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OSDL、2003年のLinux重大トピックスについて解説

2003年12月17日 22時18分更新

文● 編集部 小板謙次

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Linuxの成長とエンタープライズでのLinux採用促進を目的とした非営利団体のOSDL(Open Source Development Labs)ジャパンは16日、都内で“2003年のLinuxトピックス”と題した記者説明会を開催。OSDLが注目した2003年のLinuxの動きは

  • 政府とオープンソース
  • Linuxビジネスが本格化
  • ディストリビューションメーカー再編
  • SCO関連
  • デスクトップ分野への試み
  • Linuxカーネル2.6へ
  • 基幹システムへの適用が本格化
  • 組み込み分野での採用が相次ぐ

といった8項目に大別された。これら項目について主なニュースを振り返る形で会見は進んでいった。

■政府、自治体がオープンソースに力

ラボディレクタの高澤真治氏

“政府とオープンソース”については、ビジネス&マーケットディベロップメントマネージャーの小薗井康志氏が政府の取り組みを振り返った。経済産業省がIPAなど外郭団体を使ってさまざまなセミナーを開催していることや、総務省のセキュアーOSに関する会合などを取り上げながら「(2003年は)日本政府もオープンソースに力を入れはじめた年だった」とした。また、長崎県がオープンソースの自治体システムで特許を出願したこと、兵庫県が窓口対応業務システムにオープンソースを採用したこと、目黒区役所新庁舎の庁内ネットワークをLinuxサーバーで構築したことなどを挙げながら、自治体でオープンソースへの関心が高まってきていることを強調した。一方、ラボディレクタの高澤真治氏は“アジア・オープンソース・ソフトウェア・シンポジウム2003”を振り返りった。「経済産業省主催で開催されたものだが、ASEAN(東南アジア諸国連合)+日中韓という諸国の会合で、80名ぐらいが集まっていろんな話題を議論した。特に言語のローカライゼーションの問題は白熱していた。この会合は今後のアジア地域の活動のきっかけになる会合だった」と話した。セキュアーOSについては「20名くらいの日本大手メーカーの方が集まって、公的なところに適用するにはどういったOSがいいかということを議論した。こちらは間もなく総務省のから今年の総括としてでてくるだろう」と付け加えた。



■大手メーカーがLinuxビジネスに本腰

ビジネス&マーケットディベロップメントマネージャーの小薗井康志氏

“Linuxビジネスの本格化”については、大手メーカーもLinuxビジネスに本腰を入れはじめ、Windowsや商用UNIXと同じレベルでの扱いに格上げされるようになってきたと定義した。その例として取り上げたのが富士通(株)とインテル(株)がミッションクリティカルサーバーの開発で提携したという話題や、(株)日立製作所がLinuxソリューションセンターを、日本ユニシス(株)がLinuxビジネスセンターなどをそれぞれ設置したという話題だ。高澤氏は「昨年は、果たしてLinuxでビジネスは成立するのかと考えているメーカーが多かったと思う。つまり、具体的にどうするという絵が描けていない状態だった。今年はソリューションセンターという金物もちゃんと用意され、客へのサービスというところにビジネスがある、利益が出せるという認識を各社が持つようになったと思う」と話した。「ただ、今年は相変わらず儲かってはいないと思う。来年に向けて、公的機関や金融機関などのマーケットにターゲットを広げるべく真剣に準備をはじめた年ではないか」と分析した。



■ディストリビューションの新たな形

また、2003年は確固たる市場を獲得できたディストリビューションメーカーと、そうでないメーカーとの明暗がはっきりとしたと分析。ディストリビューションに関するビジネスが多様化しはじめているとした。高澤氏は「やはりディストリビューション(配布するだけ)は難しかった」とした上で、ミラクル・リナックス(株)は韓国SecuBrain社、韓国GeneVic社とセキュリティー分野で戦略的提携を行なっている事実や、ターボリナックス(株)がTurbolinux 10 Desktopを発売し、ユーティリティーも含めてインテグレーションサービスに近いモデルを築こうとしている点に注目した。また、来年1月に買収が完了予定の米ノベル社と独SUSE LINUX社に関しては、コミュニティーを尊重したモデルと評価した。「本来なら自社内でOSも作れるしアプリもある。すべて自社内でやってしまう陣容を構えてしまえばいいんですが、それをやったらUNIXの二の前というのを理解している。オープンソースのコミュニティーとうまくコラボレーションして、そこにいろんな技術要件をいれながら、サービスのレベニューの機会を見つけていこう位置づけだと思う」と分析した。

■SCO問題を中立的な立場から分析

SCOの問題については、OSDLとしては中立な立場から問題を冷静に考えたポジションペーパー(方針説明書)を出しているとした。

■POS端末やコールセンターにチャンス

デスクトップ分野への取り組みについては、まず中国や韓国の例を挙げた。「レッドフラグOSのデモも見た人はわかるだろうが、完成度は高い。数年をかけてオフィスまわりやスプレッドシート、ワードツールも作っていくとしており、ものすごい勢いで進められている。オープンソースには珍しい勢いだ」とし、日本はまだそこまで進んでいないとした。しかし、POSの端末やコールセンターの周辺機器などフロントエンドの部分にデスクトップOSが置き換わる機会があると見ていると話した。

■カーネル2.6は年内に

アナウンスが待ち望まれているLinuxカーネル2.6に関しては、「カーネル2.4でもある程度大規模なシステム向けの安定度が増していたが、2.6では大型システムの性能や安定性を向上させるための機能がたくさん入っている。本格的なエンタープライズ向けとなるのは2.6からだ」と話し、リリースについては「おそらく年内」とコメントした。また、Linux開発者であるLinus Torvalds(リーナス・トーバルズ)氏は2.6のメンテナンスをAndrew Morton(アンドリュー・モートン)氏に任せて、2.7の開発準備にとりかかるべく作業をしている段階だと話した。2.6が公開されると、そのバグフィックス、メンテナンス、あるいはセキュリティーホールのフィックスにAndrew Morton氏が専念することになるという。

■基幹システム、組み込み分野への採用が加速

ここでは(株)ツタヤオンラインが基幹データベースシステムをLinuxにしたことや、目黒区役所のネットワークのLinux化、東京ガス(株)が社内メールシステムをLinuxで構築した例を挙げた。「今まではLinuxを導入するというとTCO削減という言葉がすぐにでてきた。確かにUNIXの場合に比べて2割程度コスト削減できるが、技術支援まで入れるとそれまでのシステムの場合とそんなには変わらない。性能が重視されてきた」と話し、この2割の部分をうまくサービスに変え、ビジネスモデルの転換にしていくことが重要だと話した。また、現状は金融・流通などがほとんどだが、製造業への進出を期待しているとした。組み込み分野では(株)NTTドコモがFOMAプラットフォームにLinuxを採用した点を注目のトピックとした。

今後のOSDLは「Linux業界の中心的存在になろう」ということを掲げていると話した。「アメリカではエンドユーザーを本格的に巻き込もうという動きがでている。日本でも、われわれがエンドユーザーを集めたセミナーを開催予定で、事例紹介など勉強会レベルのものを企画中だと話した。

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