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「ソニーの総合的な力を集めて、総力戦で開発していく!」――ソニー、経営戦略説明会を開催

2003年10月28日 23時54分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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“ソニーの総力戦”を示すパネル
“ソニーの総力戦”を示すパネル

ソニー(株)は28日、東京・品川の高輪プリンスホテルにプレス関係者らを集めて、経営戦略説明会を開催した。説明会には会長兼グループCEO(最高経営責任者)の出井伸之(いでいのぶゆき)氏、社長兼グループCOO(最高執行責任者)の安藤国威(あんどうくにたけ)氏、副社長兼グループCSO(最高戦略責任者)の徳中暉久(とくなかてるひさ)氏、副社長の高篠静雄氏、副社長の久多良木 健(くたらぎけん)氏、常務兼グループCFO(最高財務責任者)の湯原隆男(ゆはらたかお)氏らが出席し、今年春の経営戦略説明会で発表した“2006年に営業利益10%(保険・金融を除く)を実現”する戦略の具体的な施策を説明した。



会長の出井伸之氏ら
説明会の出席者。左から、久多良木 健氏、徳中暉久氏、会長の出井伸之氏、社長の安藤国威氏

変革プラン“トランスフォーメーション60”とは?

開口一番、出井氏は、「4月以降業績は月を追うごとに回復している。地域別に見ても米国を除いて回復しており、中国市場はデジタルカメラが爆発的な売れ行きで半期で59%の成長を達成した。ただ、ゲーム関連の業績は上期で苦戦している。ソフトが出揃い、ハード(『PSX』など)も出てくるので、元気はある」とソニーの急速な回復振りをアピールした。

固定費削減による効果を示すパネル
固定費削減による効果を示すパネル

さらに、2006年をソニー生誕60年(還暦)の節目の年ととらえ、「最強のコンスーマーブランドとして新たな価値創造とさらなる成長にむけた変革プラン“トランスフォーメーション60”を実行する“第2次構造改革”に入る時期になった。これを実施することで筋肉質の会社になることが重要と考える」と説明。具体的には

事業収益構造の変革=固定費の削減
全世界で2万2000人(国内で7000人)規模の人員削減などにより、約4%(3300億円)の連結営業利益の改善効果を狙う
成長戦略=融合戦略
コア事業であるエレクトロニクスとエンターテインメントを積極的に推進していく

という2つを紹介した。固定費の削減については、仮に2006年の売り上げが2002年と同等であっても営業利益が10%を確保できる戦略と説明。人員削減のほかに、非生産材の調達の変革(グループ横断の非生産材調達による経費削減)、設計プロセス・品質管理・生産材調達の変革(部品品種を84万点→10万点に削減、サプライヤーを4700社→1000社に集約)、間接部門や販売部門のスリム化、および設計・製造・物流・サービス機能の再構築(全世界の拠点数を30%削減して東京ドーム25個分のスペースをセーブ)、などの具体策を明らかにした。

“モバイルマーケット”と“ホームエレクトロニクス”
“モバイルマーケット”と“ホームエレクトロニクス”

一方、成長戦略であるエレクトロニクスとエンターテインメントを軸とした“融合戦略”については、「(すでに市場が出来上がっている)オープンマーケットで10%、ニッチマーケットでは高いシェア(目標40%)、ゲームなど自分でフォーマットを作り出すものはさらに高いシェアをキープする。この3つの戦略で利益を確保していく」と、これまでの同社の方針をさらに進めるとともに、「市場を“モバイルマーケット”と“ホームエレクトロニクス”の大きく2つに分けて考え、そこにリソースを集中投入して強力な製品を出していく。ここで言うモバイルマーケットとは携帯電話やデジタルカメラ、クリエ、ノートパソコンなどを軸とした製品群で、ホームエレクトロニクスはPSXやゲーム機、コクーン、WEGA(ベガ)などを示す」「特に半導体は両者において重要な事業と考え、(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントとソニー本体の半導体事業を統合し、チップ開発を強化するべくセミコンダクターソリューションカンパニーを立ち上げる」と説明した。

ソニー・コンピュータエンタテインメントとソニー本体の半導体事業を統合
ソニー・コンピュータエンタテインメントとソニー本体の半導体事業を統合

また、半導体と並ぶキーデバイスであるディスプレー事業についても詳細が明かされた。説明会の当日、サムスン電子(株)との間で第7世代(ガラス基板サイズ1870×2200mm)の大型液晶ディスプレーについて合弁会社(資本金:約20億ドル、会社名未定)を2004年第1四半期をめどに設立し、大画面薄型TVなどへの展開を検討することが発表された(当該記事)ほか、

小型液晶パネル(LCD)
現在供給を受けている他社との関係を今後も継続していく
プラズマディスプレーパネル(PDP)
現在供給を受けているものは継続していく
プロジェクター向け高精彩液晶デバイス『SXRD』
ソニー独自開発で、現在は“QUALIA(クアリア)”のプロジェクター『Q004-R1』のみに採用しているが、今後は“グランドWEGA”にも投入予定
低温ポリシリコンTFT液晶パネル
(株)豊田自動檻機製作所との合弁で立ち上がったエスティ・エルシーディ(株)が利益体質になってきたので、これを継続
そのほか
自発光(有機・無機ELディスプレー)が重要になってくるので、何年後かは未定だが自社開発を行なう

などが明らかにされた。

ソニーがサムスンと手を組んだ真の理由は?

最後に出井氏は、「2006年(ソニーの還暦)を過ぎても、新しい事業や産業の創出を行なう。そのために固定費の削減や融合戦略を突き詰める必要があるが、一過性で終わってはいけない。グループの求心力としてのHQ(ヘッドクォーター、首脳陣)をどのように創るか。会社と人(社員)がどのように関わるべきか、従来の終身雇用や年功序列ではない新たな枠組みを3年か5年かけて作る必要がある」を締めくくった。

説明会の後の記者からの質問で、大型液晶パネルをサムスンと合弁会社を作っても自社生産にこだわるのはなぜか、と問われて久多良木氏は「液晶ディスプレーは今、ようやくTVに使えるものが出てきたが、(ソニーとして)満足するものにはなりきっていない。もっと高精細できれいなものが必要と考える。その改良を積み重ねるために自社生産・開発が必要。半導体製造も重要な事業と説明したが、“メディアプロセッサー”(現在ソニーが開発を進めている映像処理用の半導体)の開発には映像デバイスが深く関わってくる。今までのTVにはないような新しいシステムの提案を準備している。そのためにも一貫した製造・生産が必要となった」と、具体的なメディアプロセッサー/新型液晶ディスプレーの機能への言及は避けながらも、やや意味深な回答を行なった。

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