サン・マイクロシステムズ(株)は16日、チップ・マルチスレッディング技術を初めて実装したUltraSPARC IVを搭載したミッドレンジ/ハイエンドサーバー“Sun Fire エンタープライズサーバ”5製品と、Opteronを搭載した1Uラックマウントタイプのエントリーサーバー『Sun Fire V20z』を発表した。価格は、“Sun Fire エンタープライズサーバ”の最上位機種『Sun Fire E25K』の最小構成価格が9453万6000円、『Sun Fire V20z』はオープンプライスで、最小構成価格は30万円前後。
『Sun Fire E2900』 | 『Sun Fire E4900』 | |
『Sun Fire E6900』 | 『Sun Fire E20K/E25K』 |
UltraSPARC IV |
“Sun Fire エンタープライズサーバ”の製品ラインナップは5製品で、搭載可能CPU数/メモリー容量/HDD容量/PCIスロット数と最小構成価格(※1)、出荷開始時期は以下のとおり。
- 『Sun Fire E2900』
- 4~12プロセッサー/最大96GB(システムあたり)/73.4GB×2、1425万5000円、5月上旬予定
- 『Sun Fire E4900』
- 4~12プロセッサー/最大96GB(システムあたり)/外部ディスクのみ、2679万8000円、4月上旬予定
- 『Sun Fire E6900』
- 4~24プロセッサー/最大192GB(ドメインあたり)/外部ディスクのみ、3399万8000円、4月上旬予定
- 『Sun Fire E20K』
- 4~36プロセッサー/最大288GB(ドメインあたり)/外部ディスクのみ、6789万6000円、5月上旬予定
- 『Sun Fire E25K』
- 4~72プロセッサー/最大576GB(ドメインあたり)/外部ディスクのみ、9453万6000円、5月上旬予定
※1 各製品の最小構成はいずれも、CPUがUltraSPARC IV-1.05GHz×4、メモリー16GB、Solarisサーバーライセンス。『Sun Fire E2900』のみこれらに加えて73.4GBのHDD×2も含む。
搭載可能なCPUはUltraSPARC IV-1.05GHzおよび1.2GHz、対応OSはSolaris 8および9。既存のサン製サーバー上で利用しているアプリケーションを再コンパイルすることなく今回の新製品上で利用できるため、既存のソフトウェア資産を継承可能だとしている。また、障害の自動検出や障害発生部位の分離および再配置を行なう“フォールト・マネージメント・テクノロジー”が新たに追加されたほか、障害の早期発見、予兆検出に利用できるリモートモニタリングツール『Sun Remote Services NetConnect』が、標準でプレインストールとなった。さらに、ひとつのシステムを随時複数のパーティションに分割し、おのおののパーティションで別のアプリケーションを動かす“動的物理分割機能(ダイナミック・システム・ドメイン)”や、システム稼働中に主要なコンポーネントのアップグレードが可能な“動的再構成(ダイナミック・リコンフィグレーション)”など、従来製品が装備していた機能も引き続き継承する。
なお、今回の新製品の発表に合わせて、同社では、既存製品や競合他社製品からの置き換えプログラム“Sun UAP アップグレード下取りプログラム”を展開する。このプログラムを適用した場合、新規導入製品の最大10%の価格で下取りを行なうという。また、日本ヒューレット・パッカードの『hp superdome 9000』や日本アイ・ビー・エムの『IBM pSeries 670/680/690』などの製品からのアップグレードの場合には、16日より半年間の期間限定で、通常の2倍にあたる新規導入製品の最大20%の下取り金額での下取りを行なうとしている。
『Sun Fire V20z』 |
1Uラックマウントタイプのエントリーサーバー『Sun Fire V20z』は、2003年11月に発表された米サン・マイクロシステムズ社と米AMD社の戦略提携に基づく第1弾製品で、32bit/64bit両モードで動作する“AMD Opteron 200”シリーズを最大2個搭載できる。本機は、x86ベースのサーバー市場を、32bitアプリケーションとの互換性を持つ64bit CPUであるAMD Opteronを採用することにより現状の32bit環境からさらに高性能な64bit環境への移行を推進することを狙った製品で、同社は、ハイパフォーマンスコンピューティングやグリッドコンピューティングをはじめ、既存のx86ベースのインフラ環境、小規模データベースをターゲットとしたビジネスを展開し、さらには、エンタープライズ市場におけるx86アーキテクチャーの本格利用を促していくという。
搭載可能なCPUはAMD Opteron 242(動作周波数:1.6GHz)/244(1.8GHz)/248(2.2GHz)で、搭載可能数は1~2基、メモリーは1~16GB(最大8GB/プロセッサー)、内蔵HDDは36~146GB、PCI-Xスロットは2基。メインのCPUのほかに、システム管理専用のサービスプロセッサーとサービスプロセッサー専用のEthernetポート×2を標準で装備し、遠隔地からのシステム監視や制御機能、管理専用のネットワーク構築やネットワークに障害が発生した場合のシステム監視/診断といった機能を提供する。このサービスプロセッサーは、本体とは別の独立したバッテリーを持っているため、OSがダウンした場合やシステム本体への電源供給が失われた場合にも、継続してシステムの監視や診断を遠隔地から行なうことが可能。 対応OSは、Solaris 9 x86版(32bit)、Red Hat Enterprise Server(32bit)、Red Hat Enterprise Server for AMD64(64bit)、SUSE Linux Enterprise Server 8 for AMD64(64bit)で、OSはすべて別売り。なお、Solaris 9 x86版の64bit対応は2004年後半を予定しているという。
