィックスアクセラレーターチップ『GoForce 3D(ゴーフォース スリーディー)』の機能概要などを説明した。

説明会には、米エヌビディア社のシニアマーケティングディレクターのマニッシュ・シン(Manish Singh)氏、エヌビディア(株)のシニアマネージャ&モバイルメディアビジネス担当の花崎勝彦氏らが出席。量産出荷が始まった『GoForce 3000/4000』の概要と合わせて、GoForce 3Dの詳細を明らかにした。



年々機能が増していく携帯電話のトレンドをまとめた図
年々機能が増していく携帯電話のトレンドをまとめた図

エヌビディアの小型デバイス向けグラフィックスアクセラレーターチップは、2003年9月に台湾・台北で行なわれたPC/IT関連製品&デバイスの総合展示会“COMPUTEX TAIPEI 2003”で発表された『GoForce 2150』が最初の製品。これは、その前月(2003年8月)に行なわれた低消費電力駆動のグラフィックチップメーカー、米MediaQ社の買収がきっかけと思われがちだが、「それ以前からエヌビディア社内で(小型デバイス向けグラフィックスチップの)開発が進められていた」とシン氏は語る。

開発に着手した背景について同氏は、「日本では特に顕著だが、携帯電話にマルチメディアファンクションが求められるようになった。例えば写真/動画撮影/PDA(個人情報管理)/TV受信/ビデオ会議(TV電話)/ビデオゲームなどだ」と述べ、続いて現在の主流な携帯電話の構造を示しながらGoForceの優位性を語った。同氏の説明によると、一般的な“Smartphone”(ここでは上記機能を備えた高性能な携帯電話全般を指す)では、無線通信部分とCPU(およびグラフィックス処理用のサブCPU)で構成される。CPUはソフトウェア次第でさまざまな機能を実現できる半面、処理性能は特定機能向けに設計された専用チップには及ばないのが一般的だ。GoForceシリーズは汎用のアプリケーションプロセッサー(いわゆるCPU)ではないので、ソフトウェア次第でさまざまな機能を実現するわけにはいかないが、GoForceが持つ“デジタルカメラ/動画/高速グラフィックス表示”の機能においては、CPU+ソフトウェアよりはるかに高速に実現できるという。「実際、GoForceを搭載したモトローラの“E1000”と現在市販されている最新のFOMA端末(900iシリーズ)を両手に持って、カメラを起動して左右に振ると、液晶ディスプレーに映るモニター画面の追従性の違いがはっきりわかります」(花崎氏)

ここで言うデジタルカメラ機能とは、JPEGエンコード/デコード機能、デジタルズーム機能、イメージフィルター機能、SDIO(メモリーカード)コントローラーなど、動画機能はMPEG-4、H.263形式のエンコード/デコード機能、ビデオフィルター機能などを内蔵することを示す。最新のGoForce 4000では、デジタルカメラの記録解像度が最大300万画素、デジタルズームは最大8倍に対応。動画撮影は解像度352×288ドット(CIF)で、ビデオ会議などのエンコード/デコード同時実行では176×144ドット(QCIF)で毎秒30フレームの記録/再生が可能という。

GoForceシリーズを搭載した携帯電話端末の構成図
GoForceシリーズを搭載した携帯電話端末の構成図

現在は図のように、無線部分+CPU+GoForceという組み合わせでSmartphoneを実現しているが、必要な機能を取捨選択すれば、無線部分+GoForceというシンプルな組み合わせでデジタルカメラ付き携帯電話を構成でき、本体の小型化や省電力化に威力を発揮するだろうと説明する。

最新のGoForce 3Dでは、携帯電話向けグラフィックスチップとして初の“ピクセルシェーダー”を搭載するほか、省電力化機能“nPower”を備えるのが特徴。3Dグラフィックス描画機能を利用するためのAPIはOpenGL ESとD3Dm(Direct3D Mobile)をサポートする。省電力化は、同チップの設計プロセスに消費電力の低下や発熱の低減が期待できるというLow-k膜(低誘電体層絶縁膜)を採用し、nPowerによって使用しないデバイスへのクロック供給を制限することで実現する。なお、同社では今後ピクセルシェーダーやnPowerなどの技術を、他のモバイル機器向けチップメーカーにIP(知的財産権)の有償提供も行なうという。これは、パソコン向けグラフィックスアクセラレーター“GeForceシリーズ”では行なわれなかったことであり、同社の方針転換には今後注目したい。



CPU+ソフトウェアでの実行と比べて、最大95%の省電力化が可能という
GoForceシリーズでMPEG-4のビデオエンコード、JPEG画像の圧縮およびプレビューを行なったところ。CPU+ソフトウェアでの実行と比べて、最大95%の省電力化が可能という

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン