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NECと東芝、メモリーテック、次世代DVD規格“HD DVD”に関する技術説明会を開催――機器/コンテンツソフトウェアの登場は2005年中

2004年07月27日 04時18分更新

文● 編集部 内田泰仁

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日本電気(株)(NEC)、東芝(株)、メモリーテック(株)の3社は26日、次世代DVDとして業界団体“DVDフォーラム”の承認を得た新規格“HD DVD”に関するプレス向けの技術説明会を都内で開催した。今回の説明会では、HD DVDの技術仕様の解説に加え、開発中の試作機を使用したサンプル映像の上映も行なわれた。HD DVD規格を採用した機器およびコンテンツソフトウェアは2005年中にも登場する予定だという。

東芝のHD DVDプレーヤー試作機とHD DVD-ROMメディアNECのHD DVD&DVDコンボドライブ試作機。今回展示/デモが行なわれたものは外付け型(インターフェースは明らかにせず)

Windowsパソコンに接続したNECのHD DVD&DVDコンボドライブを利用してHD DVD-Videoを再生、プロジェクターで会場のスクリーンに表示したサンプル。元ソースはハイビジョン撮影された映像
今回開催された説明会は、26~28日の3日間、日本国内のコンテンツ業界向けに開催するHD DVDの技術説明会に併せて行なわれたもの。コンテンツ業界向けの説明会には、3日間で合計約150社、1000人が参加する予定となっているという。説明会場には、NECが開発中のパソコン用HD DVD&DVDコンボドライブ、東芝が開発中のHD DVDプレーヤーの実機が展示され、説明会中のデモンストレーションでは、実際に開発中の製品を使って再生したサンプル映像が上映された。

HD DVD規格は、DVD規格を策定・管理する業界団体、DVDフォーラムにて2003年11月に承認された次世代DVD規格のひとつ。同時点では読み出し専用の“HD DVD-ROM”規格のバージョン0.9が承認され、今年2月には記録用規格の“HD DVD-ARW”のバージョン0.9が、6月にはHD DVD-ROMバージョン1.0とHD DVD用ビデオコーデック2種類がDVDフォーラムより承認されている。



HD DVDの基本的な用途の方向性と仕組み、スペックBlu-rayの基本的な用途の方向性と仕組み、スペック
HD DVDとBlu-rayの規格設計理念の違い

NECの第一ストレージ事業部統括マネージャー、早津亮一氏
次世代DVD規格としては、HD DVDのほかに、“Blu-ray”があり、すでに対応製品も登場しているが、構造や設計理念は大きく異なっている。規格の技術的内容を説明した日本電気(株)第一ストレージ事業部統括マネージャー、早津亮一氏は、Blu-rayは“HDのテレビ放送を録画”することをターゲットとしているのに対し、HD DVDは“HDのビデオコンテンツ(市販パッケージ)を製造”することに力点を置いている、とその基本的な設計理念の違いを説明。HD DVDでは、現行のDVD-Video(SD画質)からのスムーズかつシームレスな移行を目標とし、ほとんどの映画タイトルがメディア片面に収まる容量(約135分相当)の実現を目指したとしている。

早津氏によると、次世代DVD Video規格の策定において重視されたポイントは、

  1. 映像の品質(現行規格と“価値”の違いが明確になる高品質)
  2. 製造コストの抑制(現行規格と新規格を併用していけるコスト)
  3. コピープロテクションの強化(現行のCSSよりも強固な規格の導入)

の3点になるという。



放送の進化と圧縮技術の進化を示すスライド。12年前に策定されたMPEG-2は、HD映像時代には圧縮効率が低いとしているBlu-rayとHD DVDの映像圧縮方式/ビットレートやメディア容量の違い

VC-9について解説するマイクロソフト(株)のシニアエグゼクティブアドバイザー、矢嶋利勇氏。以前は東芝に在籍し、規格の立ち上げ期からDVDに関わってきたという。同社は映像圧縮技術でHD DVDに貢献
映像の圧縮方式には、現行DVD-Videoで使用されているMPEG-2は用いず、H.264を標準化した“MPEG-4.AVC”とWindows Media Video 9を標準化した“VC-9”の2種類の新方式を採用。MPEG-4.AVC、VC-9共に、MPEG-2より高い圧縮効率と画質を持つといい、MPEG-2ではビットレートが22~24Mbpsほど必要なHD映像の録画を、7.5~8Mbpsで実現するという。この2方式を採用したことにより、メディアの片面1層あたりの容量をBlu-rayほど高める必要がなく、片面1層でHD映像を約180分収録できる、15GBをメディア1枚(片面)の容量として決定したとしている。また、2層記録もすでに定められており、この場合の容量は2層合計で30GBとなる。なお、ピックアップに用いられるレーザーダイオードは、Blu-rayと同じく、波長405nmの青色レーザーダイオード。



現行DVDとHD DVD、Blu-rayのメディア構造の比較。現行DVDとHD DVDは使用されるレーザーダイオードの違いこそあるものの、非常に近い構造となっている。Blu-rayでは2枚のレンズが必要な上、レンズとメディアの間の距離が非常に短く、高い技術レベルと振動対策が必須となると見られている
また、メディアの構造がBlu-rayよりも現行DVD規格に近いのが最大の特徴。現行のDVD規格に近い構造を維持することにより、従来技術に対する継続性、ディスク製造設備の継続性、ドライブ/プレーヤー/レコーダーやコンテンツパッケージ(ビデオソフト製品)、家電/IT融合といった“事業”の継続性を図りつつ、DVDからHD DVDへとスムーズかつシームレスに移行していけるという。

コピープロテクションについては、現行DVD規格のCSSに替わり、IBMやインテル、マイクロソフト、ソニー、松下、東芝などの企業が現在策定作業中の新規格“AACS(Advanced Access Content System)”を利用。現状ではDVDフォーラムでの承認が完了していないため、技術仕様の詳細説明は行なわれなかったが、CSSよりも高度な暗号化技術が盛り込まれているという。



HD DVDを利用した今後の製品展開

なお、現状では再生専用規格(ROM)が先行しているように見え、「再生装置が(規格の)基本」(早津氏)としているものの、記録型規格の策定も同時進行で進められており(時期とバージョンにずれがあるのはフォーラムで否決されたため)、NECでは再生装置互換の記録機器も開発中だという。また、家電機器分野とIT分野で共通に扱えるフォーマットとして策定されており(ファイルフォーマットにはUDFが利用される)、マイクロソフトでは、次期Windows“Longhorn”でHD DVDをサポートするとしている(※1)。

※1 データの読み出しやHD DVD-Videoの再生もサポート。Blu-rayに関しては、「ROM規格の仕様がフィックスしていない段階ではサポートの表明は難しい」としたうえ、対応するためにはマイクロソフト側の作業時間も必要になることから、現状のままではサポートしない可能性があるという

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