説明会の出席者。左から、NTTフォトニクス研究所の長瀬氏、NTTの第三部門チーフプロデューサの山崎氏、NTT-ATの大崎氏 |
日本電信電話(株)(NTT)とエヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(株)(NTT-AT)は3日、東京・大手町の同社広報室で記者説明会を開催し、NTTフォトニクス研究所とNTTマイクロシステムインテグレーション研究所が培った技術を応用して、従来より短時間・低コストに工事現場で施工できる新たな通信用光コネクターの組立技術を開発したと発表した。この技術は2003年7月に発足したNTTの“総合プロデュース機能”(※1)によって、NTT-ATから製品の製造・出荷・販売が行なわれる。販売開始は3月10日予定で、量産時の予想実売価格は施工に必要な機材と消耗品一式を揃えたツールキットが30万円程度、消耗品はコネクター1本分で約40円程度になる。NTT-ATでは初年度(2004年度)の販売目標を6000万円、2年目以降1億円、2億円、2007年度には3億6000万円と見込んでいる。
※1 総合プロデュース機能 持ち株会社であるNTTが、NTT研究所で研究中の技術のうち事業化が有望なものを選別して、NTT内に“プロデューサー”“ディレクター”を設定して、NTTグループ内の関連企業や他社との協業を図りつつ事業化を進めていく事業形態。説明会には、NTTの第三部門チーフプロデューサ デバイスプロデュースチームビジネスクリエーションプロデュースチーム兼務の山崎王義(やまさききみよし)氏、NTTフォトニクス研究所 光波回路実装研究グループグループリーダー主幹研究員で光学博士の長瀬 亮(ながせりょう)氏、NTT-ATの先端技術事業本部ファイバインテグレーション事業部事業部長理事の大崎孝明(おおさきたかあき)氏らが出席し、デモンストレーションを交えて新技術の説明を行なった。
光コネクターを装着する新技術の概要 |
組立技術の基礎となるのは、光ファイバーケーブルを機器に接続するための光コネクターを取り付ける“フェルール(※2)”と呼ばれる部品を接着し、フェルールの端面を精密に研磨する技術。従来は接着にエポキシ系の接着剤を採用するため、脱泡工程や高温(約100度)で10~30分程度の接着待ち時間が必要となり、低コストで行なうには工場での大量生産を行なうか、高い取り付け技術を持つ作業員があらかじめ完成した高価なコネクターを現場に持ち込んで作業を行なう必要があったという。
※2 フェルール 光コネクターでは、光ファイバー同士をフェルールと呼ばれる心棒の中心に固定して、互いの端面を研磨し、つき合せることで接続する。フェルールの中心に光ファイバーを固定し、光ファイバーの端面を真円に研磨するなど、従来は高度な技術が必要とされていた光ファイバー(左)とフェルール(中央下)、目薬容器のようなものに入った紫色の液体が瞬間接着剤(主剤)。フェルールに固定した上で黄色のコネクターに接続する | 長瀬氏が光コネクターの固定を実演しているところ |
新たに開発した組立技術では、硬化剤を利用する瞬間接着剤での固定化(1分程度)と、携帯が可能で単3電池4本で駆動する小型の高速研磨機の開発により、作業時間の短縮、省コスト化、高い取り付け技術を持たない作業員でも取り付け可能になる、といったメリットがあるという。
特に、誰でも同じ条件で繰り返し作業が行なえるように、接着剤を1回分ずつに小分けした使い捨て容器に入れること、主剤をフェルールに塗布する際も付けすぎや不足をなくすために、接着剤が一定量のみ溜まる塗布容器/固定器具を開発し、そこに硬化剤を塗ったファイバーを装着することで接着・固定化が単純な作業で行なえるとして、実際にデモンストレーションも披露した。
小型研磨機は、粗研磨/凸球面加工/超仕上げ(微細研磨)の3工程を研磨シートを取り換えることで行ない、研磨シートは1回ずつの使い捨てとなる。これは「研磨シートの全面を広く使うことで作業時間を短縮化していることと、現場では同じシートを使って何回作業したか記録・管理するのが難しく、品質に差が出てしまう可能性があるので、使い捨てにした」(長瀬氏)ため。3工程にかかる時間は約90秒程度で、反射減衰量は50dB以上の“低反射タイプ”に仕上げることができるという。
なお、現在はNTTが主体となって採用している小型光コネクター“MU形”のみに利用できる技術だが、今後はより普及しているSC形にも応用するべく開発を進めるとしている。