日立アメリカ Infomation Technology Group、Senior VP&CIOの角田利式氏 |
“SAPPHIRE '04”では、実に多くのSAP製品導入事例がセッションのなかで紹介されている。今回は、そのなかでも日立アメリカ社におけるデジタルメディア製品のエクストラネットポータルの構築について、セッションが開催されていたので紹介したい。
左は日立アメリカ社の組織図で、右はInfomation Technology Group(ITG)の位置づけ |
同社は(株)日立製作所の100%子会社で本社は米国カリフォルニアにあり、米国内に4つの研究所を持つ。今回紹介されたのはDigital Media Division(DMD)のケースだ。DMDではLCDプロジェクター、LCOSプロジェクター、カラー・レーザー・プリンターおよびエンジンを扱っており、約200の代理店を抱えている。ここでは、これまで営業部隊が業務の70~80%を注文の対応、インボイスのファクス再送や製品アクセサリーの在庫確認に追われ、代理店の個別価格情報をリアルタイムで更新するのは困難、エンジニアリンググループが代理店網内のカスタマー・サービス・グループにCAD/CAM図面、回路図、仕様書や製品ツールといった機密情報を安全なチャンネルを通じて共有するのが困難などの問題をかかえていた。この解決にあたったのが、Infomation Technology Group(ITG)だ。ITGは全部門のサービスおよびサポートを提供するほか、IT人材とインフラの共有、各サービスにおけるベストプラクティスの共有と開発を担う。
一番最初にPortal(非SAP)を導入したのは1998年だった。米国社員を対象にEメール、カレンダーが対象だった。2001年に『SAP Enterprise Portals』をはじめて導入。現在は第4世代の5.0で、従来の社内中心からパートナーや顧客に目が向いてきた。今年の第4四半期にバージョン6.0にアップグレード予定となっている |
ITGはこれらの問題に対して『SAP Enterprise Portals 5.0 SP5』で対応した。決め手はSAPおよび非SAPコンテンツとの統合ができる点、Javaや.NETというメジャーなプラットトフォームに対応している点、ブラウザーに依存しない点だ。また、あらかじめ作成された開発しやすいコンポーネントを多く含んでおり、より柔軟なパーソナライズやメンバーシップツールが提供される点なども考慮した。導入にあたっては、従来はいろいろなシステムが個別に存在しパスワードもシステムごとに割り当てられていたこと、すべてのユーザー(代理店)が同一のコンテンツを見て販売がなされていたことを振り返り、これをひとつのポータルにし、パスワードもひとつ、役割に応じたパーソナライズを持つシステムにしていきたいというビジョンを打ち立てた。
下記に示したのが、SAP Portalsのインフラアーキテクチャーとアプリケーションアキテクチャーだが、具体的には配送トラブルのフォローアップ、欠品のフォロー、在庫記録の整理など生産性が向上し、コミュニケーションの円滑化などタイムラグのない情報の提供が可能になったという。特に中川氏は「アメリカ国内では東と西で時差が3時間あるので対応が難しい。ポータルになることによって24時間の対応ができるようになったのは大きい」と話した。
インフラアーキテクチャー |
情報そのものはコーポレートのイントラネット側に置き、ポータルをDMZゾーンのなかに置いている。「従来は、パートナーセグメントなどに情報を置いてシステムを構築し、お客さんに提供する。内部と外部への提供は別々に情報をつくってやらなければいけなかったがそれよりもシンプルになっている」(角田氏)
アプリケーションのアーキテクチャー |
情報ソースはアプリA、Bなど情報のレイヤーとして存在している。それに対してポータルのクライアント側(画面)にはタブ、ページ、パネルがある。ユニフィケーションサーバーは異なる情報ソースと関連付けを行なう、iViewサーバーはページ編集をして情報を提供。ナレッジマネージメントは、WCMで体系化されていない情報を管理する。インデックス関係を管理しているのはTRexだ。
このシステムを販売店が利用する場合、具体的に営業グループが利用する場合に当てはめてみると次のようになるとして(株)日立国際ビジネス コミュニケーションサービス部の中川文彦氏が説明にあたった。
(株)日立国際ビジネス コミュニケーションサービス部の中川文彦氏 |
右が販売店がポータルを利用する流れを示したものだ。販売店にはあらかじめパスワードとIDが与えられており、それを用いてポータルにログインする。するとLDAPサーバーとの間でユーザー認証が行なわれる。そしてEP(Enterprise Portal)上では販売店がログインしたことを知り、EP上にある販売店向けのコンテンツ(KMのインターフェースを通じた製品情報の閲覧や、製品同士の比較、カタログのダウンロード)が利用可能に、またプロジェクションウィザードといった販売ツールが利用可能になる。実際にオーダーをして在庫情報などを見たい場合はEP上にあるiViewを使ってR/3のほうに問い合わせを行なうことが可能だ。そこで注文状況や在庫状況を確認したりできる。
一方で営業グループがポータルを利用する流れが右の図だ。ここでは販売店に対する情報の管理が主な作業となる。たとえば販売店アカウントの追加や削除、製品情報の更新、カタカタログアップロードができる。また、どの代理店がどれくらいの頻度でポータルを利用しているかについての情報が欲しい場合のために、情報表示のアプリもポータルに表示している。
実際にポータル上からR3システムに問い合わせをする流れ。ポータル上にJCOというSAPコネクターが、R/3上にはBAPI(Business API)が必要になる。たとえばこのJCOを使ってポータル上から請求書ナンバーなどをR/3に送ると、BAPIがそれをうけとって処理を行なう。その処理を行なった結果、請求書ナンバーにもつけられたトランザクションデータをポータル上に配信する。
角田氏は「最近、独SAP社では『SAP NetWeaver』をアピールしているが、弊社も注目している。システムは人、情報、プロセスで成り立っており、それらを柔軟に統合して提供するのはSAP NetWeaverだ。既存のシステムがインテグレーションなどで大変になったときには、これを使って統合していける意味でいいコンセプトだ。日立アメリカでは、SAP NetWeaverのなかのEDIに注目して勉強している最中だ」と話した。