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米ザイリンクスのウィム・ロレンツ会長兼CEOが来日記者会見

2004年01月30日 00時00分更新

文● 編集部

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ザイリンクス(株)は29日、米ザイリンクス(Xilinx)社の社長兼取締役会長兼CEOのウィム・ロレンツ(Willem P. Roelendts)氏の来日に伴い、都内のホテルで記者会見を開催した。記者会見にはザイリンクスの代表取締役会長兼社長の北島基弘氏が同席した。

北島基弘氏
ザイリンクス(株)代表取締役会長兼社長の北島基弘氏

冒頭、北島氏が新年の挨拶し、最近のトピックとして、ザイリンクスのFPGA(※1)が、NASAの火星探査ミッションにおいて利用されていることを紹介。現在火星で活動している火星探査車には、4000シリーズという古い製品が搭載されていることや、今後の火星探査車には最新の“Virtex”耐放射線性FPGAが搭載されると述べ、主にステアリングや車輪の駆動、カメラ、アームの操作などの制御を行なっていることなどを紹介した。

※1 FPGA(Field Programmable Gate Array):ASIC(特定用途向けIC)の一種で、ユーザーが設計した回路を電気的に書き込んで(プログラミング)、任意の機能を持ったICを作成できるデバイス。一度書き込んだ後で再プログラミングも可能。PLD(Programmable Logic Device)とも呼ばれる。

火星探査車
スライドの火星探査車では古いシリーズのFPGAが使われているという

続いて、同社のFPGAにおいて、微細化とコストダウンが進んでいることを示し、同社のFPGAが新しいアーキテクチャー“ASMBL(Application Specific Modular Block Architecture)”を導入したことにより、微細化ではなく、アーキテクチャーでコストダウンが可能になったことを説明した。これまでは、シリコンのダイに搭載されているメモリーやプロセッサー、DSPなどの占める割合が製品ファミリーで決まっており、ユーザーがメモリーの容量を増やそうとすれば、より大きなダイを持つ品種に変更しなければならならなかった。“ASMBL”を採用したことによりアプリケーションに必要なシリコンのみを購入できるようになり、コストダウンにつながることを説明した。

最低のコストで最適な機能の組み合わせ “コラムベース”のアーキテクチャー
ASMBLによりアプリケーションに必要なシリコンを「最低のコストで最適な機能の組み合わせ」で購入できる“ASMBL”は“コラムベース”のアーキテクチャーで、ロジックやDSP、高速I/O、ハードIP(Intellectual Property)、プロセッサーなどの機能をアプリケーションに必要なだけ選択して搭載できるという
“ASMBL”

続いて、ロレンツ氏が、米国本社設立20周年を迎えた同社の企業理念や、同社が前日に受賞した“富士通アワード”について話したのち、第3四半期の業績と日本におけるPLD(Programmable Logic Device)市場の予測などについて説明した。

ウィム・ロレンツ(Willem P. Roelendts)氏
米ザイリンクス(Xilinx)社の社長兼取締役会長兼CEOのウィム・ロレンツ(Willem P. Roelendts)氏

ロレンツ氏は、同社が20周年を迎え、日本法人も設立15周年となることから、同社がどのように“進化”してきたかについて説明した。同社は1984年に設立されたときから、“プログラマブル・ロジック”というそれまでにない新しいアイデアをベースとしていたが、創業者のひとりロス・フリーマン(Ross Freeman)氏は、当時、いずれ“ムーアの法則”が進展するのであれば必ずトランジスターが無料になる時代がくると考え、それならトランジスターを使ってロジックを組み立てていくというのが妥当であると考えたという。それが今では現実になっていると述べ、当時はICのトランジスター数が1000未満だったが、現在では1000万を超えていることを挙げた。また、もうひとつ、当時新しかったこととして、創設者のひとりバーナード・ボンダーシュミット(Bernard V. Vonderschmitt)氏が“ファブレス”モデルを採用したことを挙げ、現在では半導体メーカーの16%がファブレスとなっており、2010年には35%になるという調査会社のデータを示した。同社はファブとして複数のファイブに生産を委託する“デュアルファブ”を採用しており、健在、台湾UMC社とセイコーエプソン(株)が生産しているが、今後12インチファブが立ち上がれば、米IBMエレクトロニクス社で生産する予定であると説明した。

創業時と現在を比較
創業時と現在を比較

そして同社では、創業時から、自社では3つの点、製品の開発、マーケティング、ユーザーのサポートに注力してきており、そのほかの事業についてはパートナー企業にまかせるという形をとってきたこと述べた。同社の企業理念が“イノベーション”であり、12ヵ月から18ヵ月で新製品を投入してきた結果、現在ではマーケットシェアが50%を超えていることを紹介。パートナー企業が150社を超え、米フォーチュン誌で3年連続して働きたい企業ベスト100に選ばれていることや、米マネー誌から次世代の“Blue Chip”企業(優良企業)に挙げられたことなども紹介した。続いて、前日に富士通から“Distinguished Prtner Award”を受賞したことを紹介した。これは優良なサプライヤーを選ぶもので、個人的には非常に感動したと話した。

次に2004会計年度の第3四半期(2003年10月から12月まで)の営業実績を紹介した。売り上げは3億6600万ドル(約387億9600万円)で、1株あたりの利益は0.19ドル(約20円)となり、売り上げが対前期比16%増、対前年比では29%となったことを示した。また、アジア市場の成長が大きく、売り上げの41%が日本とアジア太平洋地区で占められており、アジアへのアウトソース(製造など)が盛んになったことをその要因とした。それとともに、パソコンが成熟期を迎えたことから、今後、業界の牽引役がデジタル家電になるとの見通しを示し、同社は5年前からそれをターゲットにしていたことなどを説明した。

エンドマーケット別の売り上げ 製品カテゴリー別の売り上げ
エンドマーケット別の売り上げは、通信が最も多く、続いて民生機器、ストレージ&サーバーの順。1年前から大きな変動はない製品カテゴリー別の売り上げでは、“ニュープロダクト”2年以内の製品が大きく伸びている。2年から5年の“メインストリーム”、5年以上経過している製品“ベース”と続く
売り上げの内訳

売り上げの内訳では、製品カテゴリー別の場合、前年度から大きく伸びたのは“ニュープロダクト”に分類している発売してから2年以内の製品。2年から5年が経過した製品“メインストリーム”の割合がそのぶん少なくなっており、5年以上が経過した“ベース”の製品も少し減っている。その理由として、新製品を積極的に投入したことで“ニュープロダクト”の売り上げが伸びたことを挙げた。また、財務状況については、長期債務がゼロであることを強調した。研究開発費については、長期目標を15~17%としており、現在は18.1%。今後、1~2四半期のうちに達成できる見通しであることを示した。同社では従業員のほとんどがエンジニアであるため、レイオフはしない方針をとっているという。そして、3月末までの第4四半期については、売り上げが対前年比で7~10%増、粗利益率が約63%、営業経費は前期と同水準になるとの予測を示した。

日本におけるマーケット予測
日本におけるマーケット予測(データクエスト調べ)

最後に日本におけるPLD市場の予測について説明した。これまではASCI(特定用途向けIC)が強かったが、ASICに比べて、“タイム・トゥー・マーケット”を短縮できること、可用性が高いこと、より柔軟に組み込めることなどから、ASICからPLDに移行するとの予測を示した。

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