本機の価格はオープンプライス。最小構成(AMD Opteron 242、1GBメモリー、36.4GB Ultra320 SCSI HDD×1、CD-ROM&FDコンボドライブ)で30万円前後の製品の購入を検討している顧客をターゲットとして製品をセールするとしている。また、今回の製品発表に合わせて、競合他社製品からの置き換えプログラム“Sun UAP アップグレード下取りプログラム”を展開し、新製品購入時には最大約4万円で下取りを行なうという。さらに、サンおよびサンの会員制開発者支援プログラム“Sun Developer Connection”に参加しているチャネルパートナーを通じて、『Sun Fire V20z』とSolaris 9 x86版、C/C++コンパイラーを含む開発ツール群、Java Enterprise System(Solaris x86版用)をバンドルした開発者限定プロモーション製品の提供を行なうという。1年間の使用料は16万8000円から。64bit対応のSolaris 9 x86版、64bit版開発ツール、Linux版のJava Enterprise Systemも今後提供予定。
発表会場に展示されていた新製品。写真左より、『Sun Fire E6900』『Sun Fire E20K』『Sun Fire V20z』 |
本日の発表に併せ、同社は都内にて記者発表会を開催し、同社代表取締役社長のダン・ミラー(Dan Miller)氏、米サン・マイクロシステムズのエンタープライズ・システムズ・プロダクツ、マーケティング担当バイスプレジデントのスティーブ・キャンベル(Steve Campbell)氏、同社プロダクト&ソリューション・マーケティング本部本部長の山本恭典氏が登壇した。
代表取締役社長のダン・ミラー氏 | 今回発表された製品の位置付けの違い。“Sun Fire エンタープライズサーバ”はスケールアップを、『Sun Fire V20z』はスケールアウトをもたらすとしている |
まずはじめに登壇したダン・ミラー氏は、今回発表した製品を「複雑さとコストの削減を推し進める製品」と位置付け、サーバー自体のスループットを向上させる“スケールアップ”を図った製品が“Sun Fire エンタープライズサーバ”、サーバーを並列利用することでパフォーマンスの向上を図る“スケールアウト”を狙った製品が『Sun Fire V20z』であると、製品の性質の違いを述べた。また、UltraSPARC IIIベースのサーバーにUltraSPARC IVを増設、混在させることが可能なことに触れ、「これにより、完璧な投資保護が可能になる」とした。さらに、サーバーCPUのアップグレードやロードマップ展開については、「5年間、10年間の研究開発の賜物」だと述べるUltraSPARC IVが示す完全互換性やシステムを止めることのないアップグレードを実現していることにより、競合他社のようにロードマップが不確実で将来における投資保護に疑問が残ることはなく、顧客が困ることのないようにしているとした。
米サン・マイクロシステムズ社、エンタープライズ・システムズ・プロダクツ、マーケティング担当バイスプレジデントのスティーブ・キャンベル氏 | サンと競合他社の“投資の保護”の状況の違いを示すスライド | 『Sun Fire V20z』と競合する他社のx86サーバーとの比較 |
次に壇上に立ったスティーブ・キャンベル氏は、今回の製品の概要を説明。その中で、今回発表した製品は、「業界のルールを作り変えていく製品といえる」と述べ、特に、プロセッサー移行後の再コンパイルが不要な点、筐体を変更することなくUltraSPARC IIIベースからUltraSPARC IVベースに移行でき、しかもCPUのIIIとIVの混在が可能なこと、システムをダウンすることなくボード追加/交換が可能なホット・アップグレードをサポートすることなど、業界をリードすると自信を示している“投資の保護”の面での優位性を強調した。また、AMD Opteronを搭載する製品の展開については、今年第2四半期には4CPU製品をリリースし、将来的には8CPUシステム、ブレードサーバー、ワークステーションといったラインナップも検討していくとした。さらに、次期OSのSolaris 10の話題に若干触れ、ミリタリーレベルの高いセキュリティー、CPUやメモリーといったハードウェアの不具合を予測して切断し、システム全体を止めることなく自己修復する機能などを実装すると述べた。
プロダクト&ソリューション・マーケティング本部本部長の山本恭典氏 | “スループット”と“パフォーマンス”の違いの例 |
最後に登壇した山本恭典氏は、64bitサーバーの必要性、“Sun Fire エンタープライズサーバ”で目指す“スループットコンピューティング”やスケールアップ/スケールアウトの説明、日本市場での展開などについて説明を行なった。まず、サーバーの64bit化については、高度な64bitアプリケーションの実行や、64bit/32bitアプリケーションの並行実行、従来以上の数の32bitアプリケーションの同時実行といったことを行なうためには、高性能な64bit CPUと、4GB超の物理メモリーが必要であるとした。また、「同じ価格で2倍の性能が出る、同じ性能が半分の価格で出せる製品」という“Sun Fire エンタープライズサーバ”は、高いスループット(氏は解説の中で、スループットとは、処理系の数×稼働率×パフォーマンスである、と定義している)を実現する製品だと述べている。