元祖エンスージアスト向けCPU“Athlon 64FX”。昨年9月24日にアスロン64シリーズの親分として733ドル(9万1625円)という高価格で販売され、標準CPUとサーバー用CPUの間に来る新しいプロダクトゾーンを提案した。その後、インテルがまさかの対抗馬、Pentium 4 Extreme Edition 3.2GHzをリリースしたうえ2月には、上位モデルの3.4GHz版を投入。エンスー向けの元祖、FXのほうは少し間が空いてしまったが、3月19日にいよいよ第二弾となるFX53をリリース、秋葉原でもすでに予約受け付けが始まっている
錯綜するハイエンド
1月のAthlon 64-3400+でAMDが一歩リードした最速CPU争いだが、2月のPrescottコア、およびNorthwoodとExtreme Editionに3.4GHz版の登場で事態が錯綜してきた。Vol.23で述べたように、Prescottコアは1次、2次キャッシュを大幅に増大して性能向上が期待されたが、レイテンシが増大したために、結果的には多くのテストでNorthwoodコアと同程度の性能となっている。
そのため、インテル陣営の最速選手はPentium 4-3.4GHzのExtreme Editionとなった。それに対してのAMDの解答が、今回のFX-53ということになる。まずは、ここまでの両者の性能、価格、ラインナップ上の位置づけについてまとめておこう。
- | 価格帯 | P4 | Athlon |
別格最上位 | (両者未発売) | 3.4EE | FX-53 |
別格 | 8万(FX)、10万(EE) | 3.2EE | FX-51 |
最上位 | 4万5000円前後 | 3.4E、3.4 | 3400+ |
上位 | 3万円前後 | 3.2E、3.2 | 3200+ |
お手頃 | 2万5000円前後 | 3E、3 | 3000+ |
前回(Vol.23)はNorthwoodとPrescottの性能差について検証したので、今回は、新たに入手したPentium 4-3.4EGHz(Prescott)の計測結果も含め、両社のハイエンド製品の特徴を明らかにしていく。
さすがFX、なるほどEE
まず注目は、FX53と3.4EEの対決だ。3Dでは両者のワンツーが多く、エンスージアストゲーマー向けCPUという触れ込みを確認した形だ。具体的には3DMark 2001・3DMark 2003CPU・Commanche・Final Fantaxy XI・Unreal TournamentでFX53がトップ、3DMark 03・QuakeIII・x2 rollingで3.4EEがトップ。本コーナーでのベンチではFX53のほうが勝ちが少し多いが、この差では勝敗は微妙なところ。
一方、動画エンコードにおいては、今回からテストに採用しているTMPGEncの最新版「3」は、チューニングの結果なのか、メインメモリー性能に大きく影響されるようになり、P4系の圧勝となった。特にSSE3対応の効果は大きく、3.4E、3.2EがTMPGEncではワンツーフィニッシュとなっている。Windows Media Videoによる圧縮でもP4系が大きくリード。こちらはExtreme Editionが最速となった。いずれもAthlon 64FXは5位にも入れない。
同じエンコードでも、Windows Media Audioでの音声圧縮や、汎用高性能可逆圧縮ソフトDGCAでの圧縮時間はAthlon系が圧倒的に早い。トップはFX53、次はFX51と3400+という図式で、P4系は3位、4位以下に下がる。
CPUの演算性能のテストでは、一番純粋なSuperπでAthlon 64FX53/51がトップをさらって強さを見せたが、マルチスレッドでのテスト項目を含むPCMark 04ではP4系が上位を独占。CG作成テストのCinebenchでは、レンダリングはP4、シェーディングはAthlonという結果だ。
エンコードはビデオならP4、それ以外ならAthlon。CPUパワーベンチは用途によって勝ったり負けたり。こうなってくると、○○ならアスロン、△△ならP4みたいな切り分けも困難なのが実情だ。ともあれ、アスロン64の中ではFXが、P4の中では(TMPGEnc 3を除けば)EEが、最高性能を発揮しているのは確かだ。