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マイクロソフト、“Microsoft Office System”活用訴求のカンファレンス“Information Worker Day 2003 fall”を開催――テーマは“人”“情報”“鍵”

2003年11月12日 21時07分更新

文● 編集部 内田泰仁

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マイクロソフト(株)は11日、“Microsoft Office System”により実現を目指す人や情報を有効に活用した新しいワークスタイル“インフォメーションワーク”を訴求するカンファレンス“Information Worker Day 2003 fall”を都内で開催した。3月に開催された“Information Worker Day”の第2回となるこのカンファレンスでは、すでに市場に登場している『Microsoft Office 2003 Editions』各製品をフロントエンドとする“Microsoft Office System”の利用方法の紹介や、実際の製品を用いたデモンストレーションが催された。

米マイクロソフト社Office担当シニアバイスプレジデント、スティーブン・シノフスキー氏

冒頭の基調講演は、米マイクロソフト社のOffice担当シニアバイスプレジデント、スティーブン・シノフスキー(Steven Sinofski)氏が行なった。シノフスキー氏は、“Microsoft Office System”の開発・設計の際、“個人、チーム、組織全体の3つの領域”を考え、これらの「統合的なイノベーションにより、情報を効率的に統合する」ことを目指したという。そして、“Microsoft Office System”は“情報をビジネスの力に変える統合システム”として、プログラム、サーバー、ソリューション、サービスの4つを、最もよい組み合わせで提供するものだとした。

“Microsoft Office System”は、個人、チーム、組織全体の3領域の統合的なイノベーションを実現するという“Microsoft Office System”関連製品のまとめ

今回の“Microsoft Office System”では、XMLドキュメントの取り扱いを前面に押し出しているが、同氏は「XMLをベースとした開発は今後も非常に重要となる」と述べた。また、組織全体の情報ポータルサイトを構築する『Microsoft SharePoint Portal Server 2003』および個人の情報ポータルを構築する『Microsoft Windows SharePoint Services』の運用の例として米マイクロソフト社内での立ち上げ状況を紹介し、現在、個人の情報発信を含めて5万サイト以上が運用されていると述べた。

“人”をテーマとしたセッションを担当した、マイクロソフト(株)ビジネスプロダクティビティソリューション本部エンタープライズビジネス部エグゼクティブアドバイザーの西賀与一氏

基調講演に引き続き行なわれた3つのセッションは、“人”“情報”“鍵”がそれぞれテーマとされた。最初のセッションは“人”をテーマとする内容で、“インフォメーションワーク”がなぜ必要で、どのように使うとどのような効果が得られるかという点が紹介された。

マイクロソフトは、今後はワークスタイルを“質を高める”ものへ変化させていくことが必要、としている
このセッションを担当したマイクロソフトのビジネスプロダクティビティソリューション本部エンタープライズビジネス部エグゼクティブアドバイザーの西賀与一氏によると、これまでの仕事の進め方では、書類や情報の電子化は進んできてはいるものの、一元化できていないシステムや、情報の整理手順、個人間の連絡手段など、時間や手間が必要な点が多くあり、それらの作業時間に多くの労力が払われているという。マイクロソフトが提唱する“インフォメーションワーク”では、“無駄を省き、すばやく対応し、質の高いアウトプットを可能にする”ためにITを活用するとしている。また、現状、一人に1台パソコンがあり、パソコンがネットワークに繋がっており、情報共有のためのファイルサーバーやインターネット接続や電子メールといった基本的なインフラが整っているオフィスが非常に多くなってきており、ここに『Microsoft Outlook 2003』や『Microsoft SharePoint Portal Server 2003』を導入することにより、「増え続ける情報を効率的に処理し、仕事に役立てる」仕組みが“インフォメーションワーク”だと述べた。この結果として、非効率/属人的組織の“コミュニケーション”から、効率的/画一的組織による“コラボレーション”が可能になり、もっとクリエイティブな仕事に時間を使うことが可能な“学ぶ組織”へと高めていくことが可能になるという。



『Microsoft Windows SharePoint Services』のデモより。『Microsoft Windows SharePoint Services』で立ち上げた個人ポータルサイト上でそのユーザーの現在の状況(オンラインか、席にいるかいないかなど)を確認し、メールやインスタントメッセージなどで、このサイト上から直接連絡を取ることが可能リアルタイムコミュニケーションサービス『Microsoft Live Communications Server 2003』や『Microsoft SharePoint Portal Server 2003』を活用したシステム改善例

このセッションのデモンストレーションでは、『Microsoft Outlook 2003』のメールの整理や情報の検索の機能の強化点、『Microsoft Windows SharePoint Services』を基点としたユーザー同士のリアルタイムコミュニケーションやドキュメントの共同作成が紹介された。また、今回のカンファレンスの開催に向けても実際に『Microsoft SharePoint Portal Server 2003』を利用した専用サイトを社内に立ち上げて各部門の共同作業を行なったというエピソードも紹介された。

“情報”をテーマとした第2セッションを担当したマイクロソフト(株)ビジネスプロダクティビティソリューション本部エンタープライズビジネス部エグゼクティブアドバイザー、佐藤正浩氏

第2セッションは“情報”がテーマ。ここでは主に“Microsoft Office System”のXML対応が取り上げられた。壇上に立ったマイクロソフトのビジネスプロダクティビティソリューション本部エンタープライズビジネス部エグゼクティブアドバイザーの佐藤正浩氏はまず最初に、企業におけるコンピューティング環境の変化について、1980年代は汎用機、1990年代はクライアント/サーバーシステム、2000年以降はウェブを基盤としたシステムへと変遷したこれまでの流れを紹介し、世代の移り変わりや企業に導入されているさまざまな業務システムにより、システム間の孤立状態があるという状況を説明、今後は企業内資産を戦略的に活用することが企業競争力を高めるポイントになるとした。また、Microsoft Officeの10年間の歴史を振り返り、その役割の変遷が“つくる(Creat)”から“つたえる(Communicate)”へと進化して、今回のバージョンでは“つながる(Connect)”を目標としていると述べている。

