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ソニー(株)の“VAIO”は、この夏“Do VAIO(=バイオする)”をコンセプトに、従来の“パソコン製品のブランド”から、“高次元なAV体験を提供する製品のブランド”として生まれ変わった。デスクトップパソコンの“type R”は、新コア搭載のCPUほか高速なアーキテクチャーと、ハードウェアの性能を引き出す新設計の冷却機構を採用した、“高速仕様”のフラッグシップモデル。またビデオ編集/DVD作成の楽しみを追求したマシンとして、DVD+Rの片面2層記録が可能なDVD±RWドライブを搭載し、『Adobe Premiere』や“TMPGEnc”シリーズなど関連ソフトを充実させ、高速仕様がガッチリとそれをサポートする。
主な仕様とデザインは5月に発表されたが、上位2機種のCPU/チップセット/グラフィックスアクセラレーターは発表時点で非公開だった。そこで今回は、type Rの全貌に迫るべく、開発担当者およびデザイナーにインタビューを行なった。前編では筐体デザインや冷却機構、後編(近日掲載)ではスペックや静音性、ビデオ編集/DVD作成などについて紹介する。(取材協力はソニーマーケティング(株)の直販サイトソニースタイル)
type R |
インタビューに参加いただいた開発者/デザイナー(カッコ内は所属部署)
- 商品企画:
- 戒能 正純(かいのう まさずみ、ITカンパニー)
- デザイナー:
- 熊野 大岳(くまの だいがく、デザインセンター)
- メカニカルエンジニア:
- 小林 紀男(ITカンパニー)
- 冷却機構エンジニア:
- 石川 雅幸(ITカンパニー)
- 光ドライブ担当:
- 大西 孝典(ITカンパニー)
左から戒能氏、石川氏、熊野氏、小林氏、大西氏 |
「小穴だらけにしたくない!」発熱問題に対するデザイン部門の回答は……
“黒とスリット(細長いすき間)”は、今期のVAIO全体のビジュアルテーマであり、それを最も体現しているのがtype Rだ。type Rを語る上で真っ先に取り上げられるのは、特徴的な外形だろう。モダンな高層ビルを想起させるブラックの筐体は、正面から見てスリット状のシルバーカラーがあしらわれているところを境に、光学ドライブとCPUの熱を逃がすヒートシンクが入った上段と、それ以外のHDD/グラフィックチップ/マザーボードのチップセットなどが入った下段に、構造的に分かれている。上段と下段の間は、側面から見ると、筐体を貫くようにエアインテーク(吸気口)が設けられている。側面にぽっかり穴が空いているのだ。
この外観についてデザインセンターの熊野大岳氏は、「熱くなるマシンだと聞いたので、発熱問題に対するデザイン部門の回答として、それ(放熱機構)を強いイメージとしてまとめた」という。もちろん、この外形が採用されるまでには、さまざまな検討と議論があったと振り返る。
デザイナーの熊野氏(左)、メカニカルエンジニアの小林氏(右) |
「(一般的に考えられる対応策として)例えば、空気を取り入れる小穴を空けるとすると、天井が小穴だらけになってしまう。デザイナーとして、そんなデザインにはしたくなかった」。熊野氏はこだわりの姿勢を貫き、他部署との調整を図っていったという。
また、筐体の構造を担当したITカンパニーの小林紀男氏は、「ただ穴があいているだけとは違う。発熱対策なり、デザインなりをまとめてから動き出したから、このカタチになった」と、きちんとしたストーリーがあった上で創り出されたものだと強調する。
その結果、できあがった筐体は、通気性の非常に良いものとなった。CPUの熱はヒートパイプで上側に、グラフィックチップやマザーボードのチップセットなどの熱は下側にと、熱を完全に分離できた。高負荷をかけてCPUが発熱しても、筐体下側の温度上昇にはあまり影響がなく、逆にグラフィックチップなどが熱を発することによってCPUの放熱性が悪化することもないのだ。
上下2段構造について小林氏は、「上側を持っても大丈夫」と剛性にも自信を見せる。部品が実装された状態で15kg程度の重さになるため、上下の結合を強固にし、力のかかる上側部分の淵は、ひずまないよう剛性を高くするなどの対策をとっている。下側の筐体を開けて増設などを行なう場合の開閉レバーもデザイン的にうまく収めることができたという。
さらに、もうひとつの効果もあった。VAIOの光学ドライブを担当するITカンパニーの大西孝典氏は「実は私は賛成ではなかったのですが、結果的には熱処理が楽な筐体になりました。下の筐体内が高温になるような動作状態でも、筐体上部に入ったドライブの温度上昇はごくわずかなんです」と評価する。
光学ドライブは意外に熱に弱い。ドライブ自体が発熱するということもあるが、それよりも中に入れるメディアが熱から影響を受ける。特にDVDは高精度が求められ、今回は新開発の2層記録が可能なDVD±RWドライブを搭載する。メディアが高熱によって変形するようなことがあれば、高品質な書き込み性能が維持できない。
大西氏は「いつもなら、試作段階では、こんなに熱いとメディアが反ってしまう――とハラハラしているんですが、今回そういう心配とは無縁になりました」と筐体の性能に満足げだ。
VGC-RA70Pの主なスペック | |
製品名 | VGC-RA70P |
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CPU | HTテクノロジ対応Pentium 4 550-3.40GHz |
チップセット | Intel 915P Express |
メモリ(最大) | DDR2 SDRAM(PC4200) 1GB(最大2GB) |
グラフィックス | ATI RADEON X600 XT(DDR SDRAM 128MB) |
HDD | 500GB(250GB×2) |
FDD | 内蔵 |
光メディアドライブ | DVD+R DL(2層式DVD+R)対応DVD±RW(DVD+R DL2.4倍速/DVD-R8倍速/DVD-RW4倍速/DVD+R8倍速/DVD+RW4倍速/CD-R40倍速/CD-RW24倍速) |
スロット | PCI Express x16×1(空き0)、PCI Express×1(空き1)、PCI×2(空き1)、PCカード(TypeII×1、CardBus対応)、メモリースティック×1、CF TypeI/II×1、xDピクチャーカード×1、SDメモリーカード/MMC×1 |
通信 | 10/100/1000BASE-T、56kbpsモデム(V.90) |
I/O | USB 2.0×4、IEEE 1394×1、光角型デジタル出力×1など |
サイズ(W×D×H) | 188(W)×402(D)×410(H)mm |
重量 | 約16kg |
OS | Windows XP Professional SP1 |