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ネットハイスピーダー(Net Highspeeder)

ネットハイスピーダー(Net Highspeeder)

2003年09月22日 00時00分更新

文● 宇野 貴教

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ネットハイスピーダー(Net Highspeeder)

NECインターチャネル

1980円

ブロードバンド普及の立役者である、低価格のインターネット接続環境“ADSL”は、ノイズの影響や収容局までの距離によって、パフォーマンスが大きく変わってくる。これが測定誤差程度ならば気にもとめないだろうが、「自分の接続テスト結果は友人宅の半分しかない!」なんてことがあるものだから困りもの。収容局の近くに転居できれば問題解決、かもしれないが、現実にはそう簡単に引っ越せるわけもない。ADSL環境の改善は一筋縄ではいかないのだ。そこでインターネット接続の各種設定を最適化するユーティリティソフトが注目を集めている。今回紹介する「ネットハイスピーダー」も、そうしたユーティリティソフトの1つで、ADSLはもちろんアナログ(モデム)接続など、考えられるほとんどのインターネット接続環境を高速化するツールだ。

ADSL、アナログ、AirH”
どんな回線も高速化してしまう!

高速化ウィザードの1画面
画面1 ウィザード形式での高速化で、ユーザーが選択する必要があるのはこの回線の種類だけ。あとはOSを再起動すれば高速化が完了する。

 「ネットハイスピーダー」は、アナログ回線/ISDN/ADSL/FTTH/移動通信(PHSや無線LAN)など、ほとんどの接続環境をカバーするインターネット高速化ソフトだ。本ソフトが行う高速化は大きく2種類に分類される。まず、高速化の定番であるMTU値とRWIN値のチューニングだ。

 MTUとはパケットサイズの上限値で、この値が大きいほど一度に多くのデータ転送が可能になるが、適切な値は接続環境によって変わってくる。RWINは受信確認なしで無条件に転送できるデータの上限値である。この値が小さいと受信確認が頻発してパフォーマンスを落とすが、大きく設定しすぎるとエラーが発生した際の再送に時間がかかる。通信状態が悪い環境ではエラーが頻発するため、この値も回線状況に応じて変更するのがベターだ。本ソフトはこれらの値を回線種別を選択するだけで最適化してくれる。自動設定だけでなくマニュアル設定も可能なので、ADSLだけどエラーが頻発するからRWIN値だけを小さくするといった調整もできる。Windows Meや98といったOSは、アナログ接続を前提としてMTUやRWINが初期設定されているため、この効果はかなり期待できる。



マニュアル設定の画面
画面2 マニュアル設定ではMTU値の直接入力が可能で、RWIN値は10種類の中から選択できる。プルダウンメニューから選択できるRWIN値のプリセットには「ADSL推奨値」「アナログ推奨値」といった目安が数値の横につけられているので参考になる。

 もう1つの高速化は、あらかじめよく使うサイトのDNSをIPアドレスで記憶させておく「DNSアクセラレータ」である。ドメインでなくIPアドレスで発信すればISP(インターネットサービスプロバイダー、接続業者)のDNSサーバの負荷を軽減できるため、結果として若干の速度向上が望めるというもの。ホストはInternet Explorerのお気に入りリストから自動登録でき、定期的に自動更新も行なわれる(WebブラウザーはInternet Explorer 5.5以上に対応)。手動登録による追加も可能。最大登録数は1000件と充分な数が用意されている。

DNSアクセラレータの画面
画面3 DNSアクセラレータは、URLではなくIPアドレスでアクセスしてDNSサーバーの処理時間をカットする機能。IEのお気に入りから自動的にホスト一覧を作成できる。

 高速化以外では、Internet Explorerを使いやすくする機能として「簡易URL」が用意されている。これはネットハイスピーダーにあらかじめURLとその短縮語を登録しておくと、アドレスバーに短縮語を入力するだけで指定のURLが表示されるという入力の手順を短縮できる機能。そのほかにも、現在使用中のTCP/UDPポートの状況確認、範囲指定内のIPアドレスにPingを発信する機能などが備わっている。これらはスピードアップとはまったく関連のなく、「使いたい人は役に立ててください」というようなオマケ的な機能である。

 操作性に関しては、使いにくさや分かりにくさといった不満はまったく感じられない。高速化機能には初心者向けのウィザードが用意され、接続回線を選ぶだけで自動設定が行われる。マニュアルもプルダウンメニューとチェックボックスのみというシンプルさだ。また、メニューには「ADSL推奨値」といった目安の数値が用意され、自分で試行錯誤する際にも基準が分かるようになっている。初めてADSLを家庭に引いたネットワーク初心者が購入しても、操作で悩むことはまずないと断言できる。

PHSや携帯電話、アナログ回線で
効果を確認!!

 肝心の高速化だが、筆者のインターネット接続環境は「Windows2000、ADSL1.5Mbps契約、実効1.2Mbps」と、かなり理想に近い数値が出ている。このような環境下では最適化の効果はほとんど見込めず、導入前と導入後で速度はほぼ同じ(計測誤差レベル)という結果になった。すでに良好な環境であれば、こうしたユーティリティソフトを導入してもさらなる高速化は難しいようだ。では、アナログモデム接続といった低速回線ではどうか? 効果ありなら、ISDNやアナログ回線のユーザーはもちろん、最近流行のAirH”や@FreeDといった常時接続タイプの移動体通信にも役立つだろう。

 そこでアナログ接続と携帯電話+通信アダプタ、@FreeDの3つの環境においても転送速度を計測してみた。実効速度が遅いため、ADSLとは別の計測方法(より小さなファイルの転送)で実験を行ったが、結果は10~26%ほどスピードアップしている。特に@FreeDでは26%もの大幅な速度向上が見られた。元々の最大転送速度がADSLほど高くはないので、体感的にも大幅に快適、とはいかないものの数値として明らかに改善された結果を見ると、ファイルのダウンロードなど日々の通信事情への効果も期待できそうだ。

■ADSL環境での高速通信実験

ADSL環境での高速通信実験 その1
グラフ1 ADSL環境での高速通信実験。グラフは350KBのファイル転送にかかった時間の平均値(単位は秒)。このグラフのみ、棒が短いほどベターとなる。

ADSL環境での高速通信実験 その2
グラフ2 ADSL環境での高速通信実験。フレッツスクエアでの通信速度(実効値)の比較(単位はkbps)。以下のグラフでは、棒が長いほどベター。

■低速通信環境での実験
 ファイル(250KB)転送での平均値

低速通信環境での実験 その1
グラフ3 アナログ回線で56kbpsモデムを使って接続した環境での通信実験。グラフは250KBのファイル転送にかかった時間から算出したデータ転送レートの平均値(単位はkbps)。棒が長いほどベター。

低速通信環境での実験 その2
グラフ4 携帯電話回線の9.6kbps接続での通信実験。グラフは250KBのファイル転送にかかった時間から算出したデータ転送レートの平均値(単位はkbps)。棒が長いほどベター。

低速通信環境での実験 その3
グラフ5 PHS回線(@FreeD&mopera)の64kbps接続での通信実験。グラフは250KBのファイル転送にかかった時間から算出したデータ転送レートの平均値(単位はkbps)。棒が長いほどベター。


 PCからの通信設定を調整するという性質上、ブロードバンドルータ経由でのアクセスではほとんど効果が出ない点には注意してほしい。通信速度がすでに上限に近い、比較的恵まれた環境では効果(さらなる高速化)はほとんど望めないが、Windows 98やMeを使用していて、かつ理論値を大幅に下回る値しか出ていないブロードバンド環境や、移動体通信とADSLを使い分けている人などにはお勧めできる。価格も1980円とリーズナブルなので、あらゆる手段を講じてでも、「もっと速く!」を望む人には有意義なソフトであろう。

ネットハイスピーダーの主なスペック
製品名 ネットハイスピーダー
OS Windows 98/Me/2000/XP
CPU Pentium以上
メモリ 64MB以上
HDD 5MB以上
インターネット接続環境 ADSL/アナログモデム/ISDN64k/128kbps/AirH”/@FreeD/CATV(ケーブルテレビ)/FTTH/LAN/無線LANほか

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