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OSDL、今年の方針とLinuxカーネル2.6の概要を説明

2004年02月05日 22時59分更新

文● 編集部 小板謙次

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OSDL(Open Source Development Labs)ジャパンは4日、都内にてOSDLの今年の目標と昨年末に発表となったLinuxカーネル2.6の概要説明を行なった。ラボディレクタの高澤真治氏は、「OSDLとしては、今年はLinuxの普及を加速させるため“Center-of-gravity”ということをミッションステートメントとしている」と話し、そのためには従来の開発コミュニティーだけではなくISV(Independennt Software Vender)、教育やトレーニングといった分野に関する情報も集め、コミュニティーや独自のワーキンググループにフィードバックしていく仕組みを作っていると話した。また、先日発表された日本電信電話(株)のOSDLメンバー参加決定のニュースについて触れ、「横須賀、武蔵野の研究所の方々がOSDLの活動に大変興味をもっていただいた。これで参加企業は35社になった。先日も中国のBeijing Co-Create Open Source Software社が参加を表明したが、今後はもっとワールドワイドに企業を増やしていきた」と述べた。

ラボディレクタの高澤真治氏(左)と技術スタッフの佐久間純一氏(右)

Linuxカーネル2.6について高澤氏は「Andrew Morton(アンドリュー・モートン)氏がカーネル2.6の担当になる前、Linus Torvalds(リーナス・トーバルズ)氏のメンテナンスチームがエンタープライズ機能の整理を行なっており、今回のカーネル2.6は主に拡張性やパフォーマンスに関する実装・改良が行なわれている。マルチメディアに関する機能も入っているが、一番の変更点は高パフォーマンスと拡張性ということになる」と全体的な特徴について紹介。概要説明は技術スタッフの佐久間純一氏によって行なわれた。佐久間氏はパフォーマンスとスケーラビリティーの改善、レスポンスとユーザビリティーの改善という2点に大別して解説した。

スケーラビリティーとパフォーマンスという観点では、以下の点がポイントと紹介された。

・NUMA(Non-Uniform Memory Access)のサポート
・O(1)スケジューラ
・Linux NFS
・IPsecサポート
・32ビットハードウェア上で16TBまでファイルシステムサポート
・32ビットシステムで64GBのメモリーサポート
・4095のメジャーデバイスサポート
・スループットの向上

佐久間氏はスケジューラーに関する改善は、かなり重要な点だとして次のように説明した。「従来は、スケジューリングする対象が増えれば増えるほど手間と時間がかかる仕組みとなっていた。今回は一定の負荷以上がかからないような新しいロジックでスケジューリングを行っている。これによって大規模なシステム上でLinuxを使ってもパフォーマンスが損なわれないようになっている」。また、NFS(Network File System)をカーネルレベルでサポートするようになったのは大きな飛躍だと話し、「今までスタックにいったんコピーしてからネット層に落としていたものを、コピーしないでそのまま落とすような工夫を行なっている」とゼロコピーNFSについて解説した。また、カーネルレベルでIPsecのプロトコルをサポートするようになり、かなり深いところまでセキュリティが保障できるようになったと強調した。ストレージについては最大16TBまでのファイルシステムをサポートし、メモリーも大容量化に対応。64GBまでサポートしていると話した。

一方で、レスポンスの向上という点では下記の点が主なポイントと紹介した。

・プリエンプティブなカーネルに
・インプット/アウトプットスケジューラーの改善
・フルプラグ・アンド・プレイOS
・USB 2.0のネイティブサポート
・ALSA(Advanced Linux Sound Architecture)
・ジョイスティックサポート改良

カーネル2.6では割り込み処理に関する性能向上も注目とのこと。「今までは完全なプリエンティブではなかったので、あるプロセスがはじまってシステムコードの出口にいたるまで、他のプロセスは待たなければならなかった。ここが完全にプリエンティブになったので優先度の高いプロセスを割り込ませることができるようになった」と話し、動作の並列性が飛躍的に高まったとした。したがってマルチメディア関連に限らず、さまざまなタスクを並行して走らせなければならないようなアプリに対しても、高い応答性を示せるようになったという。「デバイスの読み書きも今まであまり効率がよくなかったが、このへんもかなり改善した」と紹介。また、futex(Fast User-Space Mutexs)によってリソースのコンフリクトがなくなった。その結果、エンドユーザーから見るアプリの応答性が高まったと話した。

また、これらに加えて完全なプラグ・アンド・プレイOSとなった点や、USB 2.0をネイティブでサポートする点などが紹介されたが、ユニークな点としてはALSA(Advanced Linux Sound Architecture)やジョイスティックのサポートがあげられる。「これまではサンプリングレートが高かったりすると音飛びなどの現象が起きていたが、今回はどんなヘビーな状況でいろんなことをやっていても奇麗な音が出るように改善がされている」と話した。

後半では組み込み機器で使用に特化したμCLinuxを統合したため、Linux本体で小さな埋め込みチップに関してもサポートが強力になった点、PDAのサポートも広がった点などが説明された。

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