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インテル、“ホームデジタル”に関するプレスセミナーを開催――米インテルCEOが来日

2004年02月25日 02時31分更新

文● 編集部 内田泰仁

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インテル(株)は24日、デジタル技術やデジタル・コンテンツの家庭への浸透の促進や、家庭での利用スタイルなどを説明するプレス向け説明会“デジタルホーム プレスセミナー”を都内で開催し、米インテル社の最高経営責任者、クレイグ・R・バレット(Craig R. Barrett)氏が講演を行なった。

米インテル社の最高経営責任者、クレイグ・R・バレット氏

バレット氏はまず、パソコンの進化の歴史を解説し、コンピューターのパーソナル化を発端に、さまざまなキラーアプリケーションの誕生と市場の拡大、そして近年のインターネットの普及、家電製品とパソコンの接続性の拡大、ワイヤレス化の加速などといったこれまでの流れを述べた。さらに、今後もパソコンは、ダイナミックに変容する技術に基づいて、新しい能力やアプリケーション、周辺機器、ビジネスモデルを生み出し、これらの進化・変革は“家庭”から始まるとしているが、この変革に向けて「日本はとても興味深いポジションにある」と述べた。

世界各国のブロードバンド接続の月額使用量の比較グラフ。日韓の安さが目立つ。その一方で、日本におけるインターネットの使用目的は、メール、ウェブブラウズが圧倒的で、動画配信の利用やゲームといったブロードバンドを生かした用途に使われる率は米国の半分以下だという

バレット氏によると、家庭内にデジタル技術やデジタル・コンテンツがより浸透していく“デジタルホーム”においては、エンターテインメント、コミュニケーション、学習、さまざまな体験の4つが実現されるという。そのためには、コンピューターと家電、コンテンツの融合が進み、家電とパソコンの相互接続性、ブロードバンドインターネット接続、デジタル・コンテンツといった“デジタルホーム”の実現に不可欠な基盤が整備され、家庭に置く際にマッチするデザインやスタイルが生まれることが必要だとしている。バレット氏は、開発・製造の観点で見ると、「技術革新や工業デザインの面で日本(の企業)は如何なくその実力を発揮」し、さらに、ブロードバンド接続の価格については世界でトップクラスの低コスト化を実現し、非常に優れたポジションにいるとしている。しかし、ブロードバンドを活用した動画の視聴やオンラインゲームといったジャンルでのインターネット利用の割合は、日本は米国の半分以下にとどまっているという例を挙げ、コンテンツ・ビジネスの面では、その高い技術とインフラを有効に使い切っているとは言えないと見ており、「日本はこの分野(コンテンツ・ビジネス)では、世界のリーダーにはなれていない」と指摘した。

インテルの代表取締役共同社長、吉田和正氏(株)スクウェア・エニックスの代表取締役社長、和田洋一氏

ディズニーがこの春にサービス開始を予定している子供向けオンラインゲーム『トゥーンタウン・オンライン』も紹介された
セミナーの中では、すでに現時点での技術で実現しているデジタル技術やデジタル・コンテンツ、ビジネスモデルの例として、無線LAN、音楽や映像の配信、オンラインゲームをデモを交えて紹介された。このデモの途中に登壇したインテルの代表取締役共同社長、吉田和正氏と(株)スクウェア・エニックスの代表取締役社長、和田洋一氏は、今後のコンテンツ開発における技術面での協力や、パソコン以外の分野での展開に向けた協力を表明しており、バレット氏は、ハードウェアメーカーだけでなく、コンテンツプロバイダーも含めた業界の協力体制の重要性を強調している。そして、これらを踏まえて進化させていった結果、「デジタル・コンテンツにいつでもどこでもどの機器からでもアクセスできる」ような“デジタルホーム”環境が実現できるとした。



“バイオ”と『RoomLink』を紹介したソニー(株)のIT&モバイルソリューションズネットワークカンパニーシニアバイスプレジデント、木村敬二氏“バイオ”に保存されている映像を『RoomLink』を介して大画面テレビで再生するというデモが行なわれた

