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【IDF 2004 Spring Vol.2】 次期モバイルCPU“Dothan”登場目前! 年内には次世代モバイルプラットフォームもリリースへ――7日基調講演より

2004年04月09日 05時53分更新

文● 編集部 内田泰仁

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インテル(株)は7日と8日の2日間、同社のCPUやネットワーク関連などの技術を開発者向けに紹介する技術カンファレンス“インテル・デベロッパ・フォーラム Japan Spring 2004”(以下IDF)を開催した。本稿では、7日の基調講演の3番目のトピックである“モバイル・プラットフォーム”の話題を取り上げる。

米インテル副社長兼モバイル・プラットフォーム事業本部長のアナンド・チャンドラシーカ氏

この日発表になったモバイルCPUやDothanの技術サマリー
7日の基調講演の最後に登壇した米インテル副社長兼モバイル・プラットフォーム事業本部長のアナンド・チャンドラシーカ(Anand Chandrasekher)氏は、ノートパソコン向け製品/技術の話題を中心とする“モバイル・プラットフォーム”の解説を行なった。チャンドラシーカ氏はまず冒頭に、ノートパソコンやPDAと米アドビシステムズ社のソフトウェアを組み合わせた社内業務システム、米国・ハワイで開催され、大会運営やインターネットでの大会の模様の放送(のべ150万人が観戦したという)にインテルのさまざま製品、技術が用いられた“鉄人レース”といった事例を紹介。モバイルコンピューティングの進化には、ハードウェアの進化のみならずソフトウェアの充実と成長も欠かせないと述べた。それを踏まえ、同社は、消費者とビジネス向けに、ソフトウェア・エコシステムを拡大し、“モバイル対応”のプログラム開発や、そのために必要なツール類の提供、同社によるロゴプログラムへの開発者参加の呼びかけといった取り組みを行なっているという。

また、ハードウェア側の技術革新によるモバイル市場の成長促進の取り組みも継続して行なっていくものとして、直近のモバイルCPU、ごく近い将来登場するモバイルCPU、さらに、モバイル用途のパソコンに欠かせない無線LAN技術の強化について紹介した。まず、直近に登場する新しいCPUとしてはこの日に以下のCPUが発表されており、基調講演内でも簡単にラインナップが紹介された。



『低電圧版 インテル Pentium M プロセッサ 1.30GHz』
2次キャッシュ1MB、熱設計電力12W、動作電圧1.180V、1000個受注時価格3万1030円
『超低電圧版 インテル Pentium M プロセッサ 1.10GHz』
2次キャッシュ1MB、熱設計電力7W、動作電圧1.004V、1000個受注時価格2万8630円
『インテル Celeron M プロセッサ 1.40GHz』
2次キャッシュ512KB、熱設計電力24.5W、動作電圧1.356V、1000個受注時価格1万4640円
『超低電圧版 インテル Celeron M プロセッサ 900MHz』
2次キャッシュ512KB、熱設計電力7W、動作電圧1.004V、1000個受注時価格1万7590円

なお、今回発表されたCPUはいずれも400MHzシステム・バスを搭載し、0.13μmプロセスにて製造される。

この製品に続く“次世代”のモバイル向けCPUとして紹介されたのがコードネーム“Dothan”と呼ばれるCPUだ。性能向上とレイテンシー削減を目指すというDothanは、強化されたデータ・プリフェッチャーとレジスター・アクセスなどの性能を持つという。最初の製品は第2四半期に投入され、50製品程度の搭載ノートパソコンが登場する見込みだという。

次期Centrino“Sonoma”の構成と搭載される技術の概要。CPUはFSB533MHz版のDothan、チップセットは“Alviso”+ICH6-M、無線LANコントローラーはIEEE 802.11a/b/g対応でBluetooth機能も持つ“Calexico 2”

また、Dothanの登場に続いて、CPU+チップセット+無線LAN機能の3つで構成される『インテル Centrino モバイルプラットフォーム』の強化も行なわれる。

“Calexico 2”のWindows用コンソール。アクセスポイントがサポートする規格や、電波強度、接続のオン/オフなどの情報や操作が1ウィンドウに集約されている
コードネーム“Sonoma”と呼ばれる次期モバイルプラットフォームは、第2世代のDothanがサポートする533MHzのFSBに対応したチップセット、コードネーム“Alviso”が採用される。Alvisoでは、内蔵グラフィックスコントローラーにディスプレーの電力を制御する“インテル・ディスプレイ・パワー・セービング・テクノロジ2.0”および“アンビエント・ライト・センス”が搭載されるほか、内蔵オーディオ機能にも低電力機能が追加されるなど、省電力化が進む。さらに、AlvisoのICHとして使用されるICH6-Mでは、シリアルATAインターフェース、8ポートのUSB 2.0のほか、次世代PCIバス技術の“PCI Express”にも対応し、ノートパソコン向けのPCI Expressインターフェースである“ExpressCardテクノロジ”がサポートされるという。また、無線LAN機能部分では、コードネーム“Calexico 2”というネットワークコントローラーが採用され、現在市場に出回っているIEEE 802.11 a/b/gの3規格いずれにも対応するようになり、Bluetoothも統合・装備される。Calexico 2では、ハードウェア面だけでなくソフトウェアにも改良が加えられ、Windows上のコンソールが刷新されるという。



Dothan以降の製品に適用する新しい命名規則の解説

また同社では、Dothanの立ち上げ以降、CPUの製品名表記を、これまで使用している“プロセッサー名称+動作周波数”というの表記から、3桁からなる“プロセッサ・ナンバ”を付記するように変更するという。チャンドラシーカ氏の説明によると、Pentium Mシリーズは“7xx”、Pentium 4は“5xx”、CeleronおよびCeleron Mは“3xx”という表記になり(xxは任意の数字)、この“プロセッサ・ナンバ”は、採用するアーキテクチャーの種類、動作周波数、FSB、キャッシュ容量、搭載されるインテルのテクノロジーといった要素から決定されるという。

基調講演終了後、プレス向けにチャンドラシーカ氏による質疑応答のセッションが開催されたが、こちらの席ではこの“プロセッサ・ナンバ”に関する質問が多数出ている。氏の補足説明によると、“プロセッサ・ナンバ”の下2桁の決定方法は、単純にパフォーマンスが高ければ大きな値が割り当てられるわけでなく、前述の要素を総合した結果割り当てられるものであるという。そのため、「(“プロセッサ・ナンバ”は)下2桁の数字が大きいほどベターな製品」ということになり、数字の大小によってトータルとしての製品性能の上下を一目で知ることができるのだという。“プロセッサ・ナンバ”の決定に至る評価内容は公表するが、ナンバリングについては同社内の評価にて決定し、社外の第3者的機関による決定といった方法はとらないという。なお、従来の製品に関しては、これまでどおりの製品表記法を取り、“プロセッサ・ナンバ”による製品表記はあくまでもDothan以降の製品が対象になるものだという。ちなみに、“7xx”“5xx”“3xx”という数字が採用された経緯については、「私は行動心理学者ではないから明確な答えはわからないが(笑)」としながらも、準備段階でのさまざまな調査の結果を分析した結果、“7”“5”“3”を頭に付けるのが評判がよかったからだとしている。

“オン・ザ・ゴー”“バーチャル・オフィス”“エンターテイメント”
2005年向けデザインコンセプト“Florence”の3タイプ

Dothan、Sonomaの解説に続いては、近い将来のパソコンのデザイン・コンセプトが紹介された。今回紹介されたコンセプトモデル“Florence”は、2005年の実現を想定したもので、いずれもノートパソコンスタイルがベースとなっている。登場したコンセプトモデルは3種類で、用途とディスプレーのサイズがそれぞれ異なっている。

オン・ザ・ゴー
12.1インチ液晶ディスプレーを搭載するサブノートタイプ。キーボードを取り外すもしくはディスプレー部を裏表回転させて蓋を閉じることで、タブレットスタイルでも使用できる
バーチャル・オフィス
15インチ液晶ディスプレーと、携帯電話スタイルのIP電話端末を搭載する、薄型軽量のオールインワンタイプ。移動先でもオフィスで仕事をしているときと同じ作業が行なえる“移動オフィス”を狙ったモデル
エンターテイメント
2月の“デジタルホーム”プレスセミナーでも紹介されたもので、17インチ液晶ディスプレーと高性能内蔵スピーカーを搭載する大型タイプ。家庭内でのパソコンの自由な移動を考慮したマシンで、キーボードを格納すれば、ハンドルを持って持ち運ぶことが可能。キーボード、マウスはすべて無線接続で、Windows XP Media Center Edition向けのリモコンを標準装備

このスライドの下半分に図解されているのがサブディスプレー“EMA”
これらのデザインコンセプトモデルには、ノートパソコン向けの新しいエクステンションとして、液晶ディスプレー背面、つまり閉じた状態でアクセスおよび視認できる蓋の部分に取り付けられるサブディスプレー“EMA(Extended Mobile Access)”が取り付けられている。このサブディスプレーには、時刻、バッテリー残量、メールの受信数、無線LANの信号強度、無線WANの信号強度(将来ノートパソコンに搭載されるであろう“WiMAX”を睨んだもの)、警告といったアイコンが表示されるほか、テキスト/グラフィックスを表示する領域も確保されている。蓋を閉じたままでも、このEMAによりかなりの情報が得られるということになる。



家庭向けパソコン市場においては今後Centrino搭載製品の比重を上げていく戦略を取り、2004年には50%以上をCentrino製品にする目標だという販売店における販売戦略

一見デスクトップパソコンのように見える“エンターテイメント”も含め、いずれもインテル Centrino モバイル・テクノロジをベースとしたものとなっていることからもわかるように、同社は今後、家庭向けパソコンにおけるCentrino搭載製品の比率を上げていくという戦略を取るという。現状、Celeron搭載製品を除く家庭向けパソコンのうち、インテル Centrino モバイル・テクノロジを搭載した製品の割合は、ワールドワイドで30%強だというが(残りはPentium 4ベースの非Centrinoプラットフォーム製品)、今年はこれを50%以上に引き上げるとしている。地域別に見ていくと、北米市場はややCentrino当再生品へのシフトは遅れ気味だが、日本はすでにCentrino搭載製品の比率が50%に迫っており、ついでアジア-太平洋地域、ヨーロッパがこの動きにシフトしてきているという。

また、チャンドラシーカ氏は、オフィスに向けたコンピューティング技術のビジョンの中でも、コラボレーション、セキュリティー、マネージャビリティーに加えて、モビリティーを重要な要素として挙げている。基調講演中でのデモでは、プレゼンテーション資料を用いた情報交換を含むテレビ電話機能が紹介されたが、無線通信技術の進化やモバイルプラットフォームのパフォーマンス向上によるモビリティーの拡大によってコラボレーションの機会や方法も広がっていくという将来の展開が示され、モバイルによる生産性の向上と“デジタルオフィス”の促進を図っていくとした。

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