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【JavaOne 2004 Vol.4】JavaOne最終日は“Javaの父”ゴスリング氏がキーノートスピーチ

2004年07月02日 00時00分更新

文● 塩田紳二

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JavaOneは4日間にわたって開催される。最終日の今日は、Javaの開発者であるJames Gosling(ジェームス・ゴスリング)のキーノートスピーチである。初日から行なわれていたキーノートスピーチは、米サン・マイクロシステムズ社の幹部によるもので、どちらかというと、ビジネスを見た内容のもの。しかし、今日のキーノートは違う、完全に開発者にむけたキーノートである。そのせいか、客の入りは最終日であるのに悪くない。日本でもそうだが、4日間のイベントといっても、最終日は、人がかなり少なくなってしまう。セッションなどもあまり重要そうなものがなくなり、帰ってしまう参加者も少なくない。

James Gosling(ジェームス・ゴスリング)氏
Java開発者であるJames Gosling(ジェームス・ゴスリング)氏。司会者から“Javaの父”と紹介された

さて、今日のGoslingのスピーチは、さまざまなJavaの応用を見せるもの。Javaを使ったウェアラブルコンピューターで、カメラから取り込んだ文字を認識、翻訳して音声で出すといったことや、人物(顔)の認識などを行なって見せた。

ウェアラブルコンピューターでJavaを利用するデモウェアラブルコンピューターでJavaを利用するデモ。メガネにつけたカメラで文字認識や人物(顔)認識を行なう

また、リアルタイム制御をJavaで行なうデモとして、モーターとセンサーで棒を直立させるといったことが行なわれた。このリアルタイム機能は、JSR01としてJavaに対する機能拡張としてリクエストされているもの。JSR(Java Specification Requests)とは、JCP(Java Community Process)で作られる、Javaの拡張に対する要求である。さまざまな要求をJSR番号を付けて管理し、JCPで議論を行なう。こうした要求を行うには、JCPへの参加が必要で、現在は米IBM社など多くの企業が参加している。2日目のキーノートで、Scott McNealy(スコット・マクニーリ)は、米マイクロソフト社やレッドハット社にJCPの参加を勧めていた

Javaを使って、棒を直立させるデモ
Javaを使って、棒を直立させるデモ。Javaのリアルタイム仕様を使って記述されている

サン自身は、Javaをいまのところオープンソース化するつもりはなさそうだが、Javaをどうするかについては、JCPで議論が進められる。ただし、最終的に何をJavaに取り込むのかについてはサンが最終的に決めることになる。しかし、現在のところJCPは概ねうまく動いており、方針的には、比較的オープンな状態ではある。

かつて、サン・マイクロシステムズの創業メンバーの一人で、著名なUNIX開発者として知られるBill Joy(ビル・ジョイ)は、Javaについて「さまざまなオブジェクトが作られ、将来的にはさまざまな言語から使えるようになる」といった意味の発言をしたことがある。Javaは、ある意味、動作している環境をJavaのオブジェクトで再定義する。たとえば、多くのOSにはウィンドウシステムが搭載されているが、Javaでは、これをAWTやSWINGといったオブジェクトライブラリーで仮想化する。

多くの開発者がJavaを使う現在、さまざまなオブジェクトがそろいつつある。もし、これを他の言語からも利用できるとしたら、その言語でもJavaと同じような環境が提供されたことになる。極論すると、Javaのオブジェクトが使えるのなら、必ずしもJavaでプログラムを組む必要はないのである。

たとえば、JSR241には、“Groovy”と呼ばれるプログラミング言語が登録されている。これは、Java似たスクリプティング言語で、コンパイラでバイトコードを生成してVM(Vertual Machine)で実行する。また、VMで他言語をデバッグするための仕様拡張についてもJSR45で議論が進められている。

JavaからBluetooth経由
JavaからBluetooth経由で情報をやりとりするデモ

Javaのオープン化に固執するメーカーなどもあるが、逆にJava自体はオープン化しなくとも、他の言語でJavaオブジェクトを使い、同じような機能を享受するという可能性もあるわけだ。対立するマイクロソフトの.NETは、C#がメインではあるが、さまざまな言語が.NETに対応できるようにしてある。

そう考えると、もはや言語同士が対立しているのではなく、マイクロソフトのCLRとサンのVMという仮想マシン同士の対立ということになる。Windowsを確実に押さえるCLRに対して、広くプラットフォームをカバーするVM。いま、CPUがインテルかAMDかといった対立があるように、アプリケーションは、CLRかVMのどちらのアーキテクチャーを採用すべきかといった状態が確実にやってくる(もちろん、第3の仮想マシンが登場する可能性も否定できないが)。

というわけで、今日、JavaOneが終わった。今回は、さまざまな技術が提案され、オープンソース化された技術もある。イベントとしてはすこし奮わない部分もあったが、サンは技術的には積極的な動きを見せた。さまざまな技術を次々にJavaに投入しなければ、Javaといえども生き残ることはできないのである。

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