インテルは、“デジタルホーム”を実現するためには、オーディオや映像、イメージを記録/再生するための方式や、ネットワークを介してやり取りするための信号プロトコルの標準化や、どの機器でも最低限実現可能なインターフェースの規格化など、標準化された技術デザインの確立にも力を入れており、その一環として、相互接続性のある製品開発の促進を目的とした業界団体“デジタルホーム・ワーキング・グループ(DHWG)”の設立と活動にも積極的に貢献しているという。DHWGは、インテルのほか、ソニー、松下電器産業、シャープ、NEC、富士通、ケンウッドなど、世界の大手パソコン、家電、携帯電話メーカー17社によって設立された団体で、現在は100社を超える企業が参加しているという。バレット氏は、この団体の活動の成果として、2004年第2四半期には技術デザインのガイドラインをリリースし、2004年後半には、このガイドラインに準拠した製品が登場する予定だと述べている。なお、ここで定める技術的なガイドラインは、「ベースとなるスタンダード」であるとしており、このガイドラインに沿って実際に製品を作るメーカーは、ベースとなる要件をすべて満たしつつ、独自の拡張や革新的な要素を盛り込むことで、他社製品との差別化を図ることが可能だという。

キーボードなどを格納するとアタッシュケースになる“Florence”。無線でパソコン本体側と接続されるキーボードやIPフォンを装備するビデオデッキのようなルックスの“エンターテイメントPC”

米マイクロソフト社副社長の古川享氏は、“エンターテイメントPC”に搭載されるWindows XP Media Center Edition 2004の紹介を行なった
また、この日のセミナーで、近い将来に向けた新しい技術を盛り込んだ製品として、インテルからコード名“Florence”と呼ばれるパソコンや、リビングに違和感なく設置できるパソコン“エンターテイメントPC”、大画面テレビを低コストで製造できるシリコン技術“LCOS(Liquid Crystal on Silicon)”技術が紹介された。“Florence”は、収納時の外観はアタッシュケースのような状態。使用時はノートパソコンや液晶一体型パソコンのように広げて利用するが、Bluetoothで接続されるキーボードやIPフォンを搭載する。“エンターテイメントPC”は、ビデオレコーダーなどの家電AV機器のようなスタイルの省スペース型パソコンで、OSにWindows XP Media Center Edition 2004を採用することでリモコンでの操作を中心とした使い方を採用する。“LCOS”技術は、インテルが1月に発表した大画面テレビや透過投影型テレビなどの投射型ディスプレーに映像を映し出すマイクロディスプレイの製造に用いる技術で、低コストで高画質の映像を表示できる大型テレビの製造が可能だという。“LCOS”を採用した大画面テレビは、2000ドル(約22万円)前後で年内にも登場する見込みだとしている。なお、セミナー終了後の質疑応答の中で、“LCOS”技術による事業規模に関する質問を受けたバレット氏は、「数億ドル程度と(インテルの事業規模としては)決して大きくはないが、面白いものになるだろう」と述べると同時に、さらに大きな事業としていくためには、信頼性や長時間使用後の検証などを積み重ねる必要があると述べた。

セミナーの中では、“デジタル・コンテンツの知的財産保護”も今後の重要なテーマと位置づけている。同社は、コンテンツ保護技術の確立と標準化も重要な課題としており(特に日本のデジタル放送などに見られる“コピーワンス”への対処は重要視しているという)、この点については、DHWGでも現在なお議論中だという。バレット氏は、著作権保護されたコンテンツをユーザーが楽しめるような、新しいビジネスモデルによる事業展開が求められているという考えを示した。さらに、質疑応答の中では、「(規制が)パソコンのアーキテクチャー内部にまで及ぶような議論にまで発展し、一時は法案が議会を通過するかというところまで進んだ」という米国での著作権保護に関する周辺事情を紹介。保護技術の議論については、技術の専門家が牽引すべきであり、ビジネスモデルに見合う形で実現する必要があるとした。



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