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講談社、新潮社ら15社がソニーのOpenMG対応BBeB規格を採用した電子出版新会社“パブリッシングリンク”を設立

2003年11月13日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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(株)講談社、(株)新潮社、ソニー(株)、大日本印刷(株)、凸版印刷(株)をはじめとする出版社15社は13日、講談社社内で記者発表会を行ない、電子出版事業を行なう新会社“株式会社パブリッシングリンク”を設立、2004年春から電子出版コンテンツの配信を中心とした会員制のサービスを開始すると発表した。発表会には社長兼CEOに就任した(株)筑摩書房の専務取締役、松田哲夫氏をはじめ、出資15社の担当役員が勢揃いした。

ロゴマーク
“パブリッシングリンク”のロゴマーク

●OpenMG対応の電子出版新規格“BBeB”を採用

パブリッシングリンクは、ソニーが開発した“BBeB(Broad Band e-Book)規格”を採用した電子出版コンテンツを流通・配信し、有料で一定期間レンタルするという新しい形態のサービスを展開する。BBeB規格はソニーの著作権保護技術“OpenMG”に対応しており、著作者・出版社の権利を保護しつつ、安全なコンテンツ配信の実現を目指す。BBeBコンテンツを読むには、いったんパソコンにコンテンツをダウンロードしPCビューワーを使ってパソコンで読んだり、OpenMG対応のメモリースティックやUSBを介して、読書専用端末にダウンロードして持ち歩いたりすることができる。

PCビューワー
PCビューワー。動作環境などは開発中のため未定

ソニーではBBeB規格に対応した読書専用端末を開発中で、発表会には薄型で四六判(版面は文庫サイズ)、文庫並みの軽さで反射型の液晶ディスプレーやメモリースティックスロット、USB端子を搭載した試作機を参考出品した。今回はあくまで参考出品ということでスペックなどは一切非公開で実機にふれることはできなかったが、本体左上部の背面側にメモリースティックスロット、本体左底部にUSB端子、前面下部にはミニキーボードとソニーお家芸のジョグらしきものが確認できた。製品版ならび価格などの詳細については、2004年春の事業内容発表に併せて、正式発表となる。

読書専用端末
BBeB規格に対応した読書専用端末は、反射型のディスプレー“ePaper”を採用しており、まさに紙のイメージに近い。「バックライトでないこの端末だったからこそ、私たち(出版社側)が本気になった」とは新潮社佐藤氏のコメント

白く軽やかなイメージの筐体は実際かなり軽そうで、撮影の際に女性担当者が長い間掲げていてもつらそうな感じはまったく感じられなかった。対抗馬と目される『ΣBook(シグマブック)』が見開きでそれなりの重量があることと比較すると、まずは端末としてアドバンテージがあると言えるだろう。

ディスプレーの下部 本体の底部
ディスプレーの下部にはミニキーボードとジョグダイアルが装備されている。どのように操作するかといった説明はまったくなかった本体の底部。左側にUSB端子のカバーが見える。その薄さがうかがえるだろうか
BBeB規格に対応した読書専用端末

●提供するサービスはブックレンタル!?

同社が提供する新サービス“Timebook Town(タイムブックタウン)”は、月額会員制となっており、入会登録とPCビューワーソフトをダウンロードした上でサービスを受けることができる。会員となったユーザーは好みの作品をレンタルできる“Timebook Library(タイムブックライブラリー)”やジャンルに分かれた会員制のブッククラブ“Timebook Club(タイムブッククラブ)”を利用することができる。

Timebook Libraryは、好みの作品を1冊単位でレンタルして2ヵ月間閲覧できるもので、レンタルというサービスの性格上、通常、販売される紙の本よりもリーズナブルな価格設定での提供が予定されている。また、さまざまな電子出版コンテンツを紹介するメールマガジンも発行される。

Timebook Clubは、文芸、エンターテイメント、ビジネス、新書、旅、語学といったクラブ設定がなされており、いずれのクラブも月額固定料金で提供される。毎月5冊ほど、作家や評論家、アーティストなどのクラブナビゲーターが薦める作品が閲覧できる。さらに毎月、新作や書き下ろし連載作品、紙の本に先行して掲載される作品などの配信も予定している。

●パブリッシングリンクは事業会社。コンソーシアムとはレベルが違う

同社の代表取締役社長兼CEOには、TBSテレビの情報番組『王様のブランチ』のコメンテーターとしても知られる筑摩書房の専務取締役、松田哲夫氏が就任した。松田氏は、和光大学教授の津野海太郎氏、(株)ボイジャーの萩野正昭氏らとともに季刊『本とコンピュータ』の編集委員としておよそ6年にわたって電子出版に深く関わってきた人物だ。松田氏は「参加各社よりこわれて社長を務めることになったが、重大な責務だと感じている。(この事業が)大きく飛躍することになれば、出版界の活性化に寄与するだろう」と語った。

社長に就任した松田哲夫氏
社長に就任した松田哲夫氏。「筑摩書房での役職とコメンテーターとしての仕事は今後も引き続き続け、活かしていきたい」と語った

同じような動きとして電子書籍コンソーシアムというものがあるがあちらと合流していくようなことは考えているか、との質問に対して「(パブリッシングリンクは)事業会社として立ち上げており、現実的なビジネスモデルを描けるものとして動いているので、コンソーシアムとはだいぶレベルが違うと思う。とはいえ、電子書籍コンソーシアムに参加している出資会社もあり、基本的にはオープンで行きたい。ハードについてもソニー以外のハードに配信することもある」とした。

パブリッシングリンクの資本金は4億8750万円。出資会社と出資比率は以下の通り。

ソニー(41.03%)、講談社(15.38%)、新潮社(15.38%)、大日本印刷(10.26%)、凸版印刷(10.26%)、以下、(株)筑摩書房、(株)ノヴァ、(株)読売新聞グループ本社、(株)朝日新聞社、(株)岩波書店、(株)角川書店、(株)光文社、(株)東京創元社、(株)文藝春秋、(株)ソニーマガジンズ(出資比率はいずれも10%以下)。

初年度の売り上げについて松田氏は、「サービスのスタートが確定していないのでいつが初年度ということもあるので明確にはできない。ただし、3年目で黒字化し、10万ユーザーを超え、5年目で累積黒字としたい」とした。

講談社・野間氏 新潮社・佐藤氏
講談社・野間氏「これまでの電子出版に満足できなかったのは、読者、作者、出版社というバリューチェーンの中で一致していなかったからではないか。(パブリッシングリンクが)新しい表現の場となることを期待している」新潮社・佐藤氏「(パブリッシングリンクは)出版社にとってはデータ加工のサービスを行なう会社でもある。いかなる加工にも対応し、コストダウンやデータの管理などもできる。作家にとっても新しい収益のチャンスになる。ぜひ、みなさんと一緒にやっていきたい」
ソニー・野副氏

また、出資会社を代表して講談社の常務取締役、野間省伸氏、新潮社の取締役社長、佐藤隆信氏、ソニーの業務執行役員上席常務の野副正行氏がそれぞれ挨拶した。

勢揃いした出資15社の代表
勢揃いした出資15社の代表の面々

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