企業のコンピューティング環境の変化を示したスライド“Microsoft Office System”のXML対応状況と『Microsoft InfoPath 2003』の機能を紹介するスライド

同氏は、2000年以降の主流であるウェブを基盤とした業務システムではウェブブラウザーをクライアントアプリケーションとして使用するため、ブラウザーやHTMLの表現能力の限界、応答性やパフォーマンスの悪さ、入力業務の生産性の低さ、入力データの再利用性の悪さ、オフラインで利用できない、といった欠点があると指摘している。これに対して“Microsoft Office System”では、取り扱うすべてのデータがXMLを基盤としているため、

  • データに意味を持たせることが可能で、処理の自動化が容易なため、連続的なビジネスプロセスが確立できる
  • 企業システム、業務システム間の連携が容易である
  • 汎用性が高い再利用性を持たせることができる

といったメリットを引き出すことが可能だとしている。また、XMLを基盤とした企業システムのフロントエンドツールとして、『Microsoft Office 2003 Editions』の各アプリ(デモンストレーションでは特に『Microsoft InfoPath 2003』にフォーカスを当てて紹介していた)を用いることにより、ウェブアプリケーションの課題であった、オフライン利用や入力データの再利用性、ダイナミックな入力フォームによる操作性の向上、リッチなインターフェースによる直感的な情報入力の支援といった点を克服でき、XMLウェブサービスの容易な利用、ドラッグ&ドロップによるノンプログラミング開発、テンプレートから容易にユーザーインターフェースを作成するといった、XML基盤技術のスムーズな導入も可能になってくるという。

“鍵”をテーマとした3番目のセッションの前半は、リスクマネージメントの専門会社であるKPMGビジネスアシュアランス(株)のIRM事業部シニアマネージャー・田口篤氏が担当

最終セッションは“鍵”をテーマとして、セキュリティー、主に機密性の高い情報のセキュリティーマネージメントの重要性についてが語られた。このセッションは、前半部分をリスクマネージメントの専門会社であるケーピーエムジービジネスアシュアランス(株)のIRM事業部シニアマネージャー・田口篤氏が、後半部分をマイクロソフト(株)ビジネスプロダクティビティソリューション本部エンタープライズビジネス部エグゼクティブアドバイザーの中原徹三氏が務める2部構成で、前半はリスクおよびセキュリティーマネージメントの重要性、後半は“Microsoft Office System”を使った対策方法の実際が紹介された。

リスクマネージメントを行なうための5つの重要要素KPMGビジネスアシュアランスがリスクマネージメントを行なう際のアプローチと提供サービス内容

田口氏によると、企業の情報セキュリティー問題は、“マイナスのリターン”のみが生じるリスクであり、対策を行なうことは損失を回避するために必要不可欠な投資で、何も起こらないことが効果として得られるものだという。また、企業の公共性や社会的責任が問われる時代においては、「対策を行なわないという選択肢はありえない」と述べた。さらに、特にITに関連するリスクマネージメントでは、情報の伝播性や携帯性の飛躍的な向上と複製・変更の容易さからドキュメントファイルやメールといった電子データに関するリスクが一番高いとして、ITを中心とした電子データの保護対策が重要だとしている。また、エンドユーザーの情報発信能力の強大化とエンドユーザーが及ぼす影響の大規模・広範囲化により、情報セキュリティーはエンドユーザーを中心に考えていかなければいけないという。そして、これらを踏まえてセキュリティー対策を行なうには“統制環境”“リスク評価”“統制活動”“情報伝達”“モニタリング”の5つが不可欠で、この5つの観点からバランスよく対策を行なう必要があるとした。

マイクロソフト(株)ビジネスプロダクティビティソリューション本部エンタープライズビジネス部エグゼクティブアドバイザー、中原徹三氏

このような田口氏の説明を受け、中原氏は“Microsoft Office System”が実現している情報セキュリティーについての説明を行なった。ここで紹介されたのは、6日に提供が開始された『Windows Rights Management Services for Windows Server 2003』を利用して、エンドユーザーが直接接するメールやドキュメントに“鍵”をかける“Information Rights Management(インフォメーション・ライツ・マネージメント)”という手法。これは、エンドユーザーレベルで使用されるデータに企業のセキュリティーポリシーを付与することにより、企業内部からの情報流出を防ぐための仕組みで、『Microsoft Office 2003 Editions』との組み合わせにより、メールやドキュメントの閲覧や転送、コピー、印刷、プリントスクリーン、閲覧可能期間を制限し、128ビットAESによるファイルの暗号化とデジタル署名を施すことが可能になるというもの。サーバー(Windows Server 2003)側のサービスとしては、『Windows Rights Management Services for Windows Server 2003』とユーザー認証のための『Actice Directory』が必要で、クライアント側には対応アプリケーションの『Microsoft Word 2003』『Microsoft Excel 2003』『Microsoft PowerPoint 2003』『Microsoft Outlook 2003』と『Windows Rights Managementクライアント』が必要となる。なお、対応アプリケーションがない環境で閲覧するためのInternet Explorer用アドイン『Microsoft Rights Management Add-on for Internet Explorer』の無償提供が予定されているという。

企業内部の情報が外部に不正に流出するケースの代表例“Information Rights Management”を利用した内部情報の流出を防ぐ方法を説明するスライド“Information Rights Management”を実現するためのアーキテクチャー全体像を示すスライド

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