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黒川紀章がThinkPadを語る!――「早く人間に追いついてみろ!」

2003年07月12日 01時49分更新

文● 月刊アスキー編集部 中西祥智

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山崎 和彦氏
山崎 和彦(やまざき かずひこ) 日本IBM ユーザーエクスペリエンス・デザインセンター デザイナー/マネージャー/部長
[――] ご自身ではPCを使われますか?
[黒川] PowerPointで講演するのに使うことが多いけれども、計画中のプロジェクトとか、完成したプロジェクトのデータも全部持ち歩いています。もちろん、手で書くスケッチブックも欠かさないですけれど、現在のプロジェクトの最新の図面は全部持ち歩いてる。でも、シミレューションをするんでも、3D作るのでも、PCより僕の頭脳のほうが速いんですよね。
[山崎] ノートPCでCADソフトを使われたりすることもあるのですか?
[黒川] もちろん。でも、まだクリエイトの手伝いって感じで、本当にクリエイトのための道具というところまでは行かない。頭の中に先にできてしまうから。本当はノートPCと戯れながら作るのがいいけれどね。早く人間に追いついてみろ! って言いたい(笑)。

でも、考えるときの道具と、プロダクションのときの道具は違う。例えば、何千枚のCAD図面を書いて建設会社に渡すというプロダクションの道具としては便利です。図面を今はデータのまま、インターネットを通して中国なりアフリカなりに送っちゃう。ネットワークでつながってるというのがすごく革命的で、仕事のしかたが変わりましたね。

「ThinkPad T40」がいかに優秀でも、それだけでは機能しない。つながる環境がどのぐらい、整備されてるかでしょう? T40は無線LANでどこでもつながりますよって言われるんだけれども、つながるってどこ? それはIBMが悪いんじゃなくて、周囲の環境の中に無線でつながる場所がそんなにいくつもない。モバイルと言ったってね。
[山崎] 全体のポテンシャルが欲しいと?
[黒川] そうですね。使う環境が整備されないと。メーカーに文句を言っても仕方がないけれども、本当にその製品を売りたいっていうなら、無線でつながるサービス網っていうのを、プロバイダに任せておくんじゃなくって、メーカー自身が開発するべきだね。

ThinkPadを
携帯電話から操作!?

IBMの広告
約30年前、黒川氏らはIBMの椎名武雄氏(現最高顧問)と、どういうコンピュータが必要かということを話し合ったとか。もっとも、IBMの広告に出演することになったのは、黒川氏の“共生”の思想などが、IBMと共通しているため。
[――] 道具としてのPCの進化は?
[黒川] 新しいものを作るとき、創造するときは、感性を刺激される環境で、頭の中で仕事をするわけです。でも、ノートPCが感性に刺激を与えてくれるかというとね。データは出てくるんだけれど。
[山崎] そういう意味では、PCは創造を刺激する道具にはなっていません。どちらかというと、考えを保存する道具ですからね。
[黒川] 自分のデータを創れる人と、創れない人がいる。普通の人は自分のデータなんて持っていなくって、みんな映画で見たりとかTVで見たりとか、週刊誌や新聞で読んだもの。でも、このPCの中に入っているのは僕のデータ。僕が設計した作品のCADデータで、それを持って歩けるということは、やっぱりすごい。そういう能力をキープしながら、日常的な操作をやりやすくするために……。
[――] 仮に、次のThinkPadをデザインされるとしたら、どうされますか?
[黒川] ThinkPadの操作を、携帯電話のインターフェイスでできるようにしたいね。片手で操作できるようにしたい。
[山崎] Bluetoothをうまく使えばできるかもしれません。携帯電話でThinkPadの中に入っているスケジュール表を見たりして。
[黒川] それが今年度のIBMの研究課題ですね(笑)。


『Ctrl』-『Alt』-『Del』って何だよ
「『Ctrl』-『Alt』-『Del』って何だよ。こうだからこうしなさいっていうのは、ユーザー無視ではないか? メーカーの横暴な面が見えてくるようで(笑)」